第2話
ポーション制作に勤しんでいると外はすっかり暗くなり、人工的な灯りが街を照らしていた。
アルトはノルマであったポーションの作成を終え、夜の街へと繰り出す。
酔っ払いで溢れかえった飲み屋街に、道端で客引きをする娼婦。
この街の在り来りな風景を眺めながら歩いていると、後ろから声をかけられた。
「アルトさん!」
「こんばんはッス。」
「ノエルとルイちゃん? これから飲みに行くの?」
声を掛けてきたのはノエルとその後輩であるルイと言う少女であった。
「えぇ、偶には羽を伸ばしませんとね! あっ、もし良かったらアルトさんも一緒にどうですか?」
「いや、今日は先約があるから2人は楽しんできてよ。」
「えっ…友達のいないアルトさんが…?」
「おい。」
「あ、いえ、あははっ、それじゃあ失礼しますね!」
ノエルは慌ててそう言うと、ルイの手を掴み脱兎の如く去っていった。
「俺ってぼっちに見えるんだろうか…」
アルトは1人呟き近くにあったベンチへと腰掛け当たりを見渡した。
待ち人は未だに来ず、歓楽街の喧騒をただ眺めていた。
「済まない、待たせてしまったな。」
後ろから声をかけられたアルトは、振り返ることなく返事を返した。
背後から現れたのは、赤い髪を腰まで伸ばした麗しい女性であった。
「さっき来たばっかりだよ、クリス。」
「それじゃあ行こうか、今日は私のオススメの店なんだ。 アルトもきっと気に入るだろう。」
アルトとクリスの2人は早速歩き出し、目的のお店へと向かった。
道中他愛もない話をしながら歩くと、直ぐに目的地と辿り着いた。
「さっ、好きなものを頼んでくれ。 オススメは刺身だな。」
「へぇ、魚を仕入れてるなんて珍しいな。」
「ここの店主が港町の出身でな、仕入れるツテがあったらしい。」
「それじゃあ適当に頼みますか。」
2人は摘めるものとエールを頼み酒盛りを楽しんでいると、店の扉が開き新たな客が入ってきた。
「もー!ギルマスの遅刻癖はアルトさんのサボり癖と同じくらい酷いですよー!」
「ごめんごめん、用事が長引いてね。 今日は私の奢りだから好きに飲み食いしてくれたまえよ。」
「次からは遅れないでくださいよ! 遅刻ばっかりしてたらアルトさんみたいに友達いなくなりますからね!」
聞き捨てならない言葉が聞こえた。
それも、アルトのよく知る声であった。
「アルト先輩って友達居ないんッスか?」
「ルイちゃん、あのぐーたら大王が私達以外と居たのを見たことありますか?」
「んー、でも女の人にはモテるんじゃないッスかね、顔は抜群に整ってますし。」
「確かに。アル君はイケメンだからねぇ。」
「ウチはアルト先輩好きッスけどね〜、良くお菓子もくれますし。」
「確かに、ルイちゃんには甘いかもね。」
まさかこの店にアルトが居るとは露知らず、アルトの愚痴を言いまくるノエル。
当の本人であるアルトは、笑みを浮かべてゆっくりとノエルの背後に回った。
「大体だらしないんですよ! 毎日定時には来ないし、イタズラしてくるし! 今日だって私が居るのに着替えだしますし!」
「そっか、そんな風に思ってたんだね。」
「えぇ、いい加減ちゃんとして欲しいものですよ!」
「そっか、そっかぁ。」
「大体ですよ、あの人ときたら!」
「あ、あの、ノエル先輩! その辺にしておいた方が良いッス!」
「何を慌ててるんですか?」
アルトの姿を見たルイが慌ててノエルを止めようとするも、時すでに遅かった。
「俺が居るからじゃないかな?」
ギギギ…と、ぎこちない素振りでノエルが振り返ると、アルトはイイ笑顔でノエルを見据えていた。
勿論、目は笑って居なかったが…
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