第17話 僕は貧乏領地の中心で愛を叫んでいた
あれほど硬かった大地に、約1kmの割れ目が出来た。
「シィダ……、すっすごいね。君……」
その力をもってすれば、シロウも魔王も倒せるんじゃないの?
いきなりチートキャラの出現に、僕は恐れと興奮に震えた。
「なーんちゃって」
「え?」
シィダは元に戻っていた。
白目だけだった目に瞳が戻り、笑顔で恥ずかしそうに頭をかいている。
こんなに華奢で可愛らしい娘が?
拳一発で?
「私のスキル『
「スキル……」
今の一発が?
打撃系のスキルなのか?
ちょっと待てよ。
ダンスって言ってたな。
「シィダは好きな人とダンスすると、その人の望むこと叶えてあげられるんだよ」
「マジ?」
「うん」
僕はこの貧乏領地を開拓したい。
そう願っていた。
それを叶えるためにシィダは、僕とダンスをして覚醒したのか。
……ってか、シィダのやつ、しれっと今、僕にとって嬉しいこと言ってなかったか?
「どんなことでも」
おい、シィダ。
そんなスキル隠し持ってたなんて……。
何でもありじゃねぇかよ。
「う~ん、条件はあるけどね」
やっぱ、そう上手くはいかんよな。
「ヒロアキ、見て」
「え?」
シィダの指差す先は、割れ目の奥深く。
暗闇の中キラキラと光る何かがある。
「鉱物だ!」
僕は目を輝かせた。
恐らく、この貧乏領地は固い岩盤で覆われていた。
それを、シィダの拳が砕いた。
岩盤の下は、銅や鉄や銀などの鉱物で満ち溢れていた。
「すっ、すごいよ! シィダ。野菜を植えるという願いは叶わなかった。……だけど、見てよ。この宝の山を! この鉱物を採取して売りに出せばお金を稼げるよ! ある意味、僕の『貧乏領地を開拓したい』っていう願いが叶ったんだ! ありがとう!」
僕は思わず彼女の手を取っていた。
「ほんと!? ヒロアキが喜んでくれてシィダ、すっごい幸せ!」
ピョンピョンと二人で飛び跳ねる。
突然習得したハーレムで呼び寄せられた美少女エルフ。
その娘が僕に想わぬ幸運をもたらした。
それは一体何を意味するんだろう?
そして、これからハーレムで呼び寄せられるであろう美少女は僕に一体何をもたらしてくれるのだろう?
「ヒロアキ……少し、眠い……」
「え?」
ドサッ!
シィダ?
どうした?
目を開けてくれ!
僕は彼女の小さな両肩を抱いた。
ビクともしない。
最悪なシナリオ。
彼女の言葉が脳裏をよぎる。
「う~ん、条件はあるけどね」
まさか、君は命と引き換えに……
「シィダ!」
僕は貧乏領地の中心で愛を叫んでいた。
つづく
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