第24話 僕の孤児院は売春宿なんかじゃない!

「兎に角、僕は皆で頑張って稼いだ金を、努力もしていないあなた達に、はいそうですか、と渡すわけにはいかない!」


 ここは王の間。

 一ヶ月前の回想から、僕は現実に戻った。

 僕のために犠牲になった100人以上の美少女たちのために、僕はこの金を渡すわけにはいかない。

 

「ん? 美少女? 何のことだヒロアキ」


(しまった!)


 余計なことを言ってしまった。

 シロウが嫌らしい笑みを浮かべ、こう言った。


「ヒロアキ、貴様、あの貧乏領地で何をしている? まさか、遊郭でもやってるんじゃあないだろうな? そうか、その金はその美少女たちとやらが身体を汚して稼いだ金か……」

「違う!」

「ヒロアキ、お前、見掛けに寄らずやるな……」


 僕は僕を慕ってくれた孤児たちにそんなことを強いていない。

 シロウは僕を蔑む。

 まるで僕を挑発するかの様に。

 僕のことは馬鹿にされてもいい。

 だけど、僕のことを慕ってくれた美少女たちを馬鹿にするのだけは許せない。

 彼は足を組替え、僕を上から目線で踏みつけて来る。


「お前も、一人くらいつまみ食いしたのか? くくく……」


 シロウの汚らしい発言に嫌気が差したのか、彼の横にいるマリエッタが顔をしかめた。


「お兄様! いい加減にしてください!」


 マリエッタが声を荒げシロウを見据えた。

 いつものクールビューティが唇を震わせ眉根を寄せている。


「いや、いや、すまん。けどな、マリエッタ。お前も不思議に思わんか? こんな無能がわずか一ヶ月であの荒れ果てた領地から収益を得ていたということに。これはきっと、やましいことをしているはず」


 シロウ、何故、僕をこれ程、馬鹿にする。

 出来損ないが貧乏領地を再興し金を稼いだことがそんなに生意気だと思っているのか?

 僕は彼を殺してやりたい。

 だけど、足が震えて飛び掛かることを躊躇している。


「違うもんっ!」


 王の間に甲高い声が響く。

 シィダ、だめだ。

 大人しくしてろ!

 だが、僕の願いも虚しく彼女は声を枯らし叫ぶ。


「ヒロアキは街とか村とかスラムとかにいる孤児の女の子を助けてたんだから! 皆、ヒロアキのことが大好きで、ヒロアキも皆のことが大好きで、一緒に孤児院で楽しく暮らしてたんだから! それに……」


 ああ……

 シィダ、全部言ったらだめだ。

 どうやって収益を得ていたかバレたら、君のスキルまで詮索される。

 それに、孤児院の地下のことを知られたらまずい。


「孤児院?」


 シロウが首を傾げる。

 シィダが大きく頷く。

 シロウは、隅に立つ衛兵に目を向けた。


「はい! 確かに二階建てのレンガの建物はありました。あれが孤児院だったとは……」


 その衛兵は使者だ。

 僕を貧乏領地から、ラインハルホ城までグリフォンで連れて来た。

 確かに彼は孤児院を見ている。


「はははははっ! ヒロアキ! お前、孤児院で売春宿をやっていたのか!?」

「違うと言っているだろう!」


 振動が早鐘を打つ。

 怒りで脳の血管が膨張する。


「おい、そこのエルフ」

「何よっ!」

「お前もヒロアキに汚されたのか? おい、ヒロアキ。貴様、亜人間のエルフにまで手を出していたのか! そのエルフをいくらで買ったのだ? この不埒ものがっ!」」


 貴様……


「うおおおおおおおおおっ!」


つづく

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