第36話 リーゼット聖教国に出発

 挨拶回りも終えて、いよいよリーゼット聖教国に向けて出発できる状態となった。あれから、オレたち4人の関係はより親密になり、3人が交代でオレと手をつないでいる。


 今日は出発に向けて買い物をする日だ。だが、その前に大事なことがある。それは、家だ。


 旅の途中、毎回宿屋に泊まるのが苦痛だ。ベッドは固いし、壁が薄い。何より宿屋には風呂がない。そこで、3人に言って自分たちの家を作ることにした。



「エリー、ミク、リリーちょっといいかな?」


「どうしたの?レイ君。」

 

「いやね。家を作ろうかなって思うんだ。」

 

「え~!どこに建てる?旅に出るんでしょ?」

 

「オレ、異空間作れるから、その中に作ればいつでも休めるよ。」

 

「レイ君、やっぱり規格外。」



 普通は家なんか作ったら、旅に出られないだろう、と思うかもしれないが、オレが異空間に家を作ればいい。そうすれば、いつも持ち歩いているのと同じだから、休みたいときに休めるし、何より外敵に襲われることがなく、安心して休める。


 オレは、異空間を作り出して、皆に中に入るように言った。異空間は、オレが創造した世界だ。いろいろな花に囲まれていて、まるで神界だ。近くに小川も流れている。


 3人は、オレの作った異空間が気に入ったようで、はしゃぎまわっている。



「ねぇ。ミク、リリー。この花とってもいい匂いするよ。」

 

「ほんとにゃ。川の方に行ってみるにゃ!魚が気になるにゃ!」

 

「ミクは、食いしん坊。」

 

「でも、不思議にゃ。なんか懐かしいにゃ。」


「私も。」


「えっ、ミクもりリリーもなの?」



 それはそうだと、オレは内心でそう思っている。彼女たちは、記憶はないが、もともとは天使だ。ここに似た神界にいたのだから、懐かしく感じても不思議ではない。



「あれ~。レイ、もう家あるにゃ。」

 


「おしゃれねぇ。」

 

「家はあるけど、部屋とかお風呂とか、中はまだ作っていないよ。」

 

「お風呂欲しい。絶対!」



 そこで、4人で間取りを相談して、家の中を作っていく。


 まず、お風呂は、ジェットバスにした。1度に10人が入れる大浴場だ。次に、トイレは温水洗浄便座にした。これにはみんな驚いている。そして、居間はキッチンと一緒のダイニングキッチンにした。


 最後に部屋割りだ。オレの隣の部屋を誰にするかでもめた。3人にはそれぞれ各自の部屋を用意し、何故かオレの部屋だけかなり大きくなっている。すべてが決まった。後は、寝具や家具を作る。3人の部屋には、ダブルベッドを用意したが、みんなの意見に従っていたら、オレの部屋だけは、4人が寝ても大丈夫なほど大きなベッドになった。


 その後、4人は王都の市場に食材を買いに行き、大量に買い込んだ食材をすべてオレの空間収納に入れて、異空間の家に戻った。



「いよいよ出発ね。」

 

「なんか、わくわくするにゃ。」

 

「魔族の私が聖教国に行っても大丈夫なのかな?」

 

「大丈夫さ。リリーに何かあったら、オレが守るから安心していいよ。」

 


 すると、リリーはもじもじして、みんなの前で爆弾を投下した。



「また抱きしめて守ってくれる?」



 すぐさまそれにミクが反応した。



「『また抱きしめて』ってどういうことにゃ?」


「レイ君が家に来たときね、突然私を抱きしめて励ましてくれたの。」



 すると、エリーがほほを膨らませて抗議してきた。



「レイ君、贔屓はダメよ。リリーを抱きしめたなら、私たち2人も同じようにしてくれなくっちゃ。そうよね?ミク。」


「そうにゃ。そうにゃ。」


「わかったよ。」


 オレは、エリー、ミク、リリーの順にそれぞれを抱きしめて



「愛しているよ。」と一人一人に言った。



 自分でやっていて、何故か恥ずかしい。



「許してあげる。レイ君。」

 


 エリーはもちろん、ミクもリリーも顔を真っ赤にして喜んでくれた。 

 

 そして、それぞれの部屋に戻って寝た。

 

 翌日、朝起きると、3人がキッチンで朝食の用意をしていた。学園時代から知っていたが、意外にも3人とも料理が得意だ。食卓には、パン・コーンスープ・野菜サラダ・目玉焼きが用意されていた。皆でおいしく朝食をいただいた後、異空間から外に出た。


 さあ、準備は整った。いざ出発だ。

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