第52話 マルメット山の山頂(2)

 扉の中に入った4人の目の前には、大きなマグマだまりがある。その中央に、大きな岩山があり、そこに真っ赤な姿をしたドラゴンがいた。


 何故か赤い顔をして恥ずかしそうにミクが言った。

 


「今度は私の番にゃ。危なくなったらよろしくにゃ。旦那様。」



 すると、ドラゴンはこちらを振り返って怒鳴った。



「人間ごときがここに?地竜の奴、情けない。負けおったか?口ほどにもない奴だ。」


「私は、獣人族のミク。ここを通してもらうにゃ。」


「ふざけたことを。お前ごとき、焼き滅ぼしてくれるわ。」


「私、名前名乗ったにゃ。あんたも名乗るにゃ。」


「死んでいくお前たちに、名乗ってもしょうがないが、冥途の土産に教えてやる。私は、炎竜フレイア様だ。」



 フレイアは、ミクに炎のブレスを放ってきた。ミクは、素早く避けたが、ブレスが当たった場所は、マグマのように溶けている。



“これがあたったら即死だな。ミクも魔法の練習を頑張ったし、大丈夫だろうけど。”



 現在ミクは、5種類の魔石を埋め込んだ戦闘用のグローブを付けている。ミクは、目にも止まらぬ速さで、左右にフェイントを入れながらフレイアに近づこうとした。それでも、フレイアからは、炎のブレスが飛んできてなかなか近づけない。



“近づけないにゃ。どうにかしなきゃ。魔法でもぶっ放してやろうかにゃ。”



 そこで、ミクは遠距離魔法を放つことにした。フレイアが炎のブレスを吐くときに、一瞬口が開くのだ。



「アイスビーム」



 ミクの放った魔法は、光のビームのようだったが、フレイアの顔に直撃すると顔全体が凍った。その隙に、ミクはフレイアの顔めがけてジャンプし、両手に雷を纏い、何十回もパンチを繰り出す。フレイアは、耐えられずに、横倒れになる。



「油断したわぁ。小娘の力がこれほどとは。だが、許さぬ。」



 フレイアが翼を広げると、翼の内側に炎が現れた。そして、『ファイアーウイング』と言いながら翼をはためかせると、無数の火の粉がミクを襲う。ミクの服は、ところどころが焼け焦げ、きわどい状態に肌が露出していた。



「乙女の肌を汚すとは、お前は許さないにゃ。」


「アイスワールド」

 


 ミクは、帝級魔法を放った。



 オレは、すかさずエリーとリリーに結界を張った。すると、空間全体が音を立て凍っていく。マグマさえも凍る。そしてすべてが、凍ると思われた時、フレイアが言った。


 「待て。待ってくれ。私の負けだ。」



 フレイアが、降参した。すると、ミクは魔法を途中で解除し、『ワールドウォーム』を発動。その空間が、見る見るうちに元に戻っていく。



「まさか、私が獣人族に負けるとは。お前は強い。先に進むがよい。」



 4人はマグマ地獄を後にして先に進むのであった。途中、ミクとエリーがあまりに辛そうだったので、異空間の家に戻り、その日はゆっくりと寝るのであった。



“まだ体力のあるリリーとは、夜のお仕事したよ。尻尾の付け根も確認したもんね。”


“レイ君のエッチ!!”



 翌日、オレ達はさらに奥へと進んだ。すると、黒色をした大きな扉があった。その扉を開けると、真っ暗な空に黒雲が立ち込めていた。空からは、稲光が降り注いでいる。空から、真っ黒の大きなドラゴンが降り立った。



「この俺こそが、古代竜ギドラ様の一番の僕だ。名をライジンと言う。」



 リリーが、前に出て言った。



「私は魔族のリリー。ここを通してもらう。」


「魔族とな。魔族風情がいい気になるな。」



 ライジンはいきなり翼を広げて、頭の上にある角から雷撃を放つ。リリーは、結界でそれを防いだ。 



「小癪な小娘め。これでも防ぎきれるか?」 



 ライジンが翼をはためかせると、リリーの頭上の一点に雷が集まり、大きな電撃となってリリーに襲い掛かる。リリーは結界を張って防ごうとするが、防ぎきれないで直撃した。


 リリーは、ふらふら状態だ。

 


「俺の電撃を受けて立っていられるとは、お主もなかなかだが限界であろう。そろそろ楽にしてやろう。」



 ライジンの角が光ったと思うと、リリーの頭上に雷の矢がたくさん現れた。オレは、さすがにこれが直撃したら、リリーが危ないと思い、助けに入ろうと思ったその瞬間、リリーが両手を上に掲げて、魔法を発動した。



「シャドウホール」



 すると、リリーの頭上に黒く大きな穴が現れ、頭上の雷の矢は全て穴に吸い込まれた。さらにリリーは、帝級の魔法を発動する。



「スチームバンブ」



 リリーの周りから現れた黒い霧が、ライジンを球状に覆うように展開され、同時にいくつも現れた炎に熱せられていく。ライジンが、その球状の霧を取り払おうとしているが、球状の霧は形が崩れない。次の瞬間、その霧が、強大な爆発を起こした。水蒸気爆発だ。一瞬真っ暗になった霧が晴れ渡っていくと、そこには横たわるライジンの姿があった。



「あなたの負けよ。」


「どうやらそのようだな。お前は強い。俺も男だ。潔く負けを認めよう。さあ、先に進むがよい。」



 エリーが火傷を負ったリリーと、全身傷だらけのライジンに『パーフェクトヒール』をかけ、その場を後にした。



「さぁ、いよいよ古代竜ギドラに会うぞ。皆、気を引き締めていこう。」


「はい。」


「了解にゃ。」


「うん。」


 肉食系女子に変わったエリーが話しかけてきた。



「レイ君、昨日リリーとお仕事したでしょ?ずるーい。今日は私ね。」


「レイ。当然、わ・た・し・もにゃ。」

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