第4話
何やかんやあった翌日、アルトは珍しく定時に出勤していた。
先に来ていたルイは酒も残って無い様子でいつも通りに書類整理をしていた。
そして、定時が過ぎようとしたその時、
「おはようございますー! ギリギリ間に合いました…はぁ。」
「おはようッス!」
「おはようルイちゃん。 とりあえずアルトさんを起こしてきますね。」
「その必要は無いッスよ、ほら。」
ルイが指さした先にはポーションを作り始めたアルトが居た。
その様子に驚きを隠せないノエルは、おもむろに自身の頬を抓った。
「いたっ! え、夢じゃない? アルトさんが、私より先に仕事をしてる…?」
「おい。」
「…ぐすっ、嬉しいです。 アルトさんもやっと真人間になってくれたんですね。」
「…はぁ。 そんな事よりさ、昨日のこと覚えてる?」
「昨日ですか? ギルマスから貰ったお酒を飲んでから…あ、あれれ? 記憶が無いですね!」
「そ、そうか。 まぁあの後直ぐに潰れちゃったから仕方ないな! それじゃ俺も仕事に戻るから!」
「はい、私も仕事に取り掛かります!」
そう言って受付カウンターへ向ったノエルに胸をなでおろしたアルト。
忘れているならそれでいいかと本日の仕事に取り掛かるアルトであった。
「ふぅ、とりあえずこんなもんか。」
太陽は真上に昇り、何処からとなくご飯の匂いが漂うお昼時にアルトは本日の業務内容を終えた。
お昼にしようと錬金ギルドを出ると、後ろから珍しく慌てたリーファに止められた。
「アル君! ちょっと待って!」
「どうした?」
「ちょっと王城へ一緒に来てくれる?」
「うげっ。」
「そんな露骨に嫌な顔をしないでおくれよ。悪いけど、アル君ご指名だから拒否権はないよ。」
リーファが胸元から一通の手紙を取り出した。
封には王室の印があり、面倒な事になったと独りごちるアルトであった。
「失礼致します。 錬金ギルドのリーファ様とアルト様をお連れました。」
「入れ。」
アルトは昼食を摂る間もなく王城へ連行された。
謁見の間には多くの騎士が控えており、玉座に座るこの人物こそこの国の王、ヨシュア・リースレッドである。
体格の良い髭を生やした初老の男性、ヨシュアは柔和な笑みを浮かべて口を開いた。
「よく来てくれたな。」
「来たくはなかったけどね。 また面倒事でしょ?」
「うむ。今回は娘にも関わることなんだ。 どうか娘を助けて欲しい。」
「ルミナに何かあったのか?」
「あぁ、先日体調を崩したのだが、日増しに容態が悪くなっておる。 リーファに頼んだ最上級の解毒ポーションを飲ませても、気休めにすらなっておらんのだ。」
「おや、解毒ポーションが効かなかったのは初耳だね。 アル君、ちょっと様子を見てみようよ。」
自分の作ったポーションに効き目がなかった事が気になったのか、アルト任せにしていてたリーファが急にやる気を出し始めた。
しかし、それはアルトも同じ事であった。
解毒ポーションを、しかも最上級の物が効かないとなると残された選択肢は限られる。
嫌な予感を胸に、ルミナの臥せっている部屋へと向かうのであった。
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