フェアリー連邦国
第57話 フェアリー連邦国へ出発
オレ達は、フォランを出た後、ダンジョンのバビロンのもとまで転移した。
「久しぶりです。レイさん。呼んでいただければ、私から出向きましたのに。」
「いやいや、バビロンさんに頼みごとがあったから、こちらから出向いたのさ。」
「頼み事ですか?」
ここでオレは、自分が『神の使徒』として、この世界を平和にするように最高神ソフィア様から信託を受けていること。東大陸の現状と西大陸の状況について。さらに、古代竜ギドラや竜人族が仲間になったことなどすべてを説明した。
「バビロンさんへのお願いは、帝国のことを調べてほしいんだ。どんな細かな事でもいいから。」
「わかりました。私の配下、眷属を総動員して、レイさんのお役に立ちましょう。」
「ありがとう。バビロンさんがいてくれると、心強いよ。」
オレ達は、バビロンと別れて、王都ミライアに戻った。時間も遅かったのでそのまま異空間の我が家に戻り、4人で一緒にお風呂に入って、お仕事をした後、ぐっすり寝た。
翌日、朝食をとった後、フェアリー連邦国に行くための準備を始めた。王都の市場に行って食料品を買い込み、武器屋にも足を運んだ。
「エリーの剣、出発前に研ぎに出した方がいいんじゃないかなぁ?」
「そうね。カイトのお父さんの店に行ってみようか?」
「カイトのお父さん、なんていう名前だったっけ?」
「いけないんだ~。レイ君、忘れてる~。」
「エリーだって覚えてないだろ?」
後ろからリリーが話に加わってきた。
「私、覚えてる。ダッカ。」
「そうだ。ダッカさんだ。」
4人はダッカさんの店に来た。
「お久しぶりです。ダッカさん。カイトのクラスメイトだったレイですけど覚えてますかね?」
「おめぇ、馬鹿にしてるのか?忘れるわけねぇだろう。エリーちゃん、ミクちゃん、リリーちゃんだよな?それで、何か用事かい?」
「はい。オレ達、近いうちにフェアリー連邦国に行くんですけど、その前にエリーの剣を点検してほしいんですよ。」
「フェアリー連邦国に行くのか?あそこは帝国に占領されて、悲惨らしいぞ。俺も弟がいるから心配なんだ。」
「ダッカさんは、フェアリー連邦国の出身なんですか?」
「そうさ。あの国は、ドワーフ族、獣人族、エルフ族が中心になってできた国だ。妖精も精霊もいるがな。俺は、ドワーフ族が住む地域の街ガンジス出身さ。」
「心配ですね。僕らに何かできることはありますか?」
「そうだな。あの街にいる弟のダンクが元気かどうか知りたいなぁ。」
「わかりました。もし会えたら、ダッカさんが心配していたことをお伝えしますね。」
「ああ、頼むわ。剣は今日の夕方までに仕上げとくから、また来てくれ。」
夕方まで、久しぶりに王都を散策して時間をつぶした後、エリーの剣を受け取りに行き、その日は異空間の家に帰って休んだ。
翌日、オレ達4人はフェアリー連邦国に向かって出発した。フェアリー連邦国に行くには大きく2つの行き方がある。1つは、旧ソガ侯爵の領都ラエルを経由する方法。もう1つは、元中間派閥のペイン子爵領の領都マドリを経由する方法だ。オレ達は帝国よりのラエル経由で行くことにした。
以前使用した馬車は、売却してしまったため、今回のために新たに馬車を購入した。当然、御者席にはオレが座っている。隣はいつものようにジャンケンで交代制だ。
王都を出発して4日ほどたった時に、オレの『サーチ』に異変が感じられた。複数の人に襲われている人がいるようだ。オレは、馬車を止めて、皆に伝えて現場に向かった。すると、みすぼらしい服装をした親子が、8人の男達に襲われていた。
「お前達何をしている?その人達から離れろ。」
「お前誰だ?こいつらは、犯罪者だ。だから、俺達の街から追い出すのさ。」
足蹴にされて子どもを庇うようにしている母親が、気丈に振る舞う。
「私達は、悪いことはしていません。」
「お前らの主人ソガ侯爵は、極悪人なんだよ。そんな奴の身内がいたんじゃ困るんだよ。早く出ていけ。」
オレは、だんだんと状況が分かってきた。オレは男達に言った。
「確かに、ソガ侯爵は悪いことをしでかしました。ですが、この親子にはなんの罪もないではないですか?むしろ、暴力を振るっているあなた方の方が罪が深い。そう思いませんか?」
子どもは泣いていた。子どもを庇っていた母親も目に涙を浮かべている。男達の動きが止まった。
「これ以上、この親子に暴力を振るうのであれば、オレは『神の使徒』としてあなた方を成敗します。」
男達は、オレの目を見てオレの言っていることが真実であると悟ったのか、慌てて平伏した。
「わかっていただけましたか。この親子のことはオレに任せていただけないでしょうか?彼女達にも、生きる権利はあります。幸せになる権利はあります。」
「わかりました。使徒様にお任せします。俺達はソガ侯爵に高い税金を取られ、女は性奴隷にされたり、帝国に売り飛ばされたり、ひどい目にあってきたんです。だから、悔しくて、悔しくて。」
男達は泣き始めた。恐らく身内で被害にあった人がいるのだろう。
「憎しみは、次の憎しみを生むだけです。この連鎖をいつか断ち切らないと、平和にはなりません。約束します。オレは『神の使徒』として、世の中の理不尽な苦しみを取り除いて、平和な世界を築き上げて見せます。」
オレの身体は内側から神々しい光を発していた。
「奥さん、申し訳なかった。お嬢さん、怪我はないかい。」
「大丈夫です。それよりも、知らなかったこととはいえ、主人がひどいことを。皆さんになんてお詫びを言ったらよいか。」
親子2人を連れてオレは馬車に戻った。
「レイ君、その方たちは?」とエリーが聞いてきた。
「ソガ侯爵の奥方とその娘さんだよ。」
「怪我してるよ。ちょっと待ってて。」
エリーは、『ヒール』をかけて、親子の怪我を治した。
「お姉ちゃん、ありがとう。」
「使徒様、ありがとうございました。」
「使徒様はやめましょう。オレはレイ。レイと呼んでください。隣から、エリー、ミク、リリー、3人ともオレの嫁です。」
「お兄ちゃんモテるんだね。」
「まあねぇ。」
エリーもミクもリリーもニコニコ笑っている。
「それで、この後どうするにゃ?」
「このステイル王国では暮らしづらいと思うんだ。だから、チャーチルさんに言って、リーゼット聖教国で暮らしてもらおうと思って。」
「私達親子はどこで暮らしてもよいのです。リーゼット聖教国で、私にできる仕事はあるでしょうか?」
「リーゼット聖教国は、孤児が多いんです。だから孤児院で働く人が必要なんですけど、人手が足りなくて困っているようですよ。」
「私は、子どもが好きです。この子のためにも、是非ご紹介していただけないでしょうか?」
「では、これからすぐに行きましょう。」
「ここからだと大分距離がありますよ。」
「大丈夫です。ただ、これからのことは内緒でお願いしますね。」
オレは『ワープ』を発動し、全員でリーゼット聖教国に来た。教皇チャーチルさんと聖女メテルさんに後を任せて、元の場所まで戻ってきた。もう、領都ラエルは目の前だ。
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