第35話 どの娘と結婚するか迷う主人公
「ハンナ、シィダ……僕は真の勇者じゃない」
「え!?」
僕の言葉に、二人が声を揃えて振り返る。
攻略本の問題の一文を読ませる。
「ヒロアキ、勇者のお父さんなの? すごい!」
シィダは逆に喜んでいる。
「このページ……見落としていた。前のページとくっついていて……」
ハンナは攻略本に書かれた新しい事実に目が釘づけだった。
「なるほど。真の勇者はまだこの世界には誕生していないのか。だが、ヒロアキは真の勇者の父親になる男。真の勇者に助けを求めた私がここに呼ばれたのは納得がいくが……」
ハンナは顎に手を当て、何か考えながらつぶやく。
攻略本から顔を上げ、こう問い掛けて来た。
「ヒロアキは、これからもハーレムスキルで、ここに孤児の美少女を呼ぶのか? その中から自分のパートナーを選ぶのか?」
その瞳には動揺の様なものが浮かんでいた。
大人しく冷静な声は微かに震えていた。
「ヒロアキは私と結婚するんだもんねー。そんで、真の勇者を私が産むんだから」
シィダが僕の腕に絡みつく。
「やめろ。バカ」
シィダのつむじの辺りに、攻略本の角がクリーンヒットする。
「いったいなぁ! もう! ハンナは大人しく他にいい人探しな!」
「……」
ハンナは無言でシィダのつむじを殴り続けた。
シィダは僕の腕に絡みついたまま、ハンナに蹴りを入れていた。
僕は考えていた。
これってものすごい、ヤバい状況なんじゃないか?
僕が相手を見誤れば、真の勇者が生まれないことを意味している。
ただ好きなだけで相手を選んじゃだめだってことだ。
◇
その日の夜、僕らは会議室と呼ぶ小部屋で、話し込んでいた。
「ヒロアキはサクラコっていう女を助けたいんだな」
ハンナの確認に僕は頷いた。
「命の恩人なんだ。彼女がラインハルホに囚われている以上、あの一族に鉄槌を下すことが出来ないからね」
僕はシロウやナオシゲの顔を思い出すたびに、言葉が荒くなる。
それを何とか気を付けている。
「シィダもあいつらにパパとママが殺されたから、仕返ししてやりたい」
ハンナは僕とシィダの思いを聞いて、何やら考え込んでいる。
そして、顔を上げこう問い掛ける。
「サクラコは孤児ではないのだろう?」
「うん」
王様が死んだから、母親である妃だけだ。
「じゃ、孤児にしなければな」
「それって……」
「妃を殺すしかない」
つづく
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