004  どうやら俺は勇者の間で有名になったようだ



勇者を倒してから朝を迎えた。勇者を倒した高揚感はいまだ抜けずアドレナリンがみなぎっている。だが、魔王の肩もみは一切手を抜いてはならない。





『相当強い勇者を倒したからなァ、いい側近になってきた。   そうだ貴様ァ……勇者たちがいまなにをしているか調査してこい。』




「それって、つまりスパイってことですか?」



『あァ……貴様なら生身は人間の姿、バレることもないだろう。」



「は、はい。わかりました。街をみてくればよいのですね?」


どうやら俺は相当重要な役目を与えられたらしい……



重い甲冑を脱ぎ捨て、テレポートカードで最初の一階層に戻った。





           ◆






〜 一階層 〜


少し懐かしさを感じる……ここでテレポートカードを拾ったところから

魔王の手下生活が始まったと考えるとなかなか感慨深い。


後ろに謎の気配をかんじる……!


((青いゲル状のナニカが現れた!))


「今の俺ならお前なんてクソ雑魚ナメクジなんだよぉぉぉぉおおお!!」


俺は二発 青いゲル状のナニカを殴った。


(テレテレッテッテッテーン)


勇者としてのレベルが”4”になった。やはり自分の本質的な力は何も変わっていない。 だが、気にするつもりはない。なぜなら……


「魔王の手下でレベル80だから!!!」


もう勇者などに興味はまったくないのだ。


「あ、こんなことしてる場合じゃねぇ!」


俺は急いで街に向かって走った。





〜 タワラ街 〜


ここが俺の生まれ育った街である。久しぶり(といっても2日程度だが)に帰ってきたので懐かしさと安心感を覚えた。


『バローーウ!バローーーーーーウ!!!』


自分のことを呼ぶ声が聞こえる。


『お前どこにいたんだよぉ!探したんだからな!?』


名前を読んでいたのはの勇者 ”スミロフ” だった。



『お前が魔物にやられたんじゃないかと思って心配してたんだぞぉぉお!?』



「ごめんごめん。少し旅に出てて……」



スミロフは自分にとってかけがえのない存在で”親友”である。 そんな親友が自分を探していたことを知ると、すこし申し訳なく思えてくる。


『あ、バロウ。しってるか!?噂で聞いたんだけどな、魔王を討伐しにいった上級勇者がたった一体の”ダークパラディン”に倒されたらしいぞ?』



「「!?」」



どうやら俺は勇者の間で話題になってしまっているらしい。自分が本人であることを悟られないように動揺せず尋ねる。



「え、そ、それ何情報なの〜?」



『どうやら上級勇者のすぐあとに討伐しにいった勇者がばれないように隠れて

こっそり見ていたらしいんだよ。だから本当なのかもしれないぜ?まぁおれはしんじてないけどな!』



否、その情報はすべて事実である。



『まぁ、要するに魔王を倒すまでに新たな強ボスが現れたって感じだな。』


(……強ボス、とてもいい響きだ……)



『とにかくだバロウ!俺たちで魔王を絶対討伐してやろうな!!絶対伝説の勇者になってやるんだ!!じゃーな、バロウ!特訓してくるぜぇええええ!!』




僕の心の中は複雑な感情で入り乱れていた。





          ◆




〜 タワラ街 中心部 〜



やはり中心部は人が多い。そして当たり前のように勇者の会話は自分の話題で持ちきりになっていた。やはり自分の話題で持ちきりだと気持ちのいいものだ。


(((ドンッ)))


人が多すぎて肩がぶつかってしまった。



『てめぇ、どこ見て歩いてんだコラアァァァァ!!』



どうやら態度の悪い勇者のようだ。しかも三人組である。


『俺たちゃ、今イライラしてんだよ……が……クソォ!なめやがって」


もしかすると俺が倒してしまった”キリュウ”(第3話参照)のことかもしれない。





『おい、お前ちょっと裏来いよ。』


俺は促されるまま裏に連れて行かれた。







(((ドゴッ!!バキッ!ズガッ!)))


俺は三人がかりで袋叩きにされた。身体中が痛い……



『俺様たちはキリュウさんの師弟!ギルリック三人衆だ。覚えとけカスが!』



















「「「「……………コロス……コロスコロスコロス!!許さない……絶対に殺してやるゥゥゥァああア”ア”あああああ”ア”ア”ア”ア”!!!!」」」」



俺のなかのナニカが爆発した……感情を抑えることができない。

勇者に対しての 憤怒 憎悪 が完全に芽生えてしまった。





             ◆





傷だらけの体をなんとか持ち上げ、魔王の元へと帰る。


意識が朦朧とする中、人混みの中から気になる会話が耳に入った。





「「……シャイニングブレードがどこかで発見されたらしい……」」




俺はとてつもない会話を聞いてしまった。



――――――――――――――――――――――――――

スミロフ 15歳 レベル58


バロウの幼馴染で、幼い頃から修行をしていたため

レベルが順調に上がっている。


愛用の剣は、”ダイナマイトソード” である。

いつかは、魔王を倒そうと志している……





























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