第53話 古代竜ギドラ

 薄暗い洞窟を抜けると、太陽のきらめく外の世界だった。そして、目の前には、神界を思い出させるような花が咲き乱れる草原が広がっていた。その草原を先に進むと、真っ白で巨大な神殿のようなものが見えてきた。神殿の入り口に人の姿が見える。オレ達はゆっくりと向かう。



「よくここまで来ました。『神の使徒』よ。私は、古代竜ギドラです。」


「初めまして。ギドラさん。オレは人族のレイです。ここにいるのは、嫁のエリー、ミク、リリーです。」



 皆を紹介すると、後ろから小声で話すのが聞こえる。



「今、レイが、私達のことを『嫁』っていたよね。」


「うん。言ったにゃ。『嫁』だって。」


「私、立派な嫁。」



 ギドラがオレに聞いてきた。

 


「私は、あなたたちの戦いを見ていました。あなた方は強いです。そんなあなた方が、なぜここに来たのですか?」


「はい。西の大陸に大魔王を名乗る者が現れました。その力は強大で、西大陸の国々をすべて滅ぼし、魔族を統一したようです。彼が次に狙うのは恐らくこの東大陸でしょう。『神の使徒』として、この世界の平和を脅かす存在は排除しなければなりません。西大陸の魔族と、東大陸の人族の国が戦争になれば、たくさんの犠牲者が出ます。オレ達4人では防ぎきれません。ですから、ギドラ様や竜人族の皆さんに、協力をお願いしたくて来ました。」


「やはり『神の使徒』ですね。伝説と言われている竜人族が、存在していることを確信しているような言い方でしたね。」


「はい。は、・・・最高神ソフィア様から聞いていましたので。」



 オレはソフィア様のことを『母上』と言いそうになってしまった。誰も気づいてなさそうで、安心した。



「ソフィア様からあなたが来ることは聞いていました。ですが、協力する前に、あなたがどの程度の力を持っているのかを確認します。」



 そう言って、ギドラは、人間の姿から真っ白で巨大なドラゴンへと姿を変えた。その姿は、とても神々しく、まさしく神に近い古代竜の姿だった。



「さぁ、あなたの本気を見せてみなさい。」



 正直、オレは本気を出せない。本気を出してしまえば、この惑星ごと消滅させてしまうかもしれないからだ。だから、今まで『神力』も最大で2割程度しか発現させていない。


 だが、この古代竜は今までとはわけが違う。しばらく思案した後、オレは決めた。被害を出さないために、一瞬で片を付けようと。



「じゃぁ、オレから行くよ。死なないでね。」



 オレは、『神力』を5割程度まで開放した。すると、レイの身体が神々しい光に包まれ、光の球へと変わっていった。普通の人間では、目を開けていることすらできないほど眩しい。


 だが、ここにいるのは、天使並みの神格を持つ古代竜と、もともと天使の3人娘だけだ。



 「ゴッズライトバースト」



 オレは、光の球となってギドラに近づいた。それだけである。それだけなのに、ギドラは激しい衝撃を受けて立っていられない。我慢できずに倒れ、体中の激しい痛みに耐えきれない。



「わ、わ、私の、ま、負けです。」


 

 オレは、すべてを解除した。すると、未だにギドラが激痛に苦しんでいたので、『パーフェクトヒール』をかけた。



「『神の使徒』の力がこれほどとは、・・・・」とギドラは言いかけて、考え込んでしまった。


「ギドラさん。オレは合格ですか?」


「確かレイさんでしたね。あなたもしかして、最高神ソフィア様の・・・」



 ギドラさんが、オレの正体について言いかけたので、オレは止めた。

 


「ギドラさん。それ以上は何も言わないで。それより、オレ達に協力してくれますか?」

 

「はい。レイ様。喜んで協力させていただきます。今ここに、水龍以外の者を呼びますのでお待ちください。」


「ギドラさん。普通のレイでいいですよ。」



 オレは目で合図した。


「わかりました。レイさん。」



 しばらくすると、空から地竜アース、炎竜フレイア、雷竜ライジンが現れた。そして、それぞれ人間に姿を変えた。アースは、超マッチョの20代の男性。フレイアは髪が真っ赤な超美人の20代女性。ライジンは髪が金髪の超美人の20代女性。ところで、ギドラさんはソフィア様に負けないぐらいの美貌をした胸が豊満な女性だ。だけど年齢は見た目、10代?



「ギドラ様、お呼びでしょうか?」と代表してライジンが挨拶をする。


「我らは世界の均衡を保つため、ここにいる『神の使徒』のレイさんに従うことにする。よいな!」


「はっ。承知いたしました。」

 

「早速だが、フレイアよ。下の竜人族の長リザールに、これより『神の使徒』の一行が里に向うと、伝えて来てくれ。」


「はっ。畏まりました。」



 フレイムはドラゴンの姿になり、飛び立った。



「レイさん。竜人族の長には話を付けました。これでよろしいでしょうか。」


「ありがとう。それでなんですが、オレ達は、この東大陸の混乱を片付けてから西大陸に向かうつもりなんです。」


「レイさんたちが必要であれば、いつでも我々をお呼びください。すぐに駆け付けますで。」


「わかりました。その時はお願いします。」



 オレ達は、その日、古代竜ギドラさんと他3人のドラゴンと嫁たちで、和気あいあいと会食しながら歓談し、異空間の家に戻って寝るのであった。



 そして翌日、レイ達一行は、竜人族の里に着いた。

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