第2話 祭りでシビレル

「ねえ、聞いた?昨日もうちの学校の男子が消えたらしいよ」

「らしいねていうかそれこの前由香子が付き合い始めたばっかの黛らしいじゃん」

「そうそう、次はうちらの彼氏かもしんないね」

「嫌味か?うちが最近別れたの知っとるよな?」

「え?そうやったっけ、めんごめんごつい癖で」

「生かしておく訳にはいかんくなったな」

「やれるもんならやってみろよ」

 ここ最近のクラスの話題は男子高校生が謎の失踪をとげる事件で展開されていた。

原因を知っているこっちとしてはむず痒くって仕方がない。

てっきり例の幼女がまたこっちに訪ねてくるのかとも思っていたのにだけれど、そんな事はまるっきりなくここ1ヶ月は普段通りの生活ができている、どうやら太陽に当たっても特に内臓だけになったりはしないし、個人差でもあるんかな

 というか冷静に考えてうちの学校の生徒、もう10人くらい居なくなってんだから学級閉鎖しろよ。授業中僕はそんな事を考えていた。

 呆れ返るくらい平和な天気を空に浮かべた昼下がり、今日は屋上で昼ごはんを食べよう。そう思い立ったらすぐ行動、弁当とスマホを両手に持って教室を出る


 屋上は閉まっていた


そりゃそうだ、普通の高校が屋上を開放しているわけがない、大人しく教室に戻った。

まばらな人数が談笑しているなか二人が声をかけてくる

「おっ来た来た、おーいこっち座れよ」

「どこ行ってたんだい」

ちょいと屋上に

「あんまり人と交流しないタイプの主人公がヒロインと出会うシチュエーションってやつをを求めるのはいいけど、開いてなかったらダサいだけだね」

佐々木がすました顔で言ってくる

やかましいわ

なんとなく気まぐれで屋上に出向いただけで特に用事があったわけではない

いつも通りこのメンバーで僕たちはお弁当を食べ始めた。

と、ここまで神妙な顔つきだった木刀が声を潜めてしゃべりだす

「三人集まった所で大事な話がある、俺たちも今月で2年生に上がったわけだ、こいつは一年生の時もやったが今一度やろうじゃないか、あれを」

何を?

「そりゃあ野郎三人集まればやる事は一つ」

「ほうほう」

「うちのクラスの一番可愛い子を決める会議だよ」

おとなしいと思ったらそんなことか

時代に逆行してんな

「といってもうちのクラスなんて大体二大派閥で割れちゃってるしね」

三人で教室の端をみる

そう、うちのクラスには男子のみが所属している派閥がある

一つは(城ヶ崎海)派閥、その名の通り城ヶ崎海を推している派閥である。本人は知らない

もう一つは(片岡郡)派閥、その名の通り片岡郡を推している派閥である。本人は知らない

「そう俺たちは仲間として派閥は統一しておかなければならない、うちのクラスは計40人そのうち男子は19人。城ケ崎派閥の勢力は8人、片岡勢力も8人。そしてここにいる三人はまだ派閥を決めていない、きっと今から両方の派閥から参加するように求められるだろう、俺はお前らとは争いたくないから、ここではっきりしておこう」

「なるほど、それは重要だね」

 何をくだらないことをと、思ったりしただろう。だがこのクラスにおいてそんなこととをいうのはやめておいた方がいい。なんせこのクラスの男子は本気なのだから。


 時はさかのぼりこれは去年の文化祭での話だ。

どこのクラスも出し物や出店が決まり作業が始まっている中うちのクラスはいまだに出し物が決まっていなかった。

そんな中一人の勇者が立ち上がりこんな提案をした

「このクラスの女子からうちのクラスだけでミスコンをしよう」

変なところでノリの良いうちのクラスは他に意見がないことを確認するとすぐに許可を出した。

 これが悲劇の始まりだった

 ルールは簡単、まず男子は文化祭までに推しの女子を選ぶ、女子はミスコンまでの間に化粧をしてくることが許可されているので文化祭当日まで自分をよく見せようとする、推しを選んだ男子はとにかくいろんな手を使って推しの女子を全身全霊をかけて宣伝する。文化祭教室にて抽選会を開きミスコンを選ぶ。

 大まかな流れはこんな感じ

ルール自体はまあ、なんということはない不備はあるけど高校生が考えそうなかんじの仕上がりであろう。

 問題はここからだった。

ミスコンの話ができて二日後、クラスの男子は真っ二つに分かれた。

理由は単純、うちのクラスの女子二人、城ケ崎と片岡が本気を出してきたからだ。

 城ケ崎は親譲りの美貌の持ち主でクラスの女子からも男子からも人望があるリーダー格の陽キャだった。

勝負事になると真っ先に飛びついてくるタイプの彼女はミスコンの話が出たときはほぼみんな一位はこの人だろうなと思っていた。僕も思った。

 ただ、これが最大の番狂わせ片岡群の登場により雲行きが怪しくなる。

彼女はあまりクラスで発言権を持っているわけではなく、日陰者という立場を甘んじて受け入れているような女子で、顔立ちは整っているが秀でて人気があるタイプではなかった。


だが、彼女がメイクをほどこして学校に来た時、そこには女神が舞い降りた


のちに彼女はこう語る

「・・・私ね、もともとこういう場所に出るタイプじゃなかったんだ、人前とか嫌いだし、メイクをしたのも家族にミスコンのこと話したらお母さんが変に気合入っちゃっただけだし、・・・・でも期待されるって結構いいかもね」


 女神が舞い降りた日からうちのクラスは戦争だった。

休み時間ごとにそれぞれの派閥のリーダーがそれぞれの宣伝活動、もしくは派閥への勧誘活動をして回り(城ケ崎と片岡には内緒で)

ほかの女子は完全に戦意喪失で派閥争いに加担してくるようになって、

もはやクラスは真っ二つ、授業中の空気のぴりつき具合には学校で幅を利かせている先生でさえも黙らせるものだった。

そして運命の文化祭、

クラスには入りきらないほどに観客が詰め寄りドラムロールが鳴りやむのをいまかいまかと待ちわびている。

ときは満ちたとばかりにドラムが鳴りやむ

血で血を洗う戦争に幕を閉じたのは

片岡の勝利によってだった。


これにて戦争は終了し派閥同士のリーダーは固い握手を交わし汚れた教室を全員で掃除をしてその日はお開きになった。そう男子だけはこれで終わったと思っていたのだった

問題はまだ続いている

それはじわじわと内側から膨れ上がってきた得体のしれない何かだった。

ある日女子の一人がこう口にした

「負けた派閥のくせに」

それを言った本人はきっととくに深い意味を込めていたわけではないのだろう、喧嘩の途中の何気ない一言が、取り返しがつかなくなってしまい

クラスには明確に堅実にそして目に見えない格差が出来上がってしまった


というのが今僕たちのクラスが抱えている問題、何より一番の問題はこんな派閥があることを本人たちは知らないということだ。

ちなみに僕と木刀と佐々木は、転科試験で二年生からこのクラスにはいってきたので格差社会から逃れられている。それもどうも今日までらしい

僕ら三人は放課後それぞれの派閥のリーダーから呼び出されていた


「やあどうも、城ケ崎応援課、リーダーの金子だ。よろしく。」


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