第54話 竜人族の里

「レイ君は、古代竜や竜人族が実在していることを知っていたの?」


「知っていたよ。ソフィア様から聞いていたからね。」


「それで、疑いもなくマルメット山脈に向かったにゃ。」


「存在は知っていたけど、仲間になってくれるかどうかはわからなかったし。」


「ギドラさん、胸がはみ出ていた。レイ君がずっと見てた!レイ君のエッチ!」


「そんなことないから!」



 4人は竜人の里の入口に来ていた。人族の街と違い、普段見知らぬ者の出入りがないためか、門番はいない。オレ達が街の中に入ると、奥の方から2人の竜人がやってきた。



「レイ様ご一行ですね?長老の家にご案内します。」



 オレ達は、2人の竜人の後について行くことにした。すると、人族や獣人族や魔族が珍しいらしく、通りの両側に人だかりができた。何やらひそひそと話をしている。



「おい、あれ人族だろう。後ろにいるのは獣人族と魔族か?なんか、貧弱だな。」


「あの男の子、超可愛い~。」


「人族や獣人族の女は、みんなあんなに胸がでかいのか?」


「人族も獣人族も翼がないぞ。どうやってここまで来たんだ?」



 しばらく歩いていくと、他の家より一回り大きく立派な家に着いた。

 


「ここが長老の家です。しばらくお待ちください。」


「長老~。レイ様ご一行をお連れしました。」


「あいわかった。中にご案内しなさい。」


「はい。」

 


 窓が開いているため、長老とのやり取りが全部聞こえる。



「レイ様方。中にお入りください。」



 中に入ると、他の竜人たちより体の大きな竜人が待っていた。


 

“60歳ぐらいに見えるけど、この人が長老かな?”



「はじめまして。オレはレイです。こっちにいるのは、嫁のエリー、ミク、リリーです。今日はありがとうございます。」


「私は、この里の長をしているリザールです。こんな遠いところまで、『神の使徒様』においでいただいて恐縮です。ご用件は、フレイム様から伺っております。」


「そうですか。オレは『神の使徒』として、この世界を平和にしたいと思っています。それが最高神ソフィア様の願いだからです。ご協力いただけないでしょうか?」


「その前に、お聞きしてもよいですか?我々竜人族は一夫一妻が普通です。レイ様には3人の奥方がいらっしゃるようですが、それに人族、獣人族、魔族の方と種族がまちまちですね?何か理由があるのですか?」



 オレは、考えてもみなかった。3人とも愛している。ただそれだけだ。



「人族の世界では、一夫多妻は普通にあります。ん―――。正直に言います。オレは、3人を同時に好きになりました。3人を同じように愛しています。だから、3人と結婚しました。」


「レイ様は正直ですね。竜人族は長命なため、一生涯にできる子どもの数が人族よりも少ないのです。それに対して、人族は短命です。だから、より多くの子孫を残さなければならないのでしょう。」


「はぁ。考えたことがなかったです。」


「ただ、レイ様の奥方たちは種族がまちまちです。これには何か意味があると思いますが。」

 


 確かにそうだ。エリーもミクもリリーも、元々は天使で転生者だ。それに、オレと会うようにソフィア様が運命づけた。もしかしたら、『神の使徒』であるオレに種族を越えた愛を実践させ、すべての種族に差別なく平等であることを知らしめたのかもしれない。



「神の意図は私にはわかりかねます。ただ、私の愛した女性たちの種族が、違っていたというだけですから。」


「そうですね。神の愛は深く、平等ですからね。」

 


 その後、リザールさんとオレ達は、腹を割って話を詰めた。この里から出るのは、地理的に難しいが、オレの転移魔法を使えば不可能ではない。そこで、西大陸と争いになった場合、オレが転移で竜人族の戦士を連れに来ることで承知してくれた。竜人族の戦士はざっと100人だが、その一人一人がS級の冒険者よりもはるかに強い。オレ達は心強い味方を得た。そして、海へと話がかわった。



「リザールさん、ここには、湖だけでなく、南に海がありますよね?なぜ、海で漁業を行わないのですか?」


「昔は魚も取っていたんですが、ここ最近はクラーケンが住み着いて船が沈められてしまうんですよ。」


「古代竜ギドラ様の配下に、水龍がいたと思うのですが?」


「水龍様とその配下の者たちは、ギドラ様の命令で西大陸の偵察に出ていて、ここにはいません。」


「なら、オレ達が何とかしますよ。」


「本当ですか?」


「オレ達の実力も見てもらいたいし、いいですよ。」



 その後、オレ達は竜人の里の中を案内され、いろいろ見学した。見学途中にいい匂いをさせるお店があった。ミクが我慢できなかったらしく、案内役の竜人にお願いしてみんなで中に入って美味しく食べた。その日は、竜人族の接待を受けた後、異空間の家に戻った。


 さすがに、ここ最近の戦闘でみんな疲れていたらしく、それぞれの部屋でぐっすりと眠った。


 翌日、リザールさんに挨拶をした後、4人は海に向った。4人は大きめの船に乗って沖に出て、クラーケンを探した。


 オレは上空を飛び『サーチ』を発動。すると、近くに3匹の反応があった。それを、エリー達に伝え、反応のあった付近に飛んだ。リリーも飛んでやってきた。


 エリー達の船が来たので、オレは海に向って電撃を放った。すると、1匹のクラーケンが海面に出てきた。


 ミクが『アイスビーム』を放つとクラーケンは完全に凍った。そこにエリーが剣を抜き、『バキーム』でクラーケンを切り裂く。エリーの真空切りでクラーケンは砕け散った。何もしていないリリーは頬を膨らませてお怒りモードだ。



「今度は、リリーにやらせて。」


「いいよ。」



 するとリリーが魔法を放つ。



「サンダーボール」 からの 「サンダービーム」



 リリーが、サンダーボールを海に投げると、たまらずクラーケンが海面に出た。すかさず、リリーは雷の光線で切り裂く。リリー1人で、クラーケンを1体葬った。仲間をやられて怒ったクラーケンが、群れになってオレ達に襲い掛かる。


 面倒になったオレは、帝級魔法を発動する。



「フロミネンス」



 上空に真っ赤な太陽のような巨大な球が出現した。オレは、集まっているクラーケンの中心に向かってそれを放つ。すると、巨大な球は海に落ちるや否や巨大な爆発を起こし、辺りは水蒸気で何も見えない。しばらくして、水蒸気がおさまるとクラーケンの残骸だけがあった。一応『サーチ』で確認したが、辺りにクラーケンの反応はない。 



「やっぱりレイ君の魔法はすごい威力よね。」


「レイは、魔法もすごいけど夜もすごいにゃ。」


「レイ君、エッチ」



 なんか3人が別の意味で褒めている。褒められているのに赤面してしまった。


 オレ達は、クラーケンの残骸を回収して、討伐完了の報告をするために長老の家に向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る