第24話シーク村
魔王城で会議中。
「次は、シーク村を攻めますか…。」
口火を切ったのはサーシャだった。
シーク村、それは魔王城では、否、ある者の前では
『闇の従者』のうちの一人に気遣うような視線が向けられる。
「シーク、村…。」
いつもとは雰囲気がガラッと変わっている当人が喉を震わせる。その音に乗せられたのは、憎悪、憤慨、嫌悪など、およそ、良い感情とはいえない感情だった。
だが、その顔には女神と見まごうかのような優しい笑みがはりついていた。
「許してませんからぁ…❕村の皆さん…❕」
憎悪という憎悪を声に乗せ、発された言葉に、周りの顔はひっと、引きつる。
「ミシェーラ。妾と行こうぞ。」
「ラクカジャ様…!」
言いたい事は分かる。だが、ミシェーラをこのまま放置すれば、取り返しのつかぬことになる。
「はい❕行きましょう、ラクカジャさあん❕」
やはり、目に光は無い。
「魔王様よ!妾とミシェーラが行く!それで良いな?」
「はい…。」
サーシャは了承した。
時空が歪み、ミシェーラとラクカジャが消える。
「ミシェーラ…!視界に入ったものを全て屠れ!己の気が済むまで…!」
ラクカジャは知っていた。生まれてからこの方、ミシェーラがずっと我慢をしてきたことを。
「はい❕分かりましたあ❕」
ミシェーラは堂々と村へ入って行った。
「ミシェーラが…!帰って来た…!!」
「ミシェーラ!お願いがあるんだ!お前が此処を出ていってから、村が…!もうこれからはずっとここに居てくれ!」
「……ください…。」
「「へ?」」
「黙ってくださいよ❕あんなに私を虐めたくせに、あんなに私に出て行けといったくせに…挙句の果てには犯そうとしたくせに、何ですかー❔それぇ❕お願いがあるんだ❔ずっと此処にいてくれ❔巫山戯ないでくださいよー❕❕」
「ご、ごめん…!俺、君があんなにも村を支えててくれたのに、気づかないで…!」
「下等生物はぁ、本当に救いようがないですねー❔利益しか考えないんですねー❕」
「っ?何故だ…!?お前は優しい娘だったじゃないか!?一体どうしたんだ…!?」
「汚い唾を飛ばさないでくださいよー❕
話す価値すら見い出せません…❕消えてください❕」
「なっ!?ま、待て!こんな事して良いのか?村は今度こそ受け入れてくれないぞ!」
「脅しのつもりですかー❔
ご心配なくー❕私は、帰って来たわけじゃありませんからぁ❕復讐しにきたんですぅー❕」
「グハッ!?」
ミシェーラは視界に入るもの全てを屠った。
だが、ふと、手が止まる。その時、ミシェーラの目に入ったモノ。それは、ミシェーラの家だったモノ。
「ずっと此処に住め…ですかあー❕」
初めから期待などしていなかったが、やはり、村の者たちは、ミシェーラを利用するつもりだったのだ。あの時のように。
今度は、村の者、全てを屠る。手加減などしない。
「
ミシェーラは大魔法を使った。これでもかというほどの魔力を注ぎ込んだ。
村は地獄絵図と化した。
この大魔法の範囲内に居る者は、驚くほどの美女に惑わされ、自ら同胞を攻撃する。魅了耐性を持っていようが、男であれば、美女に惑わされることは不可避である。何故なら、その美女は、その人物にとっての理想の女性だからである。そして、その美女は、他の人には見えない。一人一人違う美女が見えるのだ。
村の者達を全て屠ったところで、ミシェーラは、心に蟠っていたドス黒い何がスッと無くなるのを感じた。
「ミシェーラ!魔王城に帰ろうぞ!」
ラクカジャが駆け寄って来る。
「ラクカジャさあん❕」
そして、熱い抱擁を交わそうとした。が、気がつくと、魔王城に帰って来ていた。どうやら、ミシェーラがラクカジャの方に走ってくるのを見計らって、ラクカジャが時空を歪ませたようだ。
「シーク村が魔王領となったぞ…!ミシェーラの功績だ。妾は何もしておらん。ああ、後、アルに頼んで、シーク村に兵士を配置したぞ。」
「ありがとうございます…。ミシェーラ。」
「いえいえー❕」
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