第37話 東の都オルトへ向けて
オレ達は今、リーゼット聖教国に向っている。リーゼット聖教国は、ステイル王国の南東に位置している。そのため、東の森に沿って進み、元中間派閥の中心人物であるクイラ辺境伯の領都である東の都オルトまで行く。そこからさらに南東に進んで、クチマ川を越えればリーゼット聖教国だ。東の都オルトまでは、馬車で1週間、そこからリーゼット聖教国の聖都ブールまでは、さらに2週間かかる。
俺たち3人は、リーゼット聖教国についていろいろ調べた。まず、宗教国家であり、リーゼット教が国教となっている。主神はこの世界の最高神ソフィア様だ。リーゼット教では、現在、バチーロ教皇がトップであり、その下に司教が10人いる。教皇は、選挙によって司教の中から選ばれる。その司教もまた、信者の選挙によって、多数いる司祭の中から選ばれる。この国の政治は、教皇を中心に、司教を含めた11人の合議制で行われている。そのため、教皇や司教の権力は絶大であり、選挙では死者が出ることもある。
また、世界が混乱する時には、聖女が現れ、『神の声』を聞き、教皇に伝達している。聖女は、平和な時代には出現しないため、常にいるとは限らない。現在は、動乱の時代を象徴するかのように、聖女メテルがいる。まだ、12歳の少女だ。
リーゼット聖教国では、種族による差別は禁止されている。しかし、エルフ族や獣人族や魔族に対しては、偏見がある人達がいる。また、罪を犯した人達は犯罪奴隷となり、借金を返せない人達も借金奴隷とされる。表向き、奴隷にも人権は認められている。貧富の差が激しく、一部の富裕層が、誘拐された人々を、闇市で購入するなどの人身売買があるらしい。特に、エルフ族と獣人族の女性が、ターゲットになりやすいようだ。
現在、4人は馬車に乗って、東の森に沿って南東に進んでいる。馬車は、『シルバーキング』で儲けたお金で購入した。当然、御者席にはオレとエリーがいる。オレの隣の席は3人で交代制にしたようだ。
「ねぇ、レイ君。レイ君は、空を飛んだり、魔法で移動したりできるんでしょ?」
「うん。できるよ。」
「なら、馬車で行く必要ないんじゃない?」
「せっかく旅をするんだから、いろんな景色を見たいし、いろんな町によりたいじゃん。」
「でも、退屈だよ。」
「オレ、エリー達と婚約したし、今回は新婚旅行のような気分なんだよ。エリーのことをもっと知りたいし、いい機会なんじゃないかな。」
オレの言葉を聞いて、エリーは真っ赤な顔をしながら、オレに肩を寄せて、腕を組んできた。オレは、エリーの肩に手をまわして、こちらに抱き寄せキスをした。
「レオ君。私、幸せだよ。」
エリーはニコニコ笑っている。
しばらくして、オレの気配探知に魔物の反応があった。オレは、馬車を止め、後ろの2人にも声をかけ、エリーと馬車を降りた。
「どうやらオークがいるようだよ。みんな気を付けてね。」
「うん。」
「レイ君、何匹いるかわかる?」
「前に5匹。その後ろに7匹いるよ。前の5匹は、ミクとリリーで何とかしてね。後ろの7匹はオレとエリーで倒すから。」
「ずるいにゃ。私もレイと一緒が良かったにゃ。」
「次は、レイ君と私。」
最初に、ミクが飛び出して、先頭のオークに鉄拳を叩き込む。その横にいたオークがミクに向って剣を振り下ろそうとしている。すぐさま、ミクは廻し蹴りで対応する。リリーは、雷魔法『ライジングカッター』で一気に3匹を倒した。
オレとエリーは、『気配遮断』の魔法をかけ、後方のオークに近づいていく。匂いで気が付いたのか、一斉にオークがこちらに向かってきた。
するとエリーが剣を横に振る。
「バキーム」
前を走っていたオークの胸元に赤い線が浮かび上がり、オークの身体は上下に分かれた。
さらに、持っている剣に魔法を付与する。
「シャイニングソード」
剣が光の粒子で包みこまれ、切れ味がよくなった。オークを上段から切りつけた。オークは光のまぶしさに見えていなかったのか、避けることもできずに左右2つに分かれた。
オレは、右手を前に出し人差し指を残り5匹のオークに向けた。
「シャイニングビーム」
右手の指から、青白い光線が発射され、残りのオークを次々と切り裂いていく。
「終わったね。ところで、エリー、『バキーム』ってシリウス先生の技じゃないの?」
「そうよ。時間のある時に、稽古をつけてもらっていたの。」
「エリーってどんどん強くなるね。」
「規格外のレイ君に言われたくないわ。」
エリーは、ベロを出しておどけて見せた。
“可愛い、可愛すぎる!”
そう思った瞬間、エリーを抱きしめていた。すると、前の方からミクがやってきて、頬を膨らませて怒ってる。
「あ~!ずるいにゃ!」
オレは、慌てて、エリーから身体を離すと、すぐにミクとリリーに近づき、2人をそれぞれ強く抱きしめた。
オレがリリーを抱きしめたとき、リリーが小さな声で呟いた。
「レイ君のエッチ。」
オークの死体をオレの空間収納に入れ、皆で馬車に戻り、旅が再開された。その後、何もなく東の都オルトに着いた。
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