第一章 美少女だけの孤児院を作ろう

第9話 初めてのスキルその名は『ハーレム』

 広大な荒れ地のど真ん中に僕は一人ポツンと取り残された。

 ラインハルホ族が持て余している領地の一つ。

 夕日が地平線に沈んでいくのが見える。


「どうすべきか……」


 僕は考えた。

 ラインハルホ城から100kmも離れた地の果てで。


「月一回、領地がどうなったか報告しろ」


 シロウにそう命じられている。

 僕はこの貧乏領地を押し付けられた。

 追放も同然の扱いだ。

 平民ではないにしろ城に仕える下男の扱いに等しい。

 否、殺されなかっただけましなのかもしれない。

 シロウのことだからこの領地が発展しなかったら、殺すとか言い出しそうだ。

 商人が行き来する街でも作ればいいのか。

 遊園地でも作って客でも呼び込めばいいのか。

 商才も無ければ、人脈も無い。

 何より何かするための道具も無かった。


「はぁ……」


 一ヶ月後には殺されるのかぁ。


「いてっ!」


 よく見ると僕の爪先にスライムがかじりついている。


 スライム

 レベル:1

 HP:5

 MP:0

 攻撃力:6

 守備力:4

 素早さ:5

 スキル:なし


「何だよ! このっ!」


 プニプニした身体に拳を叩きつける事数回。

 倒した。

 HPが0になったスライムは消滅した。


<ピロリロリーン!>


 久々に聞いた。

 レベルアップした時のメロディだ。

 今のスライムで僕はレベルアップしたんだ。


<ヒロアキはレベルが9になった! HPが450になった。MPが45になった。攻撃力73、守備力が84、素早さが212になった。スキル、ハーレムを獲得した>


 いつもの無機質な女性の声が脳内に響く。

 うん、なかなかいい上昇具合だ。

 それにしても……スキル、ハーレム。

 ハーレム!?


 僕はステータスを確認した。


 ヒロアキ

 レベル:9

 職業:すっぴん

 HP:450

 MP:45

 攻撃力:73

 守備力:84

 素早さ:212

 スキル:ハーレム


 何だ、この誘惑めいたハーレムという響きは。

 使うと一体どんなことが起るのか?

 僕は初めて習得したスキルに戸惑っている。

 スキル発動のさせ方は本で読んだことがある。

 大抵は、眉間の辺りに思考を集中させ唱える。


「ハーレム!」


 ……しかし、何も起こらなかった。


「そうだよなー。僕みたいな職業すっぴんがスキル何て身に付くわけないか。神様がジョークで付けてくれたんだろう」

「しくしく……」

「え?」

「しくしく……」


 女の子の泣き声。

 背後の岩陰から聞こえてくる。


「あ……」


 岩と岩の間で女の子がしゃがんでいる。

 手を顔で覆い、泣きじゃくっている。

 尖った耳、白い肌。

 細長い手足。

 白くて長い髪。

 エルフだ。


「どうしたの?」

「うわああああん!」


 エルフの少女は泣きながら僕に抱き着いて来た。


つづく

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