第33話 表彰と報酬

 オレ達は、現在、王城の謁見の間にいる。オレとミクとリリーは、ライル国王の前で片膝をついた状態だ。エリーは、なぜかライル国王の隣で立っている。部屋の右側には、司会者である宰相のバロンお父様がいて、その隣に近衛騎士団長のアルトお兄様、さらに騎士団の方々が並んでいる。左側には、この国の貴族の方々が、地位の高い順に並んでいる。ギルマスのアルタさんは、オレ達より先に報酬を受け取り、すでに退室している。



「レイチェル=リストン、ミク、リリー=マジョリーヌ、この度の働き大儀であった。よって、それぞれに褒美を取らせる。」

 

「はい。ありがたき幸せにございます。」とオレが代表して挨拶をする。

 

「まず、レイチェルよ。『神の使徒』であるそなたには、エリーヌとの婚約と公爵の地位を授ける。所領は、ソガ侯爵の領地とする。」

 

「恐れながら、国王陛下にお願い申し上げます。」

 

「よい。発言を許可する。申してみよ。」

 

「はい。私は爵位と領地をいただくことはできません。」



 その発言に、左側にいた貴族たちがざわついた。



「無礼であるぞ。国王陛下からの報酬に不服を申すとは、不敬罪だ。」



 レイのことを無礼呼ばわりする声が聞こえるが、国王陛下がそれをいさめ、オレに発言を促す。



「よいよい。レイチェルよ。理由を答えよ。」


「はい。私は、最高神ソフィア様から、直接、使徒になるように仰せつかりました。それは、この世界を、神々の住まわれる世界と同じように、平和な世界にするためです。そのための力も授かりました。神々はこの国だけでなく、世界の平和をお望みです。私は、学園を卒業した後、世界中を回る旅に出ます。ですから、爵位も領地もいただくわけにはいかないのです。」


「なるほど、レイチェルの申すことは分かった。ソフィア様の名前を出されては、無理強いもできまい。だが、レイチェルよ。エリーヌとの婚約は、拒絶しなかったがなぜじゃ。」


「はい。私がエリーとの婚約を望んでいるからです。エリーだけではありません。隣にいるミクともリリーとも婚約したいと考えています。」

 


 エリーは、国王の隣で顔を真っ赤にしている。ミクは、小さくガッツポーズをしている。リリーは、顔を赤らめてもじもじしている。 



「レイチェルよ。そなたは、贅沢じゃな。エリーだけでなく、そこにいる美女2人とも婚約したいとは。ハッハッハッ。」と国王は笑い始めた。


「彼女たち3人は、私にとって家族同様に、最も大切な存在です。何があっても幸せにします。どうか、お許しください。」


「あいわかった。では、4人にまとめて報酬を授ける。報酬は、この国で自由に生活できる自由権と白金貨100枚とする。これでどうじゃ。」


「ありがとうございます。」



 一波乱あったが、表彰が終わった。4人は、バロンお父様に連れられて応接室に入った。



「ごめん。勝手にオレが国王陛下の前で、話をすすめちゃった。」

 


 すると、最初にエリーが話し始めた。



 「レイ君。ありがとう。私ね。お披露目会の時からずっと、あなたにあこがれていたの。いつか、レイ君のお嫁さんになれたらいいなぁって思っていたから、すごく嬉しかった。」

 

「オレも、エリーのことをいつも可愛いって思っていたし、それに、一緒に旅がしたかったからね。」



 次に、にこにこしながらミクが話す。



「やっぱりレイは、私の彼氏になったにゃ。だからいつも言っていたにゃ。」

 

「オレさ~。いつかミクの耳と尻尾をモフモフしたいと思っていたんだよ。」


「私の自慢のオ・ム・ネ・サ・マじゃなくていいの?」


「エッヘン、ウッホン。」とお父様が咳払いをする。



 最後に涙ぐみながらリリーが話す。



「私、魔族だよ。いいのかな?幸せになっていいのかな?」


「確かに、リリーは魔族だけど、オレにとって、人族もエルフ族もドワーフ族も魔族も関係ないんだ。どの種族にだって幸せになる権利はあるんだ。オレは、リリーが好きだよ。それじゃダメかな?」


「ありがとう。そんなこと言われたら、涙が止まらなくなっちゃう。」



 エリーとミクがリリーに近づいて、リリーに告げる。



「皆で一緒に幸せになろうよ。」



 なぜか、オレも嬉しかった。心の底から嬉しかった。

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