第27話 妹を犠牲にする非情な兄
「サクラコ! どうしてっ!」
何で彼女がここにいる?
そして、何故、身体を縛られシロウに腕を握られているんだ?
「ヒロアキ、逃げて!」
薄緑色の髪を乱しながらサクラコが叫ぶ。
「ヒロアキ、お前の勢いもここまでだ! 貴様が真の勇者であることは意外だった。どうだ? 貴様をラインハルホ一族に正式に迎えてやる」
シロウが上から目線で言ってくる。
僕はこんな奴らの仲間になりたくない。
「嫌だと言ったら?」
「貴様の答えは一つしかない」
つまり、『はい』ということか。
「はい、そうですかって、素直に受け入れる訳ないだろ! まず、王様の遺言書を見せろ! 話はそこからだ!」
「ヒロアキ、頑張れー!」
シィダが応援する。
こいつらはシィダの両親を殺した仇でもある。
絶対、仲間に何てなるもんか!
「あくまで、断るというのだな。ならば……」
シロウのエクスカリバーの白い刀身が、サクラコの白い首筋にピタリと当てられた。
「こいつには死んでもらおう」
サクラコは目を閉じた。
すごく恐ろしいはずなのに、どこまでも落ち着いた様子を保っている。
「やめろー! サクラコは関係ないだろ! それにサクラコはお前の妹だろ!」
「お前とこの女が芝居をして、私を騙したことは知っている。妹とはいえ、この女は裏切り者だ」
「くっ……」
何てことだ。
見抜かれていたとは。
シロウは僕が真の勇者か見極めるために貧乏領地を与えたのか。
そして、僕が真の勇者だと分かれば、仲間にして利用しようとしているのか。
サクラコという人質を使ってまで。
「お兄様、そんな卑劣な!」
マリエッタが僕の代わりに叫んだ。
「黙れ! 5大王国の中で最も非力なラインハルホは、真の勇者という最強のカードが必要なのだ! そのために俺は魔王にもなるぞ!」
彼には野望があり、誰にも止めることは出来ない様だ。
「……分かった」
僕は膝をついた。
「ヒロアキ! 孤児院はどうなるの?」
「シィダ、ごめん」
「え?」
彼女の涙でいっぱいで潤んだ瞳の中で、僕の姿が揺れていた。
「そんなの嫌だよぉ!」
「分かってくれ!」
今は耐えるしかない。
「よくぞ言った。ヒロアキ」
シロウの雑音みたいな声が耳朶を打つ。
「あ」
星形のあざがいつの間にか消えていた。
つづく
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