003 勇者vs魔王の手下の元勇者
魔王の側近になったものの、自分の力は何も上がっていない。
一日の仕事は魔王の肩もみくらいで、戦いに来た勇者は他の魔物が倒してしまう。
「魔王様。私は勇者時代のレベルが3でして、このままでは側近として魔王様を
お守りすることが難しいかと……」
『貴様は向上心がすごいなァ……いいだろう、レベルをやろう』
「レベルをやろうとは……?」
魔王は巨大な手を体に向けてかざした。
『ドゥゥンッッッッ!!』
体に稲妻が走り身体中にエネルギーがみなぎるのを感じた。
『貴様のレベルは人間で言う80レベくらいにしてやった。』
魔物のレベルアップってこんなに簡単なのかぁー!?勇者時代だったら
半年はかかる作業をものの一分で?!
「ありがとうございます!魔王様。命に変えてお守り致します!」
魔王はとても優しく見えて、世界征服を目論んでいるとは思えないほどだった。
◆
いつもどおり魔王の肩もみをしているのだが、ふと気になったことを質問した。
「魔王様の宿敵はいるんですか?」
『……あぁ、いる』
最強の魔王にも宿敵がいることに動揺が隠せない。
『やつはとても強かった。我を死に際まで追いやったんだからなァ……やつは一人で我のしもべを蹴散らし、我の体に傷までつけた……明らかに歴代の勇者のなかで
”最強”だった。』
「そんな相手にどうやって勝ったんですか?」
『やつの病によってあと一歩のところで死んだのさ。それがなければ十中八九、我が
負けていただろうなァ……』
『なんていう名前の勇者だったんですか?』
『 ”勇者グラピド”、最強の剣”シャイニングブレード”の持ち主だ。』
「グラピド……とても強そうな名前だ。」
『やつの血筋、シャイニングブレードの継承者が我の宿敵になりえる最後の希望
だろうなァ……』
「……俺が倒しますよ」
『んァ?何だって?』
「俺は最強の勇者をたおす…!」
このときはただ最強の勇者を自分が倒したら、じぶんが最強の勇者になれるという
浅はかな考えだったが、後に本気になることをまだ知る由もない。
『ビィリリリリリリィィィィィイイ!!!ユウシャセッキンチュウ!』
また、魔王を討伐するべく勇者がやってきた。
「魔王様。私が一人で倒してきます。」
俺はいつの間にかそうつぶやいていた。
◆
魔王を倒すために来た勇者vs魔王の手下になった勇者のバトルがここに始まる。
魔王を倒しに来た勇者は、俺一人しかいない状況を未だに理解できていない。
『なんで魔王が出て来ないんだ!なめてんのか?おれは相当強い勇者だぞ!
なんでレベル40程度のダークパラディン一体なんだよぉぉお!』
そう言われて自分が甲冑を身にまとったダークパラディンという魔物であること
に気づく。 そしてダークパラディンの大体のレベルが40であることがわかり、
本当に魔王に気に入られていることがわかる。
『くそぉ、仕方ねぇ。お前をさっさと倒して魔王も倒す!レベル70のこの俺!
キリュウ様がなあぁ!』
勇者が剣をかざし飛びかかってきた。やはり俺は元レベル3の雑魚勇者だ。
心までもは変えられない。成す術もなく防御体制を取る。
「「「キンッッ!」」」
甲冑に剣が当たり、火花が飛び散る。無論ダメージはほぼない。なぜならレベル80のダークパラディンなのだから。
『な、なんで効かねぇんだよ!?たかがダークパラディンだろ!』
俺は持っている大剣にエネルギーを流し込む。勇者時代では考えられないエネルギー量だ……禍々しいオーラがあたり一面を包み込む。
『う、うわぁぁあああああ!!や、やめろぉぉぉぉおぉおおおっっ!!」
エネルギーを最大に溜め込んだ大剣を一気に振り落とす……!
「「「 ダークブラストスラァァァアアッッッッシュ!! 」」」
勇者は勢いよくはじけとんで、数秒後棺桶状態になってしまった。
「か、勝った……」
勇者を元勇者が倒したものの、自分にとってはじめての強い相手で、それに対して感じたことのないような凄まじいエネルギー量の技で勝ったので心の中は達成感に満ち溢れていた。
◆
魔物の集会のようなもので俺はたくさんの魔物から褒め称えられた。
やはり人に、じゃなくて魔物に褒められるのは嬉しいものだ。
奥から魔王が出てきた。
『よくやったぞォ……、貴様には魔物の才能がある。共に勇者を打ちのめし
世界を征服しようぞ……』
「はい!魔王様ぁぁああ!!」
俺は魔物として勇者を倒すことを固く誓った。
―――――――――――――――――――――――――
ブラックパラディン 年齢不詳 レベル40程度
魔王の手下で、魔物の中でも平均的な力である。
甲冑を身にまとっており、大剣を使って戦う。
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