第66話 同盟締結(1)

 オレ達は、現在フェアリー連邦国の宮殿の会議室にいる。ここにいるのは、昨日と異なり、精霊王のアポロとオレ達4人とドワーフ族の長へパン、エルフ族の長ゲイル、獣人族の長デドンだ。他の大精霊達は、悪魔王バビロンと奴隷の救出に行っている。



「この先の話なんですが、ステイル王国とリーゼット聖教国は同盟を結んでいるんだけど、この国はどうしますか?」


 

精霊王のアポロさんが答える。



「私がこの国の代表です。個人的には、この国も同盟に参加したいですね。皆はどうかな?」


「私は賛成です。」


「私も賛成です。」


「私も賛成です。」


「ならば、レイさん、同盟の件、お願いできますか?」


「はい。ただ誤解しないでください。同盟っていうのは、一緒に他の国を滅ぼしますよってことではありません。どこかの国が天災や人災で被害に遭った時に、お互いに助け合うというものですから。」


「わかってますよ。」



 ここでエリーが大切なことを提案した。



「レイ君。一度、お父様やチャーチルさんとアポロさんの3人で会談したほうがいいよね。」


「そうだね。」



 珍しくミクがまともな意見を言う。



「レイ。どうせなら、こことステイル王国の王城とリーゼット聖教国の大聖堂を『転移門』でつないだらいいにゃ。」


「それいいかも。」


「じゃぁ、ライル国王陛下とチャーチル教皇に相談してみようよ。」



 オレ達はここでの話し合いが終了した後、『ワープ』でステイル王国の王城へと来た。


 まず、宰相のバロンお父様の部屋に行った。



「バロンお父様。お久しぶりです。」


「レイか。たまには家に帰って来いよ。お母さんが拗ねてるぞ。」


「はい。忙しくて。もうし分けありません。それより、大切な話があるのでライル国王陛下にお会いしたいのですが、いいですか?お父様も同席をお願いします。」


「わかった。会議室で待っていろ。」


「はい。」



 オレ達は会議室に向かった。しばらくして、ライル国王陛下とお父様が入ってこられた。



「レイよ。久しいのぉ。大切な用事とはなんじゃ。孫の報告か?」



 真っ赤な顔をして、エリーがすぐに反応した。



「お父様!違います!」



 オレは、深層の森の件、フェアリー連邦国の件をすべて報告した。



「すると、そなたは帝国の戦車部隊を壊滅させたのか?」


「はい。あの戦車がすべてなら、そうなります。」


「お前が敵でなくてよかったぞ。」


「いいえ、オレはどこの国の味方でもありませんよ。ただ、平和を乱す国の敵になるだけですよ。それよりも、この東大陸のステイル王国とリーゼット王国、フェアリー連邦国、竜人の里が同盟を結べば、帝国も西大陸のサティーニ魔王国もそうそう簡単には手出ししてこられなくなります。世界の平和に一歩近づくのです。いかがでしょうか?」


「竜人の里もか?」


「はい。この際ですから、竜人族の方々にも表舞台に出てきていただきます。」


「魔族を除く、大連合となるわけか?」


「はい。本来であればマジョリーヌ王国にも参加していただきたかったのですが。」



 そんな話をしていると、リリーが悲しそうな顔をしていた。



「リリーの国もいつかオレが復興させるから、もう少し我慢してくれ。」

「レイ君。ありがとう。わかってるよ。」



 オレ達は、ライル国王陛下の許可を取り、複数ある応接室の内の1室に『転移門』を設置した。そして、リーゼット聖教国に『ワープ』で転移した。エリーもミクもリリーも疲れている様子だったので、その日は外食で済ませて異空間の家に戻った。


 ここで、昼の国王陛下の言葉を思い出したのか、エリーが肉食女子を発揮した。



「ねぇ、レイ君、ミク、リリー。たまにはみんなで一緒にお風呂入ろうよ。」



 あの恥ずかしがりの王女様はどこに行ったのか。



「オレ達は、久しぶりに一緒にお風呂に入って、一緒のベッドでぐっすりと寝た。」



 あまりにも疲れていたので、みんな夜のお仕事をする前に寝てしまった。


 翌朝、朝食を食べた後、教皇チャーチルさんのいる大聖堂に向かった。大聖堂には孤児院の子ども達もいて、お掃除のお手伝いをしていた。オレ達は司教さんに案内されて大聖堂の応接室にいる。そこにチャーチルさんと聖女メテルさんが入ってきた。



「お久しぶりです。チャーチルさん、メテルさん。」


「お久しぶりです。レイさん、エリーさん、ミクさん。ところで、今日のご用件はなんですか。」


「いえ、大人の女性になったメテルさんを見に来たんですよ。」



 オレがそう言うとメテルさんは真っ赤な顔をして恥ずかしがっていた。



「レイさんが、そんな冗談を言うなんて、でも嬉しいです。」



 すると、横には怖い顔をしたエリーがいた。



「レ・イ・ク・ン!」


「正直言うと用件は別にありますが、でもメテルさんの様子を見たかったのは本当だよ。」


「レイ、誤解されるようなことは言わないにゃ!それより用件を言うにゃ!」



 オレは、チャーチルさんとメテルさんに深層の森の件、フェアリー連邦国の件を話した。



「そんなことがあったんですね。それで、レイさんはこれからどうしたいとお考えですか?」


「はい。この東大陸のステイル王国とリーゼット王国、フェアリー連邦国、竜人の里が同盟を結べば、帝国も西大陸のサティーニ魔王国もそうそう簡単には手出ししてこられなくなります。世界の平和に一歩近づくのです。いかがでしょうか?」


「それはいい考えですね。ですが、竜人の里は伝説ですよね?」


「いいえ、実在しますよ。オレ達、マルメット山脈で古代竜ギドラさんの試練を見事クリアして、竜人の里に行きましたから、長のリザールさんとも友好関係を結んでいますよ。」


「本当ですか?長いこと伝説とされていたのに、やはり『神の使徒』ですね。レイさんは。」



 メテルさんが発言する。



「チャーチル教皇。私は賛成です。この世界を、様々な種族が協力し合って平和な世界にしていく。まさに最高神ソフィア様の願いのとおりだと思います。」


「そう言っていただければ、オレ達も嬉しいです。」


「では、このリーゼット聖教国も同盟に参加しましょう。」



 話がまとまったので、オレ達は、大聖堂内で使用されていない部屋に『転移門』設置し、登録者以外は誰も侵入できないようにした。



「メテルさん。聖女であっても、恋したり結婚してもいいんだよ。誰が許さなくても、『神の使徒』としてオレが許すから。早くいい人見つけて幸せになってね。」



 帰り際に、オレはメテルさんに言った。


 メテルさんが顔を赤くして答えた。



「実は、ずっと好きな方がいるのです。本当に私が結婚してもよいのでしょうか?」



 内心オレはヤバいと思った。



“エリー、ミク、リリーに殺されるかも?”



「聞いてもいいかな?相手は誰?」


「目の前にいます。」


「オレ?オレはだめだよ。妻が3人もいるからね。」


「違いますよ~。チャーチルさんです。」


「あっ、そう。」



 するとチャーチルさんが慌てて言った。


「ごめんね。女性から言わせてしまって。皆さん。今のは聞かなかったことにしてください。」


 そして、真剣な顔でメテルさんに告げる。



「メテルさん。僕は君を愛している。年齢が離れているけど、僕は君が好きだ。一生大事にするよ。僕と結婚して欲しい。」



 メテルさんの目から大粒の涙が流れた。


 子ども達が近寄って来た。



「お姉ちゃん、おめでとう。教皇様、おめでとう。」


「ありがとう。皆ありがとう。」



 オレも、エリーもミクもリリーも嬉しくて、もらい泣きしてしまった。


 すると、リリーが恐ろしいことを言い出した。



「レイ君。今日は夜のお仕事大変だね。皆で、徹夜だよ。」



 チャーチルさんとメテルさんにお祝いを言った後、オレ達は、一旦ステイル王国に戻り、国王陛下に報告した。そして、その日は異空間の家に戻り、夕食を取った後みんなでお風呂に入った。その後は・・・死ぬかと思った。


 翌朝、オレは目を赤くはらした状態でいる。



「さあ、竜人の里に行くよ。」

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