第23話 僕のために犠牲になった100人の美少女のために

 一ヶ月後。


「皆、ありがとう」


 僕はここまで協力してくれた皆に頭を下げた。

 硬い大地とゴツゴツした岩、枯れかけた木しかない貧乏領地がここまで発展したのは、何故か、僕の元に集まって来てくれた美少女たちのお陰だ。

 立派な孤児院の建物は、モンスターの脅威にさらされ何度も破壊されたが、その度に皆の力で復活させた。


「ほんと、皆、ありがとね!」


 シィダが明るい声で礼を言う。

 孤児院の副院長であるシィダが院長である僕を元気づける。

 皆、返事は無い。


「あああああああああ!」


 力が抜ける。

 僕は膝まづき、地面に手をついて涙を流した。


「ヒロアキー!」


 シィダもひざまずいて、僕の両肩に手を添える。

 彼女も泣いていた。

 ここは孤児院の地下に作られた墓地だ。

 そこには100体の墓があり、それは全て僕のために死んでいった孤児……つまり美少女たちだった。

 ミサキやベスの様に。


「ヒロアキは悪くない! 皆、自分のため!」

「だっ……だけど、僕は、皆を死なせてしまった」


 僕が真の勇者だという噂はモンスター界隈で噂になっているらしい。

 ゴブリンシャーマンの件があってから、次々モンスターが攻めて来た。

 僕よりレベルの高い猛者ばかりで、多い日は10体も襲って来た。


「ヒロアキ様! 先に天国で待ってます!」

「全てはヒロアキ様のために!」

「愛を! 愛を! ヒロアキ様のために!」


 僕への愛を叫びながら、皆、死んでいった。

 その度に僕の左胸の星形のあざが浮き上がる。

 その後、覚醒しモンスターを倒した。

 お陰で僕は強くなった。

 だが……


「僕が真の勇者なら、彼女達が犠牲になる前にモンスターを倒せたはずなんだ! ぼくは真の勇者じゃない! 偽物だ!」


 パチン!


 痛い!


 左頬が焼けるように痛い。


 シィダ……

 涙を浮かべて、僕を引っぱたいた手を見ている。


「この手が……この手がいけないんだ……。ヒロアキをぶったこの手が!」

「や、やめろ! シィダ」

「この手が悪いんだ!」


 シィダは顔をくしゃくしゃにして涙を流しながら、真っ白な髪を振り乱し、自分の右手を岩にぶつけ始めた。

 危ない、シィダの手が血まみれだ。

 じたばたするシィダを羽交い絞め!

 あ、彼女の髪から甘やかな匂いがした。


「だけど、ヒロアキも悪い!」


 じたばたしながら、そう言った。


「え?」

「真の勇者じゃないってヒロアキが認めたら、死んだ皆がうかばれないよ!」


 あ……!

 何てことだ……!

 僕は皆の気持ちを考えず、自分の気持ちばかりを考えていた。

 ゴメン、皆……。



 地下から地上に出る。


バサッ!

バサッ!


 遠くからグリフォンが近づいて来る。

 両翼で風を切りながら。


「使者だ……」


 ラインハルホからの。


つづく

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