第34話 僕は真の勇者じゃない
ハンナに渡された攻略本には沢山のことが書かれていた。
この世界の成り立ちや、各職業についてのこと。
僕が生きて来た14年の人生の中で、断片的に見聞きしたことが、スッキリとまとめられていた。
『まず、神はこの世界を作った。最初の生物としてNPCを作った』
なるほど。
この世界の最初の住民は、死んでいった美少女たちだったのか。
『NPCは決まった役割しかこなさない。それだけでは面白くないと思った神は、次に亜人間を作った』
僕はシィダを見た。
亜人間であるエルフの彼女は、僕が生まれるずっと前からこの世界にいるということか。
息が荒くなる。
本当のことなのか?
これは……
「ヒロアキ、攻略本はこの世界を調べて回った賢者……そう、私の村を興した賢者様が書いたもの。信頼していい」
僕の思いを察したのか、ハンナがそう言う。
『NPCと亜人間は仲良く生活した。だが、神はそれだけでは変化が無いと感じ、次に人間を作った。人間は役割を持ったNPCと関わった。人間は発展を望む生き物だったため、NPCだとつまらないと感じた。自ら亜人間に戦いを挑み、彼らを辺境に追いやった』
何てことだ。
人間は自分勝手のために、シィダたちを過酷な場所に追いやったのか。
次に最も驚くべきことが書いてあった。
『神はそれを見て面白いと思った。もっと面白くするために、最後に魔王を誕生させ、モンスターを作った』
結局は神の悪ふざけがこの世界を作っていたというのか。
何て恐ろしい世界だ。
そして、この世界を作った神を呪った。
神と書いてあるが、神ではないとさえ思った。
「シィダ……僕は……」
僕は上手く声が出せない。
涙で上手く喋れない。
「ヒロアキは皆が楽しく暮らせる世界を作ってくれるって信じてるよ」
それでも、シィダは人間を憎まない。
そう努力している。
僕は夢中になって攻略本を呼んだ。
『孤児である美少女を呼び寄せるスキルが存在する』
僕はこの一文に目が釘付けになった。
まさしく、僕が身に付けたスキル、ハーレムじゃないか!
『真の勇者の父親である者は、このスキルを身に付けることが出来る。その者はこのスキルを使い呼び寄せた美少女から花嫁を見つけだし、結婚する。そして、真の勇者を誕生させる』
つまり、こういうことだ。
僕は真の勇者じゃない。
つづく
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