第8話王国
「なんじゃと!?」
静かな王宮に、王の声が響き渡る。
「申し訳ありません…。」
よりにもよって、ラム村が!
「すぐに取り返せ!」
「しかし…!」
役立たずが!わしに意見するなど十年、否、千年早いのじゃ!
「わしに逆らうのか?」
「分かりました…。」
「さっさと準備をしろ!十万の兵で攻めるのじゃ!!」
王宮から出た後、アベルは、大きな、大きなため息をついた。
「あの王は…!!どうしろってんだよ!ラージャが勇者になって、王宮にいる兵士達は、出番がないからと鈍ってやがるってのに!」
そうなのだ。ラージャが勇者になると、兵士達が出る幕は無くなった。ラージャは、それ程までに強かった。魔王を一人で倒すくらいには。
兵士達は、別に魔物を殺さずとも、金は貰えていた。だからこそ、兵士達はラージャに任務を丸投げして、酒を飲んだりして遊んでいたのだ。
それに加え、ラージャに倒されたはずの魔王が復活、魔王を倒した勇者ラージャは行方不明。
事態は最悪だ…!使い物にならない兵士達に、復活した魔王。しかも、その魔王直々にラム村に出向いたらしい。勝てる筈が無い!
「大変なことになりました!」
そう言ってグリンダが話し始めた。
曰く、偶然この村に来ていた王宮に仕える者に魔王が復活した事がバレ、ここに王国軍が進軍してくるらしい。幸い、ここにラージャが居ることは知られていないらしい。
「王国軍…!」
その青い双眸に恨み、怨みが込められる。
「絶対に許さないんだから…!」
「アル、私もここに残るわ…!」
「うん、いいよー!」
「サーシャとグリンダは魔王城に帰って引き続き、魔王軍に味方する魔物を集めて!」
「分かりました。ご武運を。グリンダ、行きますよ。」
「はい!サーシャ様!」
アベルはラム村に来ていた。あまりの恐怖に顔が引きつる。将たるもの、部下を不安にさせないよう、例え、勝機が見えずとも悠然としていなければならない。だが、これから負け戦に挑むことを考えてみれば、誰が咎められよう。最悪、命を落とすことになるのだ。
王国には、妻と2才になる娘が居る。王命に逆らっても死ぬ。かといって、王命に従えば死なないわけではなく…。
「アリシア…、カレン…。」
愛する妻と子の名前を呼ぶ。
「駄目なヤツでごめんな…。」
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