第7話

大草原で、一晩過ごした。


星がたくさんあり過ぎて、見知らぬ夜空に涙が滲んだりもしたけれど、テントはなかなか快適に眠れた。


クッションのあるシートに、天窓もついていて、寝ながら星空観察が可能なのだ。


何より、杖が一緒に居てくれる。意思疎通は無理だけど、かなり相性はいいと思う。


本当に不思議な杖だ。


耳を当てると、ヒューヒュー風の音が聴こえる。まるで、別の世界に繋がっているみたい。


簡単な朝ごはんを済ませ、さて出発となってから、ステータスをチェックする。


「お?」


体力・35/35

魔力・350/350


加護・星女神の加護

杖・星女神の杖

スキル・自由魔法、浮遊、杖術、忍耐、暗記、浄化、地図



順調に増えてるみたい。


平均値が分からないから、なんとも言えないんだけど……他人のステータスって、見れるのかな?


レイヴィのを、見とけば良かった。参考に出来たのに。


「まぁいいやー、出発〜」


お天気良いし、のんびり行こう!






大草原に風が吹き抜ける。


ザワザワと草地が波のように揺れ、鹿の群れが集団で移動している。


大きなオレンジ色の鳥達が、水辺を半分覆っている。


牛に似た、黒い集団が土埃をあげて、水辺に突っ込む。


低い木がまばらに生え、その下には大型のヒョウ? みたいな猛獣の親子が寝そべっている。


杖の高度を少しあげて、私は大自然を眼下に眺めながら、遠くに見えている大森林を目指す。


動物しかいない。


人っ子一人いない。


地図表示は常に視界の隅に置き、危険が無いか確認しながら空を進む。


……そういえば、計画性なく町を出て来ちゃったから、食料が保存食しかない。


途中、途中で、食べられそうな果物や、薬草を採取はしてるけど……。


ちょっと不安。





たまに、上空から鳥に襲われる。


お陰でバリアを覚えたよ!


ビュンビュン飛んで、なんとか大草原の真ん中辺りまで来た。


もう、夕空だ。


紫紺色のグラデーションに、緋色の夕陽が沈みかけている。


さっそく覚えたバリアを張り、テントを設置。


溢れるほどの星空を眺めながら、眠る。


遠くで、何かの獣の鳴き声が、か細く響く。







そうして、大森林に近付くまで、三日はかかった。


よく考えずにここまで来ちゃったけど……どうしようかな?


地図表示に、映ってるんだよね……緑の点の集団が。


暗記した知識によれば、大森林に人の国は存在しない。


この世界の人種は、人、亜人、獣人、妖精……。


緑の点は、どうやら珍しい、妖精種族のようだ。


これってアレでしょ。隠れ里とか、隠蔽してるとかだよね。


見つけたら、ダメなやつ。


うーむ。真っ直ぐがダメなら、横に行くか。


知識から、世界地図を引っ張ってくる。


戻るとして、右に行けば辺境都市アガルト。


左に行けば辺境領地の、名も無き田舎。


「うーむ、右かな?」


田舎は、頻度によるけど生活水準が不安。


都市と呼ばれるくらいなら、ちゃんとした宿屋があるはず!


「よーし、戻ろっか!」


という訳で、大森林の手前を右に進んでから、回れ右をして、再び大草原に飛び込んだのだった。


行き当たりばったりと、言うなかれ。


私は自由なのだ。


自由に進むのだー!



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