第5話



「ルミナ、入るぞ。」


ヨシュアが声をかけるも返事はなく、中にいた侍従が扉を開ける。

ベットに臥せる女性は熱のせいか汗をかいており、首筋に美しい銀色の髪が張り付いていた。

そして、アルトはその女性ーールミナを見ると、額に手を当ててため息をついた。


「そりゃ解毒ポーションが効くはずないわな。」


「やっぱりこっちだったか。 アル君誰か伝手はあるかい?」


「一応1人だけ心当たりはあるけど、今王都に居るかは分からないな。」


「なら早めに連絡した方がいいね。 もう首元まで来てる。」


「とりあえず連絡してみる。 少し席を外すよ。」


アルトはポケットを漁りながら部屋を出ると、取り出した1枚のカードを取り出した。

そのカードを耳に当て、誰かと話しをしている。

完全に置いてけぼりのヨシュアは、なんの事かさっぱり分からなかった。

その事に気が付いたリーファが、改めてヨシュアに向き直り説明を始めた。


「ルミナのこの症状だけど、結論を言うと病では無いよ。」


「では一体何が原因なのだ?」


「話すのは構わないけど、人払いをしてくれるかな。 余り大きな声では言えないからね。」


リーファは部屋の中にいる侍従と、扉の前で待機している騎士達に目をやりながらそう言った。

そして、アルト以外この部屋の近くに人が居ないことを確認すると、神妙な面持ちでリーファはこう告げた。




「ルミナはね、呪われているんだよ。 それも術式レベルの呪いだね。 ここまで来ると、並の聖職者じゃどうしようも無いだろうね。」


その言葉を聞いた途端、ヨシュアは膝から崩れ落ちた。




「あ、もしもしマーサ?」


『…何よ。 あんたからの連絡なんてロクなことがないんだけど。』


「あはは、俺達の仲じゃないか。多少のことは大目に見てくれよ。」


『散歩に付き合ってくれって龍の巣に連れていった挙句、竜命草を採取したら1人でトンズラした事が多少?』


「いや、あの時はほら、母さんが危篤でな? 一刻を争う事態だったんだよ。確か、多分そんな感じだったと思う。」


『あらそう。 なら野営をしている時にリッチとスケルトンに囲まれた時もなんの躊躇いもなく置いていったわよね? 私がアンデット系苦手なこと知ってるのにね?』


「いや、立場的にアンデット系は克服しないとダメでしょ。」


『うぐっ…それは、そうだけど! もっと私に優しくしてよ! 何なの、私ってあんたにとって都合のいい女な訳!? 今回もまた面倒なこと押し付けるんでしょう!? 良いわよ、分かったわよ! やればいいんでしょやれば!』


マーサは酷く興奮した様子で投げやりにそう言った。

何だかんだ言いつつも、引き受けるあたり彼女の人柄が伺える。


『…はぁ、それで? 今回はどんな厄介事なのかしら?』


「ルミナ第一王女知ってるでしょ? 彼女が呪われていてね。解呪を頼みたい。」


『は?』


「蛇に纏わる呪いだね。 もう首元まで這い上がって来てるから時間が無いんだ。 とりあえず急ぎで王城へ来てくれない?」


『え、ちょっと待ちなさいよ! 私いま公国にいるのよ!?』


「あー、なんか声がとどきにくいなー。 って事で宜しく〜。」


アルトはそのまま通信を切り、部屋の中へと戻るのであった。




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