第12話魔王の部下
王国からの兵士達を一人残らず倒したところで、ラージャは、ため息をつく。そして、先程殺した男の将へ顔を向ける。この男からは、明確な殺意、害意を感じなかった。
ラージャは、この男を知っていた。名は、アベル。どちらかというと、この男は、王のやり方に懐疑的だった。
「生かしておくべきだったかな…?」
ようやく食事を終えたアルが近づいてくる。
「どーしたのー?」
「殺さないほうが良かったのかなって…。」
「もう戻ったほうがいいんじゃないかなー、ラージャ?」
「そうする…。」
ラージャを見送った後、アルは意味深に微笑んだ。
「おかえりなさい。」
「ただいま、サーシャ…。」
やけに元気がありませんね…。
魔王はこのことに触れない方が良いと判断し、口を開く。
「そういえば、『闇の従者』全員からお返事を貰いました。」
サーシャは、『闇の従者』すなわち、元・魔王軍の幹部6人?に手紙を出していた。
「私達に味方するとのことです。」
サーシャがそう言った瞬間。
部屋の扉が勢いよく開けられた。犯人は…。
「魔王様。来ましたよぉ❕」
「ミシェーラ…!」
幹部の一人、ミシェーラである。サキュバス族らしい。目を奪われる程の美少女であった。…少女であるかは、定かではないのだけれど…。金髪碧眼の少女、もとい…女性である。
「うふふー。今日も魔王様は、綺麗ですー❕」
そう言って、サーシャに抱きつく。
「ミシェーラ…あの…何を…?」
ミシェーラの背中に回された手が怪しげな動きをしているのだ。
「んもぅ❕ハグですよー❕あ・い・さ・つです❕」
心なしか、ミシェーラの息が荒くなっているのだが、気のせいだろうか?
「サーシャ様。報告にあがりま…した…!?」
「あらー❔グリンダちゃんじゃないですかー❕❔お久しぶりですー❕❕」
ミシェーラが目をキラッキラさせて、グリンダに駆け寄る。それを見たグリンダは、顔を引きつらせた。そして、本能的な危機を察知したのか、逃げ出す。
「ああー❕❕グリンダちゃん酷いですー❕」
「う、ぎゃあああああ!!!此方に来るなァァァァ!!」
部屋の中でグリンダとミシェーラが追いかけっこをしている。グリンダは涙を流しながら走っている。泣くほど楽しいのだろうか?
数時間、追いかけっこをした後、ミシェーラにグリンダは捕まった。その時、グリンダはこの世の終わりみたいな顔をしていた。それに対しミシェーラは、キラキラ、もう光りすぎているくらいに眩しい笑顔になっていたのだけれど。
「ぐ、ぎゃああああああっ!!」
とある村で、月の輝く夜にとある家の前で鮮血が飛んだ。
「王国に逆らうな!こんなちっぽけな村が『王国の食糧庫』に選ばれたことを光栄に思え!」
王国からの村の監視役であろう男が傲慢に言う。
「し、しかし…この村の収穫量は、例年に比べかなり少なく、それだけの量を差し上げると、この村の人間は皆、餓死してしまいます…!」
村長は、恐怖と同時に困惑していた。
「そんなことは関係ねぇ!さっさと出しやがれ!」
無理難題を押し付けてくるのだ。
「ですから…」
「逆らうのか!!よし、いいだろう。お前はもう用済みだ。」
その言葉と共に、血に濡れた剣は振りおろされた。
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