第77話 帝国の復興(2)
オレ達はビクティア帝国から戻り、王城でライル国王と宰相のバロンお父様と会議室にいる。マリオさんについての報告をしているのだ。
「レイ、ご苦労だったな。それで、マリオ=サンドレスという人物はどうだった。」
「はい。正直、帝国内で権力を掌握しているという感じではありません。ですが、人物的には、反戦論者で尚且つ平和主義者でした。」
「つまり、本人の資質は十分だが、他を抑えられるかどうかわからないということだな。」
「その通りです。」
「ならば、しばらくそなたが『神の使徒』として、後見役となる必要がありそうだな。」
「そうなんですが、旅もしたいんですよね~。」
黙って聞いていたお父様が発言する。
「レイ。世界の平和のためだ。しばらくは我慢するしかないぞ。」
「はい。」
ミクが言った。
「レイ。帝国内を旅すればいいにゃ。帝国内で美味しいものを食べまくるにゃ。」
リリーが賛同する。
「賛成!」
エリーが大切な提案をしてきた。
「レイ君。見るからに一般庶民の生活水準は低いわよね。ロラックスさんにお願いして、ロラックス商会の店を帝国に出してもらったらいいんじゃない?」
ミクが喜ぶ。
「それいいにゃ。『フォラン』の姉妹店ができれば、遠慮なく帝国でも美味しいもの食べられるにゃ。」
「ミク。ロラックスさんに悪いぞ。今度はしっかり食べた分だけ、ミクが払えよ。」
「え~。お金ないにゃ。」
「なら稼げよ。」
「ミク。一緒に帝国内で魔物討伐しましょうよ。そうすれば、魔物に苦しめられてる人達の助けにもなるし、私達も素材を売って儲けられるよ。」
「リリー。賢い。」
「えへへへへ。褒められちゃった。」
そして、3日後に世界会議を開くことが決まり、その席にマリオさんに代表として参加してもらうことにした。その帰り道で、オレは通信器具について考えていた。今は、オレが『転移』して伝えたり、『通信』で伝えたりしているけど、効率が悪い。しかも、オレがいないとすぐに連絡が取れない。なんか違う方法を考えないといけないな。
「レイ。何を考えてるにゃ?」
「ん。わかった?」
「当たり前にゃ。これでもレイの妻だにゃ。」
「この世界には通信の手段がないんだよね。何かいい方法がないかな~?」
エリーが鋭い質問をしてきた。
「いつも思ってたんだけど、レイ君ってよく『この世界』っていうけど、他の世界を知ってるの?」
オレは焦ってごまかした。
「いや。そういう意味じゃなくて、・・・・・・」
「レイ君、何かごまかしてる。ムッツリエッチ。」
リリーが助け舟を出してくれた。
オレはその日の夜、神界の母上のところに来ている。
「レイ。今回は大変でしたね。リリーちゃんは大丈夫なの?」
「はい。ご心配をおかけしました。オレもまだ修行が足りないことを実感しました。」
「皇帝と宰相を殺めたことでしょ。彼らは、この世界に生まれてくるにはまだ未熟だったのよ。そう思いなさい。」
「はい。母上にそういっていただけると気が楽になります。」
「ただ、今回、あなた危なかったのよ。あのまま力を開放していたら、この惑星ごと消滅していたかもしれないわ。もっと注意が必要ね。感情に流されないようにしないとね。」
「はい。以後気を付けます。」
「以前あなたが話していた異世界人について調べたわよ。」
「どうでしたか?」
「そうね。結論から言うと、あの宰相ビスマンでしたっけ?彼は、異世界人ではなく自然神よ。」
「自然神ですか?オレのような特例以外で、神が地上世界に降りることが可能なのですか?」
「自然神は神といっても、神界にすむ神ではないのよ。下界に住みながら、中級神や上級神の指示に従い、働く神なのよ。」
「では、やはり神界の誰かが関わっているのですか?」
「そこまではわかってないわ。どこか別の世界の上級神が送り込んだかもしれないでしょ。」
「目的は何ですか?」
「考えられるのは、この世界の滅亡か、この世界を乗っ取る気か、どちらかでしょうね。」
オレは、神界から自分の部屋に戻って寝ようとした。ベッドを見ると、3人娘が大の字になって寝ていた。一人一人の唇にキスをして、そのままベッドの端で寝た。
するとミクの可愛い寝言だ。
「レイ~。何か食べるにゃ~。むにゃむにゃむにゃ。」
翌日、オレ達はロラックス商会の本店に来た。受付の女性に案内され、会長室にいる。
「レイさん。お久しぶりですね。噂は聞いていますよ。世界中でご活躍なんですね。」
「はい。まぁ。」
「それで、今日はどんなご用件ですか?」
オレはミクを横目で見ながら言った。
「はい。ミクが食事代の精算をしたいっていうもんですから。」
真っ赤中をしてミクが怒る。
「レイ。違うでしょ!確かにごちそうになっているけど。」
「冗談です。実は、帝国についてです。」
「帝国ですか?確か、皇帝と宰相が死んだと聞いておりますが。」
「その通りです。帝国は指導者が変わって、これから大きな改革が行われます。軍事国家からこのステイル王国のような平和的な国になります。ですが、一般の人々の生活水準があまりにもひどいんですよ。そこで、ロラックスさんにお願いがあります。」
「なんでしょうか?私にできることでしたら。」
「ロラックスさんにしかできません。このロラックス商会の支店を、帝国の各都市に出していただきたいんです。リーゼット聖教国にしていただいた時と同じように。」
「リーゼット聖教国の時もそうでしたが、レイさんには驚かされます。我々商人は、お金を儲けることを第一に考えます。なるべく短期間で、少ない投資でできないか考えてしまいます。ですが、レイさんの言う通り、住人の生活水準が向上すれば、商会も永続的に安定した収入が得られるようになります。しかも、その地域の人達も雇用しますから、失業者も減り、治安もよくなります。我々も、護衛などを雇う必要もなくなるわけですな。」
「お願いできませんか?」
「引き受けましょう。レイさんの目指す平和な世界の実現のために、私も協力させていただきます。」
「ありがとうございます。」
オレ達は固い握手を交わし別れた。
そして、世界会議の日が来た。
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