第10話 その頃、僕を追放した兄弟姉妹(元)たちは……
その頃、ラインハルホ城では。
「上級一族会議を行う」
シロウが開会の宣言をした。
円卓には長兄のシロウ、次男のヨシアキ、長女のマリエッタ、二女で双子マナナとカナナ(共に忍者)が座っている。
「母上は?」
「母上には退任していただいた。もう彼女は名誉職で何の権限も持たない」
ヨシアキの問いにシロウはそう答えた。
「シロウ。勝手なことを……」
「これからは私が王だ」
マリエッタが反論しかけたのを、片手でピシャリと制した。
「母上は父上の妃というだけで何の能も無い。それに我が一族の血をひいていない。会議のメンバーから外すのは当然だ」
皆、黙った。
「早く始めよーよ! 退屈だよぉ!」
忍者の双子二人が同時に声を上げ、足と手をばたつかせる。
二人とも身長が110cmほどしかない。
黒髪のおかっぱ頭が円卓から半分だけ露出している様子は、可愛らしい幼児の様だ。
上級一族会議に参加出来るのは以上のメンバーだった。
他の弟妹は下級一族という扱いで、一族の重要なことを話し合うこの会議には参加出来ない。
能力と年齢で差別された一族ならではのカースト制度だった。
「ヨシアキ。父上の遺言書は書き換えることが出来たか?」
「それが……我が魔法をもってしても出来ない」
「焼却することも出来ぬか?」
ヨシアキは頷いた。
円卓の中央に置かれた遺言書にはヒロアキのことが書かれていた。
『わしが死んだ場合、ラインハルホ国の王位はヒロアキに譲る。
ラインハルホ・エスターク・ライデン』
シロウは万が一のことを考えて、ここを自分の名前に書き換えておきたかった。
だが、王様の魔法が施された特殊な紙とインクで書かれた遺言書はそれを許さなかった。
「仕方ない。城の奥深くの部屋に隠しておくか。さて、次の議題だが……ヒロアキのことだ」
「あのアホがどうしたの? 貧乏領地で死ぬのを待つだけでしょ?」
双子が無邪気な声が会議室の円天井に響く。
「兄上、何故に奴を生かしておく?」
ヨシアキが詰め寄る。
シロウが無表情で応える。
「ヒロアキとサクラコが戦っている時、奴の左胸が光った。そこには薄く星形のあざが見えた」
シロウがその星形を両手で形作った。
「ならば、ヒロアキは救世主……つまり伝説の勇者なのですか」
マリエッタの声は驚きの余り掠れていた。
「否、まだ分からない。星形のあざはすぐに消えた。だが、その可能性はある」
この世界にはこんな神話がある。
『魔王が現れる時、同時にそれを倒す勇者も現れる。その勇者の左胸には救世主の証である星形のあざがある』
つづく
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