第61話 世界樹の森
オレは、飛翔していこうと思い、いつものようにエリーとミクに補助魔法をかけた。
「あれ?エリーとミクの背中の翼、大きくなってない?」
「私もミクも成長したからね。」
リリーは小ぶりな自分の胸を手で触りながら羨ましがった。
「私ももっともっと成長したい。」
「オレは今のリリーも大好きだよ。」
オレ達が上空から観察すると、大きな森と平原の境界付近でドワーフ族だけでなくエルフ族、獣人族も加わって、たくさんある戦車に攻撃している。ただ、戦車は固くびくともしない。逆に、戦車から発射される砲弾で、何人もの人達が怪我をしている。オレ達は、砲弾が飛んでこないように、こちら側に結界を張って、ドワーフ族達の近くに降りた。
「お前ら何者だ。敵か?」
「いいえ、フェアリー連邦国を帝国から解放するために来ました。」
エルフ族の青年が憤慨して言ってくる。
「4人で何ができる!こっちは命張ってるんだ。遊びじゃないんだ。帰れ。」
すると、後ろから超マッチョなドワーフ族の男性が声をかけてきた。
「まあ、待て。せっかく来てくれたんだ。追い返すことはないだろう。」
オレは、自己紹介をした。
「オレはレイ、隣からエリー、ミク、リリーです。ステイル王国から来ました。」
「俺は、ダンクだ。見てのとおりドワーフ族だ。」
するとエリーが驚いて聞いた。
「私はエリーです。ダンクさんですよね?ダッカっていうお兄さんいませんか?」
「おう。よく知ってるな。」
「この剣、ダッカさんに手入れしてもらったんです。よかった~、生きてて。」
「あたりめぇだ。俺はそんなに簡単にくたばらねぇぞ。」
オレ達は、クラスメイトのカイトのこと、ダッカさんのことなどを話した。
「あいつらはここに居なくてよかったんだ。ここに居たら、死んでたかもな。」
「ダッカさん、今の状況を細かく教えて欲しいのですが。」
「わかった。こっちに来てくれ。」
オレ達が後ろをついて行くと、ドワーフ族、エルフ族、獣人族の兵士達が大勢いた。どうやらレジスタンスの本部のようだ。
今オレ達がいるこの森が、『世界樹の森』と呼ばれているらしい。この森は東大陸最大で、その中心に世界樹がある。その世界樹の幹の中には、伝説の『世界樹の宝珠』と呼ばれる玉があり、帝国はその宝珠を狙って侵攻したようだ。
だが、この世界樹は精霊王のアポロを始め、火の大精霊のサラマンダー、水の大精霊のウンディーネ、風の大精霊のシルフ、木の大精霊ドリアード、光の大精霊のウイスプ、闇の大精霊シェイドの7大精霊によって守られているため、帝国軍も近づくことさえできていない。特に世界樹を中心に半径10kmのところに強固な結界が張られている。現在、帝国軍は森の西側に集結して攻め込んできているようだった。
~ビスティア帝国ナイル城~
「皇帝陛下、お呼びでしょうか?」
「ビスマンよ、フェアリー連邦国への侵攻の状況はどうなっている?」
「はい。予想以上に苦戦しております。精霊の力が厄介ですな。」
「南方司令官のサウス将軍の力をもってしても、ダメなのか?」
「はい。向こうには精霊王を中心とした7大精霊がおりますゆえ。」
「我が帝国の技術の結晶である量子破壊砲を使え。」
「あの武器を使うのは危険です。下手をすればあの森ごと消滅します。そうなれば、『世界樹の宝珠』も手に入れることができなくなります。」
「威力を下げて使えば、結界ぐらい敗れるだろう。」
「はい。確かに。すぐに用意します。」
「北方司令官のノース将軍も参戦さえろ。1,000両の戦車部隊もすべて参加させろ。西方軍以外の帝国軍で総攻撃だ。」
「御意。すぐに手配をします。」
~世界樹の森~
現在、世界樹の広場にある宮殿の中で会議が行われていた。会議の参加者は、精霊王を含めた7大精霊とドワーフ族の長へパイ、エルフ族の長ゲイル、獣人族の長デドンだ。
へパイが残念そうに切り出す。
「アポロ様、各地の戦況はよくありません。すでにこの世界樹の森以外は占領されました。」
ゲイルも苦々しく言う。
「我が民も捕虜となり、同胞達が奴隷にされています。」
デドンは怒りが爆発している。
「アポロ様、なぜこちらから攻めないのですか?守ってばかりでは、いつか滅びます。」
「諸君の悔しさももう少しだ。我慢してくれ。もうじき、すべてが終わる。いや、終わらせてくれる方が現れる。」
「それはいつですか?我々は、もう限界です。」
そこに、エルフ族の青年が慌ててやってきた。
火の大精霊サラマンダーが怒った口調で問う。
「何事だ。会議中だぞ。」
「森の北側から、帝国軍が攻めてきます。その数、20万人。戦車も1,000台確認されています。」
代表して光の大精霊ウイスプが言う。
「ここまで来たか。我々も出撃するか。」
アポロは何かを決意したかのように告げる。
「国民達には、この広場に集まるように誘導しろ。誘導はウンディーネに任せる。世界樹の守護はドリアードに任せる。他の者達は我に続け。」
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