第5話 末っ子妹は甘えん坊!?
僕は14歳だ。
その僕をかばってくれたのは、末っ子で13歳のサクラコだった。
「大丈夫ですか?」
「う……うん」
「良かった」
彼女はスッと立ち上がった。
腰まである薄緑色ストレートヘア。
まだ凹凸の少ない身体は、少年の様だ。
「サクラコは大丈夫?」
「はい。コロリンが守ってくれました」
「コロリン?」
「召喚獣です」
彼女は召喚士だ。
この世界には4つの世界がある。
僕らの世界を制御する神が住む天界。
召喚獣や精霊が住む幻精界。
人間と亜人間とモンスターとが戦うこの世界。
そして、魔王が住む魔界。
サクラコは召喚獣や精霊を召喚し、対話することが出来る数少ない人間だ。
「でも……何で僕を? 僕はもう君の兄ではない」
「私は……」
彼女は何故か顔を赤らめた。
二重瞼から伸びる長いまつ毛。
その下にある大きな黒い瞳が潤み、僕から視線を逸らした。
心なしか頬が赤く見える。
その先の言葉は?
「サクラコ! 貴様、ラインハルホの一族でありながら血迷ったか!」
だが、ナオツグの怒鳴り声がそれをかき消した。
「血迷ったのは、兄上たち、姉上たちです!」
おおっ!
末っ子とは思えない。
彼女の態度は年上姉、兄たちに向かって堂々としていた。
「ヒロアキは私達一族とは違うかもしれない。だけど、長年一緒に育って来た間柄。ほぼ家族みたいなものです。それを、たかが太陽のあざが無いからといって追放するのは人の道として間違っています!」
おお、良く言ってくれた。
僕が言いたかったことを全て言ってくれた。
感動。
感涙。
歓喜。
この娘に惚れそうになる。
「サクラコ。あなたの言いたいことは分かりました」
「マリエッタ姉さん」
一番上の姉、マリエッタは桜子の肩にそっと手を乗せた。
双子の二女、三女、四女がその様子を心配そうに見ている。
「ヒロアキの扱いは……確かに人の道に反しているかもしれません。ですが、ここはラインハルホの城。ここで優先されるのは人の道というルールではなく、ラインハルホ一族のルールです」
マリエッタは、長身を白いローブに包んだ、どこまでも透き通った肌の美しい治癒魔法使いだ。
そんな彼女はシロウにどことなく似た、冷酷さを言動に匂わせた。
「姉さんは、ここでは人間の法ではなく、ラインハルホの法が優先される。そう言っているのですね」
サクラコの返しに、マリエッタは無言で頷いた。
長い銀髪が揺れた。
「我が一族に歯向かう平民には死を。否、全ての者に死を。当然のことです」
サクラコ以外の皆、頷く。
まったく、何て奴らだ。
先代の王様はこの状況を見てどう思うだろう。
きっと、この国は独裁国家となりお先真っ暗だ。
国民は重税にあえぎ、戦争で疲弊するだろう。
そこをモンスターにつけ込まれ、滅ぶ。
そうならないためには、この一族だけは根絶やしにしなければならない。
今、僕の心には生きる目的がいくつも湧いて来ている。
つづく
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