第55話 王都ミライアに向けて出発
オレ達は、クラーケン討伐の報告をするため長老の家に来た。
「使徒様。討伐が終わったんですか?」
「はい。恐らく、すべて討伐できたと思いますよ。」
「ありがとうございます。これで漁に出ることができます。みんなも喜ぶことでしょう。」
「オレのことはレイと呼んでください。オレ達は、長老を含めて竜人族の皆さんのことを仲間だと思っていますから。」
「さすがに呼び捨てにはできません。レイさん、エリーさん、ミクさん、リリーさんでは、いかがでしょう?」
「わかりました。それで結構です。クラーケンの残骸を持ってきているんですけど、どうすればいいですか?」
「本当ですか?クラーケンは食べてもおいしいですし、皮は、靴や衣類などに使用します。捨てるところがないほど貴重なんですよ。魔石があれば、それも是非譲ってください。」
「わかりました。量が多いのですが、どこに出しましょうか?」
「村の中心の広場に出していただけますか?村のみんなを集めておきますので。」
オレ達は、村の中を散策しながら、それぞれの家族や知人達にお土産を購入しようと、いろいろな店を見て回った。
「レイ君、やっぱり、お土産売ってるお店はないね。」
「外から他の種族が来ることがないからね。」
「レイ!あそこ、食堂じゃないかにゃ?」
「オレもお腹空いたし、みんなで中に入って、食べようか?」
「賛成!」
2時間ほどして、オレ達は村の広場に向かった。すると、そこには、すでに大勢の竜人達が斧や包丁のようなものをもって集まっていた。
「リザールさん、遅くなってすみません。」
「いいえ。大丈夫ですよ。まず、私から皆さんを紹介します。そこでお待ちください。」
リザールさんは、集まった竜人族達に話し始めた。
「諸君。良く集まってくれた。ここにいるレイさんは『神の使徒』である。レイさんは、隣にいるエリーさん、ミクさん、リリーさんとともに、西の大陸に現れた大魔王と戦うつもりだ。我々は、古に結ばれた神との契約により、古代竜ギドラ様と共にレイさんの味方をし、魔族と戦うことになるだろう。」
「長老!戦いはいつだ?」
「今すぐにではない。レイさんは『神の使徒』として、この世界の平和を目指している。レイさんの準備が整い次第、魔族との戦いに臨むことになりだろう。」
竜人族の中には、オレが『神の使徒』であることに疑いを持った者達もいた。
「長老は騙されているんじゃないのか?人族など信じられるものか!」
「俺も信じねぇぞ。」
オレは、この悪い空気を抑えるための行動に出る。長老の前に出て、能力の一部を解放した。
「神気解放」
すると、オレの身体が神々しい光に包まれ、大きな光の玉となった。オレはそのまま上空に浮き上がり、光を弱めて姿を現す。背中には、白く大きな翼が生え、それはまさに『神降臨』のようであった。1人、2人と跪き、気づくと全員が跪き平伏している。
「竜人族の皆さん。私は『神の使徒』です。最高神ソフィア様から、この世界に平和をもたらすように使命を授かっています。この世界には、種族差別、争い、犯罪があります。私は、世界の平和を乱す者達を野放しにはできません。協力してもらえませんか?」
「ソフィア様、ばんざーい。」
「使徒様、ばんざーい。」
竜人族達は、大声で全員が叫んでいる。
「ありがとうございます。これはオレ達からの友好の証です。」
オレは空間収納から大量のクラーケンの残骸を広場の中央に出した。その量はとんでもなく多い。
「おい、今の見たか?どこからクラーケンを出したんだ?」
「さすが使徒様だ!」
「使徒様、ばんざーい。」
その場は、大きな歓声に包まれた。その後、竜人族達はクラーケンの解体を始めた。オレ達は再び長老の家に行き、王都ミライアに帰ることを告げた。
大勢の人々に送り出され、村から出たところで、『ワープ』を使い、古代竜ギドラのもとに来た。
「ギドラさん。お世話になりました。長老のリザールさんをはじめ、竜人族の皆さんが仲間になってくれました。」
「レイさんのお力ですよ。私達も、レイさんの味方です。必要な時はいつでもお呼びください。」
「ありがとうございます。」
ギドラと別れ、マルメット山脈の麓の街ホクトの冒険者ギルドに寄った。受付には、メグさんがいた。
「レイ君、無事に帰ってきたのね。それでどうだったの?途中で引き返してきたの?」
「ギルマスのレオンさんいますか?ギルマスに報告しますので。」
「いるわよ。案内するね。」
オレ達4人は、ギルマスの部屋に案内された。
「レオンさん、ひさしぶりです。」
「レイ君達がここに来たということは、古代竜や竜人族は実在したということだね。」
「さすが、ギルドマスター。察しがいいですね。ただ、まだ他の人達には秘密にしてください。」
「どうしてだい?」
「オレ達は、古代竜ギドラの試練に合格して、竜人族の里に入る許可をいただきました。他の人達が古代竜にあっても、残念ながら試練には通らないでしょう。それに、竜人族の皆さんとは友好関係を築けましたが、交流するには時期尚早です。」
「わかったよ。古代竜と竜人族が実在したことが分かっただけでもありがたい。いつの日か、彼らと交流する日が来るのを楽しみにしてるよ。ご苦労だったね。」
オレ達は、冒険者ギルドへの報告も終わり、王都ミライアに向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます