第43話 謎の失踪

 一ヶ月後。


「母上が死んだ!?」


 俺は自分でもびっくりするくらいの大声を上げていた。


「昨日、寝室で暗殺された様です」


 衛兵が膝まづき、そう伝える。

 母上の寝室に向かう。


「おお! 何と言うことだ!」


 母上の死体はもう既にこの世界から消滅していた。

 この世界では何らかの攻撃を受け、HPが0になると死ぬ。

 死んだあとは死体は消滅する。

 消滅したというだけなら、失踪したのか、死んだのかの区別がつかない。

 そこで、この世界ではある人が死んだかどうかを神に問うことが出来る。


<ラインハルホ・エスターク・フワは死んだ>


 俺は神の声によって母の死を確信した。


「シロウ王、大変です!」


 別の衛兵が飛び込んで来た。


「サクラコ様が失踪しました!」

「何!?」


 末の妹、サクラコは城の地下深くの牢獄に閉じ込めておいたはずだ。


「どうして……」


 現場に向かう。

 じめじめした地下室。

 そこには罪人を閉じ込める牢屋が幾つも並んでいる。

 その一つに俺は妹を閉じ込めていた。


「おお!」


 牢屋が破られていないのに、サクラコがいない!

 一体、どうやって……


<ラインハルホ・エスターク・サクラコはここにはいない>


 神はそう答えた。

 どうやら死んではいないらしい。

 閉じ込めて置きながら、ホッとする自分が嫌になる。

 それにしても、どこに行ったんだ。

 否、連れ去られたのか?

 サクラコはヒロアキを繋ぎ留めておくための人質だったのに。



「ヒロアキよ、今日お前をここに呼んだのは他でもない。お前をラインハルホ一族に召し抱えるためです」


 マリエッタが凛とした声で、下座に膝まづくヒロアキに言った。

 だが、ヒロアキはこう返した。


「いやです」


つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る