第37.5話 オルクスと少女
『ズドン』
「ふははは、このアビリティ結構強いんじゃないかぁ!」
デリアリから少し離れた川の近くでオルクスは、新作アビリティのテストを行っていた。
「アビリティー雷絶一閃、なかなかいいねぇ」
「なにその名前ダッサいね」
「だ、誰?」
気がつくとオルクスの後ろには見た事のない少女がいた。
「でも強力だね」
「だ、だよね!このアビリティ結構強いんだよ」
「でも名前がダサい」
「う、ううっ」
痛いところを突かれたオルクスの顔は引き攣っていた。
少女の歳はだいたい10歳前後で、赤い髪色の長髪、服装的にデリアリの街に住む普通の子供と思われる。
そんな少女は苦い顔をするオルクスを見てクスッと笑った。
「お兄ちゃんはさ、ここでいつもこんなことしてるの?」
「いや普段は別のところでやってるけど、今日は気分転換かな」
「へぇ、ねぇもっと見せてよ」
「え、もっと?」
オルクスは一瞬アビリティを披露するか迷ったが、まぁ子供ならいいかと思いアビリティを披露する事にした。
「いっぱいあるんでしょ」
「ああ沢山あるよ」
「じゃあお願い」
「うん、それじゃあいくよー」
ーー1時間後
「も、もう十分かな?」
「えー、もう終わり?」
それから1時間オルクスは様々なアビリティを披露した。
雷砲に瞬間凝結、浮遊に瞬間移動。
沢山使ったため、まだ見せていない見栄えのいいアビリティは【魔境】系くらいしかなくなってしまった。
「そ、そうだねまだまだやれるけど少し休憩したいかな」
そうしてオルクスはそのまま地面に寝そべった。
「あー休憩ね、いいよ!」
そう言って少女はオルクスの隣にちょこんと座った。
「ねーお兄ちゃんは、上級術師様なの?」
「え、俺?いやいやそんなんじゃないよ」
「それじゃあ何者なの?」
「俺はただの無名冒険者さ」
そう言ってオルクスは目を閉じた。
無名の冒険者というのはあながち間違いではない。
確かにオルクスの部下であるファルコとミリオンは今や冒険者ギルドバーバラの誇るS級冒険者であるが、肝心のオルクスは未だB級である。
故に無名である。
「でも無名のわりにお兄ちゃん強すぎるよね」
「いやいや俺なんて……あれあの子どこ言った?」
目を開けるとその女の子は消えていた。
起き上がって辺りを見渡したがもう姿はなかった。
「あれ本当にどこいったんだ?」
「ふふっ、オルクスくんいい感じに成長してきたな、僕は嬉しいよ」
オルクスから少し離れた川辺を歩く少女の身体は、みるみる形を変え、ひとりの青年へと変わっていった。
「君と話せて良かったよ、また話そうね僕の分身、いや子供かな?」
そう言って青年の身体は薄くなり消えていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます