第47話 王都ミライアへの帰還

 王都に帰ったオレ達一行は、お土産をもって、一旦それぞれの自宅に帰った。自宅に戻ったオレは、ローザお姉様の変貌ぶりに驚いた。いつもなら、ブラコンのローザお姉様が走ってやって来て、抱き着いてくるのにそれがない。恐る恐る、家の中に入ると、ローザお姉様とリディアお母様がお茶を飲みながら、話をしている。ローザお姉様が、淑女になっていた。



「お母様。お姉様。ただ今戻りました。」


「あら、早かったのね。1年ぐらいかかると思っていたのに、まだ半年もたっていないわよ。」


「ええ、特に大変なこともなかったので、これはお土産です。」



 お母様とお姉様に渡した。



「レイからのお土産。なんだろう。開けてみていい?」


「ええ、どうぞ。」


「ネックレスとおまんじゅうだ~。」


「リーゼット聖教国は、ステイル王国よりも技術が進んでいたよ。だから、あちらの最新技術で作られたネックレスにしたんだ。」


「どんな風に最新なの?」


「うん。まず、その素材だけど、貴重なミスリルだよ。すごく硬いから、そんな鎖に加工することは、ステイン王国ではできないよ。それに、輝いている石がいくつもついているでしょ。すべてダイヤだから。」


「ありがとう。このネックレスは、結婚式で付けるわ。」


「えっ、結婚するの?」


「そうよ。いつまでもブラコンじゃないのよ。3か月後、第1王子のロバート殿下と式を挙げるわよ。当然、レイも参加ね。」


「おめでとう。お姉様。喜んで参加します。」



 オレは、紳士な態度で挨拶した。


 翌日、王城正門の前でミクとリリーと待ち合わせをしていた。オレが到着するとすでに2人は着いていて、エリーと3人で談笑していた。4人揃ったところでオレ達は王城に入り、応接室に行った。するとそこには、ライル国王とセリーヌ王妃がいた。

 


「久しぶりだな。レイチェル。」


「お久しぶりです。お義父様、お義母様。」


「無事に帰ってきて何よりだ。リーゼット聖教国の件は、暗部からの報告とチャーチル新教皇からの親書で、大体のことは聞いていた。昨夜、エリーからもじっくり聞いたぞ。」


「それで、これからどうするつもりだ。」


「はい。今悩んでいます。ビクティア帝国に占領されたフェアリー連邦国に行こうか、ステイル王国の南西に位置し、マルメット山脈の向こう側にある、と言われている竜人の里にいこうかと考えています。」


「恐らく、フェアリー連邦国に行けば、帝国と争いになるだろう。下手したら、戦争になりかねない。かといって、マルメット山脈の向こうは伝説の地で、誰も行ったことがない。」


「戦争になった場合、面積が広すぎて、オレ達4人だけでは防衛しきれません。国の防衛体制は、大丈夫ですか?」


「正直に言おう。反乱軍を鎮圧してまだ日が浅い。現在、国内の騎士をこの王都に集めて訓練させているが、使えるようになるには、もうしばらくかかるだろう。」


「そうですか。」



 すると、ミクが突然言ってきた。



「レイ、私のことやお父さん、お母さんのことなら気にしなくていいにゃ。」


「でも、ミクのお父さんもお母さんも、自分の故郷がどうなっているか心配だろ?」


「レイは、優しすぎだにゃ。近いうちに行くんだから、後でもいいにゃ。」



 すると、珍しくリリーが自分の気持ちを伝えて来た。



「竜人族は、魔族の親戚。私、行きたい。」



 どうやらエリーも賛成のようだ。



「そうね。もし本当にいるなら、あってみたいわね。仲良くなれるかもしれないし。」


「わかったよ。じゃぁ、マルメット山脈の向こうに行ってみよう。」



 オレ達4人で盛り上がっていると国王陛下と王妃が言ってきた。



「仲がいいのはわかったわ。でも、大切なことを忘れてないかしら?」


「そうだぞ。お前たちの結婚式だ。約束しただろう。」


「あっ、忘れてた。」



 女子3人組が大層お怒りモードだ。



「え~、ありえない。ふつう忘れないでしょ。」


「ごめん。いつも一緒にいたから、もう夫婦のつもりでいたよ。」


「何もしないくせに、ウソばっかり。」と小さな声でリリー。



 それが聞こえていたのか、王妃がニコニコしながら、爆弾発言をする。



「1日も早い方がいいわね。このままじゃ、いつまで待っても孫を抱けそうもないからね。」


「お母様!」と真っ赤なエリー。



“超可愛い!”



 その後話を詰めて、1週間後に結婚式を王城で行うことになった。準備が間に合うかどうか心配だったが、事前に王妃が準備を進めていてくれた。それに、エリーが第3王女で、オレが公爵家次男であることから、それほど大規模にしないことで話はまとまった。エリーとミクとリリーは、花嫁衣裳の打合せで王妃と一緒に別室に向かった。

 

 オレは、王城から外に出て、久しぶりの神界に向かった。



「お久しぶりです。母上。」


「ほんとに久しぶりね。レイ。」



 ソフィア母上に、リーゼット聖教国の件についてすべて報告した。



「レイ。ありがとう。あの国も、建国当初は、私たち神々を強く信仰し、健全な国だったのよ。差別もなく、奴隷制度もない、強者が弱者をいじめることもない国だったの。でも、人の業よね。貧富の差が出始めると、傲慢な者が現れ、地位や権力に溺れ、本来の生き方を見失ってしまうのよね。」


「魂が未熟なんだと思います。ですが、未熟だからこそ成長できるのだとも思います。」


「魂の成長には時間がかかるわよ。」


「はい。承知しています。今のところ大丈夫ですが、あまりに魂が未熟で、他者に対しての影響が大きすぎる時は、自分の判断で行動しますが、よろしいですね?」


「あなたは、自由に生きていいのよ。思った通り生きなさい。」


「ありがとうございます。もう一つお話があります。」


「何かしら?あの3人と結婚すること?」


「知っていらっしゃったのですね。」


「当たり前ですよ。自分の子のことを心配しない親はいないでしょ?」


「ありがとうございます。3人を幸せにできるように頑張ります。」


「3人は、あなたといることが幸せなんですよ。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る