第62話 世界樹の森の戦い(1)
精霊王アポロやその他の者達が、結界内の最前線に来ると、眼前には1,000台の戦車がこちらに砲身を向けて待機している。その後ろに、剣や火器の武器と思われるものを持った兵隊がおよそ20万人いる。戦車の後方から、巨大な砲身を備えた戦車のようなものが、こちらに向かってきた。
精霊王アポロはみんなに声をかけた。
「相手の数が多い。武器も強力だ。みんな油断するなよ。」
その頃レイ達は、帝国軍が突然引き上げたので、ドワーフ族のダンクさんに連れられて、フェアリー連邦国軍の本部に向かった。また帝国軍が来る可能性があるので、ダンクさん以外はその場で待機している。その道中で、俺達はダンクさんから連邦国軍についての詳細を聞いた。
「ねぇ、レイ君。精霊王って強いんでしょ?なら負けないよね?」
「精霊王は古代竜と同じで、この世界の均衡を守るために存在してるんだ。強いよ。ただ、今回は相手が多くて、戦車のような強力な武器があるからなぁ。そう簡単には勝てないと思うよ。」
ミクも心配して聞いてきた。
「レイ。あの戦車とかいうのはそんなに強いのかにゃ?」
「強いよ。上級魔法ぐらいじゃ、傷すらつかないだろうね。」
「そんなに~。」
「それよりも、オレは双方に犠牲者が出ることの方が心配だよ。いったい何人死ぬんだろうな~。」
「レイ君、優しすぎ。でも、エッチで優しいレイ君が好き。」
話をしながら、森の中を歩いていると、前からドワーフ族の人がやってきた。
「ダンク。こんなところにいたのか。ところで、その方たちは誰だ?」
「この人達は、ステイル王国の方達だ。俺の兄貴ダッカの知り合いで、俺達の味方をしてくれるために来てくれたんだ。」
「4人だけか。まぁ、今は猫の手も借りたいぐらいだから、ありがたい話だよ。」
「それで、お前はどこに行くつもりだったんだ。」
「そうだ、帝国軍が20万人の大群で森の北側に攻めてきたんだ。今、精霊王様も他のみんなもそちらの防衛に行ったぞ。俺達も向かうところだ。お前達も来い。」
「レイさん、一緒に来てもらっていいですか?」
「ええ、そのつもりでしたから。」
最前線では、今まさに戦いの火ぶたが切って落とされそうとしている。
帝国軍の準備が整ったようだった。
サウザーの部下がサウザーのもとに報告に来ていた。
「サウザー将軍、準備が整いました。」
「そうか。では、予定通り量子破壊砲で結界を破る。その後、戦車部隊で一斉に砲撃を行い、あらかた片付いてところで歩兵部隊を突入させる。」
「はっ、畏まりました。」
「では、行け。」
しばらくして、森全体が静かになったと思ったら、日中だというのに太陽の光よりも眩しい巨大な光線が、帝国軍から放たれた。その直後、大きな爆音と地響きが起こった。
「バッ—————————ゴッ——————ン。バキ、バキ、バキ」
フェアリー連邦軍はその光景を見て驚いた。
「アポロ様、結界が破壊されました。」
“我が結界を一撃で破壊するとは、あの武器は危険だな。”
アポロはすかさず指示を出す。
「サラマンダー、シルフ、ウイスプ、シェイドはあの強力な光を放つ武器と戦車を殲滅せよ。獣人族とワーフ族は後ろの軍隊に攻撃せよ。エルフ族は、魔法の遠距離攻撃で獣人族とドワーフ族を援護せよ。」
「畏まりました。」
全員が一斉に飛び出す。だが、前からは戦車が砲撃を仕掛けてくる。獣人族とドワーフ族の中には、戦闘不能の傷を負い倒れる者もいたが、後方の軍隊目指して突撃していく。
戦車にサラマンダーの攻撃が炸裂する。
「獄炎竜」
流石にサラマンダーの放つ帝級魔法の攻撃を受けた戦車は、燃え上がる。
飛んでくる砲弾をよけながら、シルフも戦車に向けて魔法を放つ。
「獄風刃」
戦車の周りに竜巻が起こったと思ったら、重い戦車が空中に舞い上がり、ばらばらになって落ちてくる。さすがに風の大精霊だ。
ウイスプもシェイドも帝級魔法で攻撃する。
だが、戦車の数が多すぎる。戦車は、1台また1台と結界の無くなった森の中に侵攻を始めた。その後方では、獣人族とドワーフ族が帝国の軍人達と戦闘しているが、次々と倒れていく。その光景を見て、精霊王アポロは全員に戻るように声をかけた。
「フェアリー連邦国の諸君は、私の後ろに下がれ。」
アポロは心の中で考えた。これ以上、犠牲者を出すわけにはいかない。自分が、最大の魔法を放つことにしようと。その魔法は、神により許された神級魔法であり、この周辺事消滅させるほどの威力がある。だが、同時にそれはアポロの命と交換だ。アポロは、覚悟を決めて皆を集めた。
「これから、私は魔法を放つ。恐らくここら一帯が敵ごと消滅するだろう。私の命もそこで尽きることになる。私がいなくなった後、光の大精霊ウイスプよ。そなたが、精霊王となってこの森を守るのだ。」
その場にいたみんなが泣いている。
「アポロ様~。」
「他に方法はないのですか?」
「もう決めたことだ。では、みんな、達者でな。」
アポロは背中に白い翼を出し、まぶしい光を放ちながら上空に行く。そして、魔法を発動しようと両手を上にあげ、魔力を溜め始めた。両手に挟まれている光球が、どんどん大きくなっていく。地表にいる者達は、敵も味方もその熱に耐えられない状態だ。そして、アポロが魔法を完成させようとした瞬間、アポロの眼前に大きく白い翼を備え、神々しい光を発する存在、自分よりもはるかに格上の存在、まさに最高神のような存在が目の前に現れた。
「アポロさん。お待たせ。後はオレに任せて。」
彼が何者で、その言葉が何を意味しているのか、瞬時にアポロには理解できたのだった。
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