第二章 ラインハルホ一族の野望

第36話 5大王会議

 広間にはこの世界の王たちが集まっていた。


「今日は忙しい中、よく集まってくれた。年一回の5大王会議を、今年も無事開催出来たことを嬉しく思う」


 と、開会の挨拶をしたのは5大王の中でも最も力を持つジャンク王国の国王イジューイだ。

 スラリとした長身をいつも赤い鎧に包む。

 職業は勇者である彼は、優しげな顔の穏やかそうな男だ。

 低いが良く通る声が広間に響いた。


「今年もお手柔らかにお願いしますよ」


 そう言ったのは、ブラックピーチ王国のタマム国王だ。

 紫色のローブで身を包む彼は、長く伸びた白い顎髭が特徴的だ。

 妖術師である彼が率いるその国は、魔法に長けた者が多数存在する国で、ルーツは一人の魔女だ。

 魔女狩りで迫害され森に逃げた魔女が興したと言われるその国は、数々の伝説を持つ。

 魔法研究が盛んで、魔導機械の製造に着手し始めた。


「今年の議題は?」


 そう問い掛けたのは、オーバーザ・サン王国のスーミカ王女だ。

 この国は女性中心の国で、男は奴隷としてウジ虫以下の扱いを受けている。

 男勝りのスーミカは剣士であり、二刀流の使い手だった。

 桃色の鎧に身を包み、いつもかぶっている鉄仮面。

 表情をうかがい知ることは出来ない。


「いよいよ増え始めたモンスターをどうするか? といったところかな?」


 黄色のポンチョに身を包み、頭にターバンを巻いた少年。

 彼は商人を中心とした国、オラクル王国のセレクト王。

 父親を早くに亡くし、15歳で王位についた。

 彼は独特の商才で、父が興した国を引き継ぎ生産と商売を生業とした国をさらに発展させた。

 オラクル王国はこの世界で最も富める国だった。


「モンスターのことは長くなりそうだから、今日の最後に話そう」


 議長であるイジューイは王たちを見渡し、そう言った。

 年に一回の5大王会議。

 この世界の5大陸、それぞれの王が開催国に集まり行われる。

 開催国は持ち回りで、今年はイジューイ王が治めるジャンク王国で行われた。

 各国の王は従者を引き連れ、多額の旅費を払い開催国へ出向く。

 開催国の城下町では一種のお祭り状態となり、多くの収入が得られるのだった。

 会場であるジャンク城。

 外からは花火が打ちあがる音が外から聞こえる。


「シロウ王、遠いところよく来た」


 イジューイ王は、シロウに軽く頭を下げた。

 シロウは冷静を装いながら頭を下げた。

 国のイメージカラーである緑色のマントが揺れた。

 シロウが治める国、ラインハルホ王国。

 ここは5大王国の中で、一番、国力が弱かった。

 このジャンク王国に来るための旅費だって、国民から急遽、徴税し工面した。

 国民の不満は高まっていた。


つづく

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