第38話 東の都オルトで鬼退治(1)
王都ミライアを出発して1週間後、レイたち一行は東の都オルトに到着した。到着してすぐに、オルトの冒険者ギルドに向った。冒険者ギルドで、旅の途中で退治したオークの素材と魔石を引渡し、金貨15枚をもらった。
「お小遣いをもらったから、皆で美味しいものでも食べに行くか?」
「賛成!!!」と食いしん坊のミクが喜んでいる。
4人で、何を食べようか相談していると、冒険者たちの会話が聞こえてきた。
「おい、聞いたか?深淵の森に行ったB級パーティーが帰ってこないらしいぜ。」
「ここ最近、ソロの冒険者も何人か行方不明になっているんだろ?」
「こりゃ、大事になりそうだな。」
2人の会話を聞いていたミクが、珍しく何か考えているようだ。
「どうした?ミク」
「うん。ここってクイラ辺境伯の領都にゃ。だったら、辺境伯もこの話を知っていると思うにゃ。どうして騎士団が動かないのかにゃ?って不思議に思ったにゃ。」
それを聞いたエリーが答える。
「この前、貴族派の貴族たちの反乱があったわよね?あの時、帝国が関わっていることがわかったでしょ。だから、帝国に対抗するために、この国の騎士たちは全員が王国騎士団に組み込まれたのよ。今、ほとんどの騎士たちは王都で訓練していると思うわ。」
「じゃぁ、今このオルトには騎士がいないの?」
「ほとんど騎士はいないと思う。でも、警備のための領兵はいると思うわよ。」
そんな話をしていると、「ドン、ドン、ドン、」と階段を慌てて下りてくる人物がいた。その人物は、小柄で、超マッチョのドワーフ族の男性だった。階段を降りると、受付の女性に何か言っている。
「キャサリー。ここに誰か強そうな奴が来なかったか?」
「どうしたんですか?マスター」
「部屋にいる俺のところまで、魔力がとどいてきたんだ。」
「えっ、私は感じませんでしたけど。」
「当たり前だ。俺は、もともとS級冒険者だぞ。お前と一緒にするな。」
すると、オレと目があった。オレは、2人の冒険者たちの話を聞いているうちに、無意識で魔力を放出させてしまったらしい。でも、それを2階で感じ取るとは、この人はただものじゃないな、と正直焦った。
「俺は、ここのギルドマスターをしているギムリだ。君の名前は?」
「オレは、レイチェルです。」
「レイチェル?」
「はい。レイチェルですが、なにか?」
「もしかして、君達は『ワールドピース』かい?」
「はい。そうですが。」
オレとギムリさんの会話を聞いていたキャサリーさんが、突然大声をあげて驚いた。
「エ――――――――――!」
まわりからも、ざわざわといろんな声が聞こえる。
「あいつら『ワールドピース』だってよぉ。S級パーティーだろう?」
「この前の戦争を、あっという間に終わらせちまったっていう英雄だろう?」
「あの子、超イケメン!サインもらおうかな。」
「あいつ、美女3人も連れやがって許せねぇな。」
その後、オレたち4人はギルマスの部屋に案内された。今、ギルマスがオレの左隣に座り、ギルマスの正面に、エリー、ミク、リリーが座っている。
「S級パーティーの君たちにお願いがあるんだが、話を聞いてもらえるか?」
「いいですよ。どんなことでしょうか?」
「ここオルトの南に『深淵の森』と呼ばれる場所がある。そこには、様々な魔物が住んでいるんだ。だから、冒険者たちは、スタンピード対策、素材・魔石の回収、薬草採取などの目的で、その森に行くんだ。ところが、最近森の様子がおかしくてな。」
「どんな風におかしいんですか?」
「ゴブリンのような低級な魔物が減っているんだよ。もしかしたら、低級な魔物が餌になっているか、逃げだしてしまったのかもしれないな。」
「ってことは、森にゴブリンを餌にするような強力な魔物が住み着いている可能性があるということですね?」
「その通りだ。だから、何人もの冒険者が調査に出向いたんだが、行方不明になっているんだよ。そこで、君達に調査して欲しいんだが。報酬は弾むよ。」
「レイ君、受けましょうよ。」
「レイ、私も何があるのか知りたいにゃ。」
「困っている人、助けたい。」
そこで、オレはギムリさんに聞いた。
「引き受けます。もし、原因がわかって、オレ達に対応が可能な場合、勝手に動きますがいいですか?」
「そりゃ、俺としても大歓迎だ。ただ、過信して、無理はしないようにな。」
「はい。では、これから準備して、明日出発します。」
オレ達は、ギルドを出て、食事に向った。
“ミクのお腹が我慢の限界だ!”
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