第32話 究極の料理 VS 至高の料理
「じゃぁ、ハンナが作ってみな!」
シィダが挑戦状を叩きつけて来た。
「いいよ。ヒロアキに美味しいって言わせた方が勝ちね」
「おいおい。僕を巻き込むな。仲良くやってくれ」
こんなこと初めてだ。
ハンナって正直ものを言うし、見掛けに寄らず負けず嫌いの様だ。
シィダも負けず嫌いなとこがあるから、今後ぶつかることが多そうだ。
「ああ……」
僕は頭を抱えた。
シィダが台所に向かって走り出した。
この地下には台所がそれぞれ離れた場所に二つある。
シィダは、窯や調理器具がしっかりと揃った方の台所に向かっている。
「私、ヒロアキが呼んでくれたから今の命がある。だから、美味しいもの作ってあげる」
モンスターから逃げてる時、真の勇者、私を助けて。
彼女はそう願った。
そして、今、ここにいる。
ハンナはボロい方の台所に向かった。
◇
こっ……これはっ!
僕はハンナの作った塩リンゴの煮つけを口に含んだ瞬間、驚いた。
まったりとして、それでいて濃厚……
だけど、
「まず……」
思わずそう言い掛けた時、ハンナの目が光った。
「美味い!」
え?
僕は頭と思ったことが口から出て、ビビった。
本能を抑え込まれた感じだ。
「ブツブツブツ……」
となりから黒い瘴気を放ちながら、ハンナが何か唱えている。
呪術か?
僕は呪術で、思っても無いことを口走らされているのか!?
「え? シィダの料理の方が美味しよね! ヒロアキ!」
シィダが机に両手を乗せ、身を乗り出して訊いて来る。
「いや、ハンナの方が美味い! お前の食い物、不味い!」
「うえーん!」
シィダが地面に寝転がり、手足をバタバタさせて喚く。
まるで欲しい物を買ってもらえない駄々っ子だ。
……っていうか、ハンナ、君はそこまでして勝ちたいか。
なんてプライドが高いんだ。
でも、その負けん気は何かあった時に頼りになりそうだ。
「私の勝ち。シィダ」
ハンナが無表情でシィダを見下ろす。
「うわああああああああん! 他の皆は美味しいって言ってくれてるもん!」
10人の美少女を指差しながら喚く。
ハンナが詠唱をやめたことで、僕の魔法も解けた様だ。
口が自由に動く。
「そうだよ。ハンナ。二人とも美味しい料理作れるということで、引き分け!」
「ヒロアキ……あの10人が何なのか分かってる?」
「え?」
「あの娘たち、NPCだよ」
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます