第6話 美少女な妹(元)と対戦することになりました
「もう、うんざりっ!」
サクラコの叫びが王の間に響いた。
「こんなやり方、お父様が許すわけがないわ! 皆、目を覚まして!」
サクラコは顔を真っ赤にし目に涙を浮かべ訴えた。
「サクラコ、お前は正義感のある良き妹だ。だが、今のお前は間違っている」
次男のヨシアキがメガネをクイと人差し指で上げながら、そう言った。
「ヒロアキは我が一族にとって異物だ。異物が身体に入れば何をしでかすか分からん。だから、排除するのは当然のことだ」
さすが妖術師で頭のいいヨシアキだ。
僕の考えを見透かした様な事を言う。
「お兄様、身内で争っている場合ではないのです。今は、どんな者とも協力してモンスターの脅威に立ち向かわなければいけない時代なのです」
サクラコは反論する。
僕は彼女は末っ子で大人しいだけの女の子かと思っていた。
だけど、これだけ他人を思いやり主張が出来る娘だとは……。
「理想論だな」
シロウが議論をバッサリ切り捨てた。
彼は偉そうに玉座に座り、足を組替えた。
「人間と人間とは争う様に出来ている。現にモンスターという共通の敵が現れても国家間の戦争は続いている」
「だからこそ……」
「それほどヒロアキをかばうなら、お前がヒロアキの代わりに追放されるか?」
少女の訴えは虚しくかき消された。
「ははは! こりゃ面白い!」
場違いな笑い声で緊張が一瞬、緩んだ。
四男のトムキャットが軽薄そうに手を叩いて笑っている。
「シロウ兄、この際、ヒロアキとサクラコを
この男は人の不幸を祭りにして楽しむ癖がある様だ。
「トムキャット、ふざけるのをやめなさい」
マリエッタが無表情で叱りつける。
だが、トムキャットはにこりと笑った。
彼は鼻筋の通った黒髪のイケメンで、姉妹達から可愛がられていた。
双子の二女と、三女、四女が顔を赤らめた。
「皆、考えてもみなよ。パパが死んだ途端、ラインハルホ族から追放者が二人も出たら国民が不審に思うよ。これじゃ新生シロウ王の前途が多難になる。やはりここは追放者は一人くらいにしとかないと。国民が納得するそれなりの理由だって考えないといけないんだからさ」
この放蕩息子の職業は遊び人だったな。
コミュニケーション能力に長けているのだけは分かる。
城下の女を惚れさせるのはお手の物だと自慢していた。(都度、トラブルが起きるので執事がもみ消していた)
確かブラックピーチ王国のアリン姫とも恋仲だと聞いたことがある。
「よかろう。ヒロアキ、サクラコ。
シロウの冷たい声が王の間に響いた。
つづく
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