■ページ目

――何枚も、何枚も。

繰り返すように流れていく、過去の情景オモイデ


 永遠に続くように思えた上映会の終わりは唐突に、そしてあっけなく訪れる。


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「――ほら、風太。あたしが風太のことを守ってあげるから」


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 その言葉を、そう言って手を差し出すかつての姉を瞬間。


――世界は音を立てて砕け散る。


********


「……大切な“思い出”か。ああ、そうだな」


 思い出す。とんだ暴君だった。目を離すと何をしでかすかわからなかった。

――大切な家族だった。


「“思い出”はたしかに大事だ。でもな、」


 手を差し伸べてくれた誰かに、余計なお世話だと告げるように。一言一言、しっかりと言葉を紡ぐ。


「俺にとっては、香月あのバカのほうが大切だ――!」


 叫ぶ。奇跡が起こったのだ。たとえ泡沫の夢だとしても……天野香月が存在するという現在いまを、天野風太は手放したくなかった。


――その願いはたしかに叶えられたのだ。


********


 面影島事件がひと段落した後も、天野香月は存在したまま残り続けた。数少ない『黄泉還り』のひとりとして。


 そして、このときから彼の『裏切り』は始まった。

姉のことをUGNに黙っていると決めたその日、過去よりも停滞を望んだその日に。



                   To be continued 『traitor's criteria裏切りの基準

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『メモリアル・レコード』 皐月 @satsuki-24

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