第31話 王都動乱(6)
王城からの伝令が来た。アルト総司令官の提案どおり、ソガ侯爵に降伏勧告をすることが許可された。
その頃、ソガ侯爵の陣中において
「まだか?南門・西門・東門からの連絡はないのか?ゴーラ伯爵は何をしている。」
ソガ侯爵が、自らの勝ちを確信し、その報告をまだかまだかと待っていると、数人の兵士達が息を切らしてやってきた。
「おお、して状況はどうだ?」
「恐れながら、東門に向かった軍勢は、全員捕えられました。」
「南門に向かった軍勢も、全員捕えられました。」
「なに―――、東門も南門も捕えられた?どういうことだ。」
そこで、兵士たちは、東門と南門であった出来事を一部始終報告した。
「馬鹿な!2人の少女に、それぞれ1,000人もいた軍隊が壊滅し、こともあろうに生きたまま捕えられただと~。信じられぬ。」
ソガ侯爵は茫然としている。だが、気を取り直して、3人目の兵士に尋ねる。
「西門の魔物の大軍はどうしたのだ!」
「ハッ!一人の少年に全滅させられました。」
「全滅?一人?」
状況を聞いて、ソガ侯爵の顔色は蒼くなっている。
「まさか。ありえん。」
しばらく放心状態だったが、もう一人の側近コセ子爵が声をかける。
「侯爵様。まだ負けたわけではありません。こちらには、まだ8,000人の兵士がいます。あちらはせいぜい4,000人。攻めましょう。」
「そなたは、今の話を聞いていたのか?わずか1人で、10,000匹もの魔物の大軍を、殲滅できるほどの人物がいるのだぞ。わしらの負けだ。我が領地に全軍で引き上げるぞ。」
「はい。かしこまりました。全軍に撤退の指示を出してきます。」
コセ子爵が、席を立って陣中を出ようとした時、大声が聞こえた。
「敵襲だ~。」「敵襲だ~。」
コセ子爵が近くの兵士に尋ねた。
「何事だ?」
「北門からでなく、東側の森の方から攻撃されています。」
「相手は誰だ?兵力は?」
「王国軍ではありません。数は約5,000人です。」
「わかった。こちらの兵力は8,000人だ。押し返せ。すぐに行く。」
コセ子爵は、陣中のソガ侯爵に状況を報告した。
「中間派閥のやつらか。」と恨めしそうに言った。
自分達に有利になるように、中間派閥に今回の反乱軍の侵攻のうわさを流していた。結果、それが自分の首を絞めることになって、自分の甘さに腹が立った。
“わしだけでも逃げる用意をしておくか。”
一方、北門近くの王国軍司令部にも一報が入った。
お兄様のもとに報告に来た兵士の慌てぶりを見ていたシリウス先生が尋ねた。
「どうかしましたか?」
「中間派の連中が、反乱軍に攻め入った。」
それを聞いていたギルマスのアルタさんは、怒り心頭だ。
「なんだと~。勝手に攻め入ったんだから、放っておけばいい。」
「反乱軍は8,000人、中間派は5,000人。このままでは、中間派は負けるな。われら王国軍が参戦するしかないか?双方に犠牲者が出るな。」
“どうにか手はないか?このままでは、大勢の死者が出るな。恐らく、その人たちにも、家族がいるだろうに。ソフィア母上も神界からご覧になって、悲しんでいるだろうな。オレがこの戦いをおわらせるしかないな。”
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