第67話 同盟締結(2)

 オレ達は『ワープ』で、古代竜ギドラのもとを訪ねた。



「久しぶりだね、ギドラさん。」

 

「しばらく見ないうちに、レイさんは体も大きくなったが、一段と『神気』が増したように感じるが。」


「そうだね。ギドラさんと別れた後、いろいろあったからね。」



 オレは、フェアリー連邦国の件まですべて説明した。そして、竜人族が、長い沈黙を破り、同盟に参加して、表舞台に出ることについて聞いてみた。



「私としては、よいことだと思う。この世界のすべての種族が協力して平和な世界を築くのは大賛成だ。ただ、竜人族は他の種族と違い、魔族同様に戦闘能力が高い。他の種族から警戒されないだろうか?」


「オレは、大丈夫だと思うよ。それぞれの種族には異なる特徴があるよね。ドワーフ族は鍛冶が得意だし、エルフ族は狩猟にたけている。獣人族は、事務仕事や家事にたけているものもいれば、狩猟にたけているものもいるしね。竜人族は、翼を利用して運送や輸送にたけてるよね。最初は、自分達に向いてる職業から始めて、徐々に均等化していけばいいんじゃないかな。」


「レイさんの意見はもっともだが、理想論だね。」


「そうだね。でも、理想論かもしれないけど、何もしないよりいいよね。やがて、オレとミクやオレとリリーのように種族を越えた愛が生まれれば、すべての血が交じり合い、みんなの子孫達が均等になる時が来ると思う。そうなれば、差別もなくなるでしょ。」


「それには、どれほどの時間がかかることやら。」


「でも、創造神様も最高神ソフィア様もそれを意図して、様々な種族を作ったんじゃないかなぁ?まぁ、オレの勝手な思い込みだけどね。」



 オレ達とギドラはともに竜人の里に向かった。


 竜人族の長リザールの屋敷の応接室にいる。



「お久しぶりです。リザールさん。」


「ご無沙汰しています。それにしても、古代竜のギドラ様までお越しとは、何か大事な用事でもおありですかな?」


「竜人族にとって、すごく大事な話があってきたんだ。」



 オレは、現在の世界情勢について説明した。西大陸は大魔王ユリウス=サティーニが率いるサティーニ魔王国が他国を征服して統一したこと。東大陸では、皇帝ナイル=ビクティアが率いるビクティア帝国が強大な軍事力を背景に、各国に侵攻しようとしていること。世界樹の森での事など細かく説明した。



「そんなに世界は乱れているのですか?嘆かわしい。」


「今は、この竜人の里の存在も知られていませんし、被害はないかもしれません。ですが、他の国々が帝国や魔王国に滅ぼされれば、この里が見つかるのも時間の問題ですよ。」


「その通りですな。ですが、私達は強いですよ。魔族や人族ごときには負けませんよ。」


「確かに、竜人族の皆さんは他種族よりも強いと思います。ですが、帝国は戦車や量子壊砲のような強力な武器を持っています。強い竜人族でも対応は難しいと思いますよ。」


「戦車や量子破壊砲なるものがどのようなものかは知りませんが、問題ないでしょう。」



 リザールさんは帝国の軍事力を甘く見ているようだった。


「リザールさんは、精霊王アポロさんを中心とした7大精霊の皆さんをご存じですか?」


「知っていますとも。古代竜ギドラ様やその配下の皆さんと同等の力を持ち、この世界の均衡を保つ存在ですよね。」


「そうです。その彼らが苦戦したんですよ。」


「え~。信じられません。古代竜様一人でこの大陸は灰になりますよ。」


「そうです。ですが、真実ですよ。ちょっと待ってくださいね。私の知人を呼びますので。」



 オレは悪魔王バビロンを呼び出した。



「御用ですか。レイさん。」


「何度も呼び出してごめん。ここにいる皆さんに自己紹介してくれるかな?」


「はい。私は、デーモンロードのバビロンです。レイさんに従って行動するものです。」



 すると、古代竜ギドラが声をかけた。



「バビロン。久しぶりね。わかる?ギドラよ。」


「あっ。ギドラか、人族の美少女がここにいるから不思議に思っていたよ。」



 なんか古代竜のギドラさんが赤くなった。



「美少女?そうかしら?あなたもレイさんに従っていたのね。私もよ。」


「あの~。今デーモンロードと言いませんでしたか?」


 オレは怪しんでいるリザールさんに説明した。



「確かにバビロンさんは悪魔王ですが、天使も悪魔もあなたも神が創造した存在なんですよ。神からすれば、みんな同じ子どもなんですよ。」


「『神の使徒』のレイさんが言うなら間違いないですね。」


「バビロンさん、リザールさんに帝国の情報を教えてあげて。」


「わかりました。帝国は、この東大陸をすべて我がものとするように軍事力を付けています。その軍事力は強大で、この大陸を焼け野原にするほどの武器を開発しました。あの、精霊王アポロの結界をたったの一撃で消し去るほどの威力です。想像できますか?」


「状況はわかりました。我々竜人族に何をお望みですか?レイさん。」


「現在、ステイル王国とリーゼット聖教国とあの精霊王アポロさんの納めるフェアリー連邦国が同盟を結ぶところまで来てるんですよ。西大陸のサティーニ魔王国とビクティア帝国に対抗するためなんですよ。そこで、竜人族の皆さんにもその同盟に参加していただきたいんです。」


「我々に、表舞台の世界に出ろということですね。」


「その通りです。世界の平和はすべての種族によって構築されるべきだと思うんです。いかがですか?」


「わかりました。どうすればいいですか?」


「では、会議の場所と日程が決まったら連絡するので、会議に参加してもらいます。それと、この場所に『転移門』を設置したいんですが、いいですか?」


「『転移門』とはなんですか?」


「行きたい場所に一瞬で行ける便利な道具ですよ。」


「そんなものがあるのですね。」



 今まで黙っていたリリーが口をはさむ。



「私の亭主は規格外ですから。」



 その場所にいたみんなが大声で笑った。

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