第40話 東の都オルトで鬼退治(3)

 エリーとミクは、戦闘が落ち着いたのを確認して、捕まっていた男達を集落の中央に集めた。中にはひどい怪我をしている人もいたが、エリーが魔法で治療する。



「パーフェクトヒール」



 男達の傷がみるみるうちに消え去った。


 エリーとミクは、後をオレに任せ、再び捜索に向かった。オレは、男達に状況を確認した。



「オレの仲間が捕まっている女性を探しています。女性達は何人いますか?」


「男は12人いたが、7人は連れていかれたんだ。女は、確か・・・7人だ。」


「ミク。聞こえるか?」


「聞こえるにゃ。」


「どうやら、女性は7人のようだ。見つけ次第救出して、ここに連れてきてくれ。」


「了解にゃ。」



 連絡を受けたミクはエリーと一緒に捜索を続け、とうとう女性達を見つけた。だが、2人は犠牲になってしまったらしく、5人の女性を発見した。目がうつろで、全裸の状態だ。着せるものがないため、そのままレイ達のもとに連れて行った。


 オレとリリーが男たちに状況を聞いていると、集落の一番奥の大きな洞穴から一回り大きいレッドオーガが2匹と、さらに3m近いレッドオーガが1匹現れた。恐らく、1番大きい個体がレッドオーガキングで、他の2匹はレッドオーガジェネラルであろう。



「ウガッ、ウガッ」



 2匹のレッドオーガが、周辺を見渡して何か言っている。恐らく、自分達以外がすべて殺されたことを怒っているのだろう。オレは、ミク達が連れてきた女性達の姿を見て、女性達に何が起こったのかを瞬時に理解すると、心の底から怒りが込み上げてきた。


 オレは怒りのあまり、力を抑えられなくなり、体中から光が発せられ、闘気が身を包んだ。オレから湧き出る激しい威圧感に耐えながら、リリーが大声で叫んだ。



「レイ君、抑えて!」



 オレは、リリーの言葉で冷静さを取り戻したが、こいつらは絶対に許さない。



「お前達は、チリ一つ残さない。」


「ファイアーロスト」



 すると、巨大な炎が現れ、ドラゴンの形となり、左右2匹を大きな口を開けて飲み込んだ。オレが言った通り、チリ一つ残さず焼けてしまった。


 その様子を見ていた、レッドオーガキングは後ずさりし、隙あらば逃げようという状態だ。



「逃がすわけがないだろう。」


「シャイニングクロス」



 レイが魔法を唱えると、巨大な光の十字架が現れる。レッドオーガキングはその十字架に貼り付けの状態だ。顔を見ると、恐れおののいている。



「最後だ。」


「サンダー」



 上級魔法でなく、神級魔法と思えるほど巨大な雷が、十字架に貼り付けになっているレッドオーガキングの頭上に落ちる。



「バギッ、バギッ、バギッ、ドドド―――――ン。」



 雷が消えると、跡形もなかった。


 すべての戦闘が終わった後、オレは空間収納から簡単な衣類を出し、女性達に渡した。そして、男性と女性全員に状況の確認を行った。捕えられた男性は12人いたが、現在5人しか残っていない。女性も7人いたらしいが、5人しか残っていない。残念ながら、他の人たちは、食料にされてしまったらしい。男性も女性も人族だけが残っている。表面上の怪我は、エリーが全員治療して、怪我人はいない。だが、心の傷は深いようだ。そこでオレは10人に聞いた。



「あなた方のここでの出来事は、非常に辛いことだったと思います。もし、その辛さを取る方法があるとしたら、どうしますか?」



 男性の一人が聞いてくる。



「あなた方は命の大恩人です。ですが、そんなことが本当にできるのですか?」



 オレは厳しい顔で答える。



「あなた方の記憶を一部消し去ります。時間を遡って、捕まる前の記憶に戻します。だから、つらい記憶だけでなく、お互いに励ましあったりしたことも、すべて忘れます。それでよければ、できますよ。」



 1人の女性が泣きながらお願いしてくる。



「お願いします。お願いします。このままじゃ、私生きていけない。」


「皆さんはどうしますか?」


「俺もお願いします。」


「私も・・・」


「では全員ということでいいですね。一度消した記憶は戻りません。いいですね。」


「はい。」



 オレは、男性を一人ずつ呼んで魔法をかける



「ロストメモリー」



 男達は、眩しい光に包まれて、意識を失った。


 今度は女性達だ。最初に、女性達には再生の魔法をかける。



「リカバリー」



 女性達には純潔に戻ったことを説明してから、『ロストメモリー』をかけた。


 女性達も、光に包まれ意識を失った。


 しばらく時間が経過した後、全員の意識が戻った。彼らがレッドオーガに襲われていたところを、オレ達4人で救助したと説明した。ここにいない人達は、残念ながら犠牲になったと伝えた。


 そして、すべてが終わった後、レッドオーガの死体と遺品を回収した。全員に秘密厳守の契約魔法をかけ、オレの異空間に招き入れ、『ワープ』を発動し、一気に冒険者ギルドの裏に帰ってきた。そこで、皆に異空間から外に出てもらった。



“ギルドに行って説明するのか~。面倒だな~。”

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