第76話 帝国の復興(1)
オレ達4人は、再びビクティア帝国の王都ビクトルに来ている。王都は、皇帝ナイルと宰相ビスマンが殺されたことで大騒ぎとなっていた。一般市民からは安堵の声が聞かれる。
「これで、俺達の生活もよくなるよな。」
「お前、そんなことが兵士に聞かれたら殺されるぞ。」
「構うもんか。もう、皇帝はいないんだ。」
「これで、高い税金や兵役がなくなれば、俺達の生活も楽になるぞ。」
街のあちこちで聞かれる。
オレ達は、正々堂々とナイル城に乗り込んだ。城に入る際に門番に止められたが、オレが皇帝を殺した本人であると告げると、門番は慌てて城の中に入っていき、大勢の兵士と貴族風の男と一緒に戻ってきた。
貴族風の男が話しかけてきた。
「お前が皇帝陛下を殺したというのは本当か?」
「ああ、本当だ。」
「こちらに参られよ。」
オレ達は、城の中に案内された。兵士達がオレ達を取り囲んでいる。そして大きな部屋の前まできた。どうやら会議室のようだった。中からは、大勢の怒鳴り声が聞こえる。俺達が中に通されると、部屋の中は静まり返った。オレはその場の全員に告げた。
「オレは、ステイル王国、リーゼット聖教国、フェアリー連邦国、竜人国で構成される世界会議の議長をしているレイチェルという。戦勝国の代表として参った。」
一人の男が前に出て発言する。
「これはこれは、大変失礼しました。私は、この国の辺境伯をしておりますマリオ=サンドレスと申します。レイチェル殿には、ご足労いただきまして恐縮です。どうぞ、こちらにおかけください。」
オレは、その人物こそがバビロンの言っていた人物だとわかったので、しばらく観察しようとした。オレが、案内された席は上座どころではなく、皇帝の座る席だった。すると、他の貴族達が騒ぎ出した。
「サンドロス殿、貴殿は何様のつもりだ。差し出がましいぞ。」
「その席は、皇帝が座る椅子じゃ。そんな小僧が座っていい席ではないぞ。」
「わし達はまだ負けてなどおらぬ。戦はこれからだ。」
何やら血気盛んな人、礼儀をわきまえない人がいる。オレは、だんだんと腹が立ってきた。
「貴殿らは何を言っている。我々は負けたのだ。古代竜や精霊王が率いる軍隊に勝てるとでもお思いか?何よりも向こうには『神の使徒』がいるのだぞ。これは神の意志だ。潔くせい。」
サンドレスの声に一旦は静まり返ったが、また騒ぎ始める。オレ達はその様子を黙って眺めていた。だが、聞き捨てならない言葉が聞こえる。
「何が『神の使徒』だ。誰がそのような出まかせを言っておるのだ。神などおるわけが無かろう。この世界は、我ら人族のものだ。それ以外は必要ない。神などの迷信誰が信じようぞ。」
「そこのあなた。」
「なんじゃ。小僧。」
「あなたは今、神を信じない。この世は人間だけいればよいと言いましたか?」
「ああ、言ったがそれがどうした。」
「ならば見せてやろうか?」
オレは、『神気』を開放した。すると、オレの身体が光はじめ、背中に大きな白い翼が出た。さらにその光は強さを増していき、神々しい光となった。オレに文句を言った人物を除いて、全員が頭を下げ平伏している。
「オレが、最高神ソフィア様から『使徒』を命じられているものですが、これでも信じられませんか?」
大きな口を開け、ボーと見ていたその人物は慌てて平伏し詫びてきた。
「お許しください。何卒ご慈悲を。」
「ここにいる全員に告げる。この世界は創造神様がお作りになられた。人族もドワーフ族もエルフ族も獣人族も、そして魔族もだ。この世のすべてをお作りになられたのだ。それぞれの種族が争い殺しあう姿を見て、神々はどう思うだろうか?考えてみよ。お前達の子どもが殺しあう姿を想像してみよ。悲しいだあろう。苦しいであろう。神々は悲しんでおられるのだ。オレは、ここに宣言する。神の意志に逆らうものは、皇帝ライル・宰相ビスマンのように、この世界から排除する。」
マリオ=サンドレスが頭を上げ告げる。
「『神の使徒』様。我々は間違えておりました。これから、この国も神の意志に従い、差別のない、平和な世界を築けるように変わっていきます。いえ、変えていきます。何卒ご慈悲を。」
オレは神気を戻していつもの姿になった。
「戦勝国の代表として、『神の使徒』として、皆さんに命じます。」
1 この国の代表をマリオ=サンドレスとすること。
2 世界会議に参加すること。
3 差別主義を撤廃すること。
4 奴隷制度の廃止。
5 巨大な軍事費の削減及び国民への税金の軽減
6 他国への侵略行為の禁止
当面必要なものだけを命じた。本当なら、貴族制度の撤廃や民主主義政治の促進もとりいれたかったが、それぞれの国で考えるべきことなので控えた。
その場の全員が納得し、そこで会議が終了した。会議終了後、オレ達はマリオさんと応接室で会談した。
「『使徒』様。本当にありがとうございました。」
「『使徒』様はやめてください。他の皆のようにレイと呼んでください。」
「わかりました。『レイ様』でよろしいでしょうか?」
「いいえ、様もいりません。」
「ならば、『レイさん』ではいかがでしょう。」
「それでお願いします。」
「ならば私のこともマリオと呼んでください。」
「わかりました。マリオさん。遅くなりましたが、紹介しますね。エリー、ミク、リリーです。3人とも私の妻です。」
「失礼ですが、3人とも強そうですが?」
「そうですね。強いですね。いつも尻を引かれています。」
エリーが場の雰囲気に合わせてくれた。
「レイく~ん。いいのかな~。そんなこと言って。」
みんなで笑いあった。
それから、『転移門』の説明を行い、門を設置してステイル王国に戻った。
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