第41話 旅の再開

 保護した人達を連れて、全員で冒険者ギルドに入った。冒険者ギルド内では、見知った人達もいたようで、ギルド内が騒然となった。中には、感激のあまり泣いている人達もいた。



「お前生きていたのか?よかったな。」

 

「お~。」


「なんか、レッドオーガに捕まりそうになったところを、彼らに助けられたらしいんだ。」

 

「らしい、ってどういうことだ。」

 

「いや、気づいたら、レッドオーガの死体があって、それまでの記憶がないんだ。」

 

「そうか。でも無事で何よりだ。」

 

「ああ、ありがとうな。」

 

「今日は皆で、祝杯だ。」



 そんな話をしていると、受付のキャサリーさんが、ギルマスのギムリさんを呼びに行ったらしく、前回同様にドタバタと大きな足音を立てて、降りてきた。



「レイ、戻ったか。『ワールドピース』の諸君は上に来てれ。キャサリー!他の連中の面倒を、見てやってくれ。」



 オレ達は、ギムリさんと一緒に部屋に行き、すべてを説明した。



「ということは、彼らは捕まっている間の記憶がないのか?」


「はい。残酷な状況でしたので。」


「ありがとうな。そこまでしてくれて。」


「ただ、このことは、オレ達とギムリさんだけの秘密でお願いします。」


「わかっているよ。それにしても、お前たちは噂どおりの規格外だな。」



 そう言われて、ミクたちが反応した。



「ねぇ、ねぇ、聞いた。ミク、リリー。私達も規格外だってさ。なんか英雄になった気分だね。」


「そうにゃ。規格外は、レイだけだと思っていたにゃ。」


「英雄、英雄」



 嬉しそうに、いつも通りの小声でつぶやくリリー。


 ギムリさんから、感謝の言葉と、金貨300枚という多大な報酬をいただいたオレ達は、レッドオーガの死体と遺品を、ギムリさんに渡してギルドを出た。その後、オルトの街並みを散策するのであった。



「王都ミライアもこのオルトもほとんど同じね。」


「エルフ族も、ドワーフ族も、獣人族もいるのに、やっぱり魔族がいない。」


「お腹すいちゃったにゃ。皆で、この町の名物食べるにゃ。お腹いっぱい・た・べ・た・いにゃ!!!」



 ミクは、寂しそうにしているリリーを励ましているのだろう。気遣いのできる優しいやつだと、あらためて感心した。



「ギルドで、名物が何か聞いてくればよかったね。」



 街をきょろきょろ見ながら歩いていると、懐かしい匂いが漂ってきた。カレーの匂いだ。



「あの店に入ろう。」


「そうするにゃ。あの店からいい匂いがするにゃ。」



 皆で、店に入り、カツカレーもどきを頼んだ。ミクは、特盛だ。



「オレの記憶によると、これすごく辛いから少しずつ食べたほうがいいよ。」



 最初に、リリーが食べる。



「うん。美味しい。辛くないよ。」



 次にエリーが食べる。

 


「ピリッ、とするけど、美味しい。私好きだよ。」



 最後に、ミクが食べる。皆の意見を聞いて安心したのか、スポーンに大盛だ。



「辛いにゃ。口から火が出るにゃ。」と涙目だ。



 猫獣人のミクには、辛かったかもしれない。でも、水を飲みながら、完食していた。


 さあ、お腹もいっぱいになったし、新たな旅に出発だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る