第20話 勇者は美少女エルフを選ぶ
「勇者の気配がしたので来て見れば、こんなに弱そうな奴か……」
グちゃっ!
ミサキの身体が踏みつけられ血しぶきを上げながら四散する。
と、同時に消滅する。
少し離れた場所にある首も。
「ひっ……ひぃっ……」
ベスが後ずさる。
体調3メートルはある大物がズシン、ズシンとこちらに向かってくる。
灰色のローブに身を包み、手には禍々しく光る宝石を埋め込んだ木の杖を持っている。
顔は醜く緑色でイボだらけだ。
「我が名はゴブリンシャーマン。魔王様の命に従い勇者狩りを行っている」
ミサキの首を飛ばして殺したのはこいつだ。
「亜人間であるゴブリン族が魔王に味方しているなんて……」
シィダがいつになく真剣な顔だ。
自分と同類である亜人間が、魔王と結託していることに驚いている様だ。
本来、ゴブリンは知能の低い亜人間だが、まれに、魔法を使う者や集団行動が得意な頭脳派もいると聞いたことがある。
戦闘状態に入った。
ゴブリンシャーマン
レベル:25
HP:1514
MP:2104
攻撃力:171
守備力:346
素早さ:1053
奴から開示されたステータスはこれだけだった。
スキルは開示してこなかった。
こちらに鑑定スキルがあれば奴のスキルを見抜くことも出来る。
だが、今はそれをできるメンバーはいない。
スキル不明だとしても圧倒的実力差。
やばい。
今の僕らじゃ勝てない。
「来ないなら、こちらから行くぞ!
ゴブリンシャーマンの杖の先にある赤色の宝石が光った。
宝石の先端から炎の玉がほとばしる。
「くっ……」
弾き返さなきゃ。
身構える。
「もう一発行くぞ!
げっ!
後追いでもう一発か。
それぞれの炎の玉は、僕じゃなくて、シィダとベスを狙っている。
どちらかがやられる。
まず、シィダの方の炎を弾いてから、次に……
だめだ。
考えてる暇なんてない。
僕の身体はある人の方へと自然と動いた。
「ヒロアキ! ありがとう」
僕は銅の剣でシィダを襲う
否、僕のレベルじゃ上手く弾けず、火花が周囲に飛び散った。
熱い!
肌が焼ける
多少のダメージは覚悟の上だ。
シィダが無傷ならそれでいい。
次は……ベスを。
だけど、遠い、間に合わない。
「ヒロアキ様! 今までありがとうございました!」
ベスが叫ぶ。
「
彼女の手から水の竜巻が放出された。
それがゴブリンシャーマンが放出した
「小娘が、あじな真似を」
「私は調理師だから、野菜を洗うために多少の水魔法を使えるんです。ゴブリンシャーマンの炎の魔法は私が止めます。だから、ヒロアキ様、今のうちに逃げて」
詠唱しながらベスはゴブリンシャーマンに突っ込んで行く。
詠唱している間は無防備だ。
彼女のブラウスやエプロンが炎で焼かれて行く。
ごめん、ベス。
シィダを選んだ僕を許してくれ。
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます