第3話 お嬢様シンキング

沈みかけの夕日に照らされる帰り道、我々五人はいつもの公園に立ち寄っていた

メンバーは僕、由香子、黛、佐々木、木刀

つながりは幼馴染。以上

「んで?結局その金子ってやつと東方ってやつに会ってそれぞれに勧誘を受けたと」

 由香子はブランコを漕ぎながら今日のことを反芻する

「いやーまさかどちらの派閥もほかのクラスにまで手を伸ばしてるとは思わなかったね」

「ほんとだよ、教師まで派閥に所属してるって聞いたときはあきれたぜ」

「おや、知らなかったのかい?正面玄関にでかでかと両派閥のポスターが貼ってあるじゃないか」

正面玄関なんて使ってる生徒いないだろ下駄箱ないのに

「ってか、ほかのクラスまで勧誘して周ってるってことはお前らにも関係してくるんじゃねーの?」

 木刀が持っている木刀で由香子と黛を指す

 ちなみに木刀は本名ではない。本名は伊佐山で、いつもなぜか木刀を持ち歩いているからあだ名が木刀になっている。本人いわく護身用らしい

「まあ、関係はしてくるよな。というかうちのクラスにも勧誘来てたし」

「私のクラスにも来てたよ」

「一つのクラスのかわいい子を決めることだけにここまで必死になるとは、高校生ってのは恐ろしいね」

佐々木は手にしていたイチゴミルクを一気に飲み干す

てか、勧誘受けたんだろ、どっちの派閥にした?

「俺は、片岡派閥だな、話し合いを重ねた結果副リーダーという立場付きで入れさせてもらった」

「あんたそんな得体のしれない団体の副リーダーになるとか頭おかしんじゃねーの、あ、わたしは城ケ崎派閥ね、入ったら宿題免除してくれるって言われたから入っちゃった」

 ふむ、それぞれ私利私欲で入っちゃったのか。そんな意味の分からない団体に。

「まあ入ったからといって何かデメリットがあるわけじゃないんだし、直観ではいればいいんじゃない、・・・・・ってもうこんな時間、私先帰るから、じゃあね」

 そういって由香子は砂場に作っていたモンサンミシェルを思いっきり蹴とばして帰っていった

時刻は5時を回ろうとしていた

「・・・俺たちも帰るか」

「そだね」

「じゃ俺コンビニで買うもんあるから先帰っていいぞ」

 言われなくても帰るぞ

かくして僕たちは帰路についた。一応の結論としては各々好きなところに入るっていう着地点についたらしい、・・もうちょっと考えるとしよう、くだらねーなー。


家に着く、車がないな。あ、今日母さんいないのか。

ため息をつきながら鍵穴に鍵を通す、


 ・・・・ふむ


誰かいる

家の中に

誰だ

姉貴か、いや、あいつは来週帰ってくるらしい

早まったのか

その可能性はないわけじゃあないけれど

気配的にそれはない

念のために鞄はおろしておこう

こういう時こそ吸血鬼の力の出番だ

仕舞っていた翼をひろげて盾として体を包む

勢いよくドアを開ける


「誰だ!」


 もし、この結末がわかっていたならば僕はもう少しましな格好をしていれるように努めていたと思う

意外にも不審者はドアの真ん前に立っていた

それはもうびっくりするほど目の前に

勢いよく飛び込んだ僕はスピードを殺せず

不審者、もといJKに突っ込んだ

「きゃあっ」

どっしーん

JKはのびていた

やっべーどうしよう

とりあえずリビングのソファに寝かせる。

「ったく、なにすんのよ」

それから2時間後やっと目を覚ましたとおもったら、JKはご立腹だった

「ごめん、君だって分かってたならちゃんと殺す気で突っ込んだんだけど、分かんなかったから」

「どこを反省してんのよっ、ってか殺す気なの?」

 くそっ僕としたことが千載一遇のチャンスを無駄にしてしまった。きっと今日はぐっすり眠れないだろう、なんて日だ、だれがこんなことをした、あっこいつ(JK)か。よし殺そう

「なんでそうなんのよ」

つい癖で

「どんな癖よ」

「わたしを、ころしたら、だめ」

ひょっこりと幼女が顔をだす。こいつ今どこから出てきたんだ

というかなんでこいつら僕の家知ってるんだ

「ここら辺の家をしらみつぶしに調べたってだけよ、だから玄関でぶつかっちゃったんじゃない」

そりゃご苦労なこった

僕は客人たちにお茶を用意しながら答える、幼女が手伝ってくれた。やさしい

「んで、用事とは?」

「アッチ、、フーフー。・・・・あんまり美味しくない」

「粗茶ですから」

「こういう時って粗茶って言いながらいいお茶を出すところじゃないの」

「うちで出せるのは粗茶とぶぶ漬けぐらいだぞ」

「なに?帰ってほしいの?」

「うん」

「あんた絶対モテないでしょ」

「まあお前を筆頭にあんまり女運には恵まれてないかな」

「言うじゃない、本当に悪い女かここで試してあげてもいいのよ」

 JKが少しだけ近づいてくる。舌なめずりのせいか唇は艶めいている

「くどい」

「そりゃそうだ」

 JKはひっこんだ

「一度失敗した男に何度も行くようなことはさすがにしないわ」

「結局用事は何なんだよ」

「あそうそう、それなんだけどさ最近ここらへんで神が降りてきてるらしいんだよね、だからあんた気をつけなさいよ」

え、なんで

「なんでってそりゃ、浄化されちゃうからよ」

なんで神が僕らを浄化するんだよ

「そりゃあんた、天界の住人が地獄の住人を浄化して周るのは割と定石みたいなところあるじゃない。んでその天界の住人の神が直々に私たち吸血鬼を浄化して周ってるって訳」

なるほど、おおむね分かった。

ただ一つ疑問なのはなんでそれを僕に伝えたのかだ

「それは、まあ、、その、、、いいじゃない、好意で教えたってことにしといてよ」

JKは虚を突かれたように顔を赤らめてつぶやいた

「わたしたちの、いえにも、かみが、きた」

それまで黙っていた幼女がくちを開く

「今も、見張られてて、いえに、かえれない、ごはんも、たべれてない」

どれくらい?

「いっかげつ」

絶句した、一か月ってことは僕と出会ったあとすぐじゃないか

「私たち吸血鬼は一か月何も食べなくても死にはしない、でもね、精神的には来るものがあるわ」

JKは僕の制服の端をつかんで目を合わせて来る

「だから、私は正常でいたいから、自分勝手だってわかってる、この前やったことも謝るから、だから、私たちをここに匿ってもらえないかしら」

 おそらく、好意で教えたのはこのためだろうなとのちに僕は思った

プライドの高いお嬢様が恥を忍んで頭を下げている。それを前にしてだれが断れよう

僕はしばし考えた結果彼女らを匿うことにした

okをだした時の彼女らの笑顔はきっとこれを逃したらもう見れない気がしたから。


「てなわけで家に二人ほど変な奴がいるけど気にしないでね母さん」

「おまえ馬鹿じゃねーの?」

電話でいろいろ脚色や嘘を織り交ぜた言い訳を母さんに伝えると、それはもうめちゃくちゃ怒られた、そりゃそうだ、でも何とか説得をして一か月ほど置いてくれるそうだ。

家の中にそう都合よく使われてない部屋なんてものはないので自分の部屋を貸し出してぼくは姉貴の部屋で寝ることにした。帰ってきたらまた大目玉を喰らいそう。


 その日の夜皆寝静まり

久々の安眠だったのだろう二人は深い眠りに落ちていた

だから、ぼくだけが気づいていた。家に入ってくる足音に

階段をおりて電気をつける

「誰ですか」


「おぉ!見つかっちゃいました。どうもこの家の家主さん、私神様ですあなたの願い叶えにきました!えへへ」



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