第27話 王都動乱(2)
オレは現在、王城の会議室にいる。状況は最悪だ。魔物のスタンピードに貴族派閥の反乱。このままでは、どう考えても、王都は火の海になり、大勢の人々が犠牲になる。オレが『神力』を行使すれば簡単だが、今まで隠してきた正体がばれてしまう可能性がある。でも、やるしかない。覚悟を決めたオレは、会議で発言する。
「ちょっといいですか?スタンピードはオレが一人で片づけますので、西門に予定していた人達は、北門に行かせて欲しいのですが。」
すると、貴族の中から罵声が飛ぶ。
「ふざけるな。貴様一人でどうにかなるわけがないだろう。」
「いや、できるから言ったんだけど。」
シリウス先生が心配そうに
「さすがにレイでもそれは無理だろう。命は大切にした方がいいぞ。」
「信じてもらえないようですね。ならば、皆さん見ていてくださいね。ちょっとだけ、オレの本気を見せますので。」
オレはそう言って、窓から西側を見る。そこにはいくつも高い山がそびえ立っていた。ちょうど魔物が向かってきている方角だ。オレは、そびえたつ高い山の一角に向かって、右手を前に出した。見る見るうちにオレの体が、神々しい光に包まれていく。
「ライトニングビーム」
すると、オレの手のひらから巨大な光線が発せられ、遠くに見える山の頂が消し飛び、山はその姿を大きく変えた。しばらくして、爆音が鳴り響く。
「ドドドドドーン」
大きな音と同時に、地震のように地面が大きく揺れた。国王陛下をはじめ、お父様でさえも口を大きく開けて驚いている。当然、他の方々は全員が茫然自失の状態だ。
「何が起こった。」
「奇跡だ。」
「おお、神よ。」
「やっぱり、規格外。」
辺りから、様々な言葉が聞こえてくる。そして、我を取り戻したお父様に、声をかけられた。
「レイチェル、この件が片付いたら、お母さんとゆっくり話が聞きたい。」
オレは、気まずさから何も答えず、逆にそこにいる人々に問いかけた。
「どうでしょうか。これで信じていただけたでしょうか?」
「レイ、お前の力はよく分かった。この国の危機だ。西門はお前に任せる。だが、無理はするなよ。」
「大丈夫です。無理はしませんよ。」
オレは、エリー、ミク、リリーの力を把握している。間違いなく、S級冒険者以上の力がある。それは、長いことオレと一緒に修行したし、何よりオレや魔法神マジク様、武神ヘラク様の加護を持っているからだ。そこで、オレは提案する。
「オレのパーティーメンバーについてなんですが、いいですか?」
「今度はなんだ?」
「エリーは、聖魔法のスペシャリストだから、戦闘に参加させるより救護活動の方がいいですよ。」
すると、貴族の一人が言ってきた。
「エリーヌ王女様をエリーと呼び捨てにするとは、貴様どういう了見だ。不敬であるぞ。」
それを聞いた国王陛下が弁護する。
「この冒険者は、レイチェル=リストン。公爵家の次男だ。そして、我が娘のクラスメイトでもある。エリーヌへの呼び捨ては、わしが認めたことだ。それに、レイチェルはS級冒険者として、エリーヌとパーティーを組んでいる。彼女の力を十分理解しての発言だ。」
オレは、緊迫した空気の中、時間を無駄にしたくなかったので、続いて発言する。
「敵の主力が北門だとすると、南門と東門は恐らく、1,000人程度で攻めてくるでしょうから、南門はミクに任せて、東門はリリーに任せる。それ以外の方々は、全員北門に集中する。これが一番勝てる見込みのある陣形だと思いますよ。」
バロンお父様が目を細めて聞いてきた。
「信じられないが、ミク殿に、リリー殿もそれほど強いのか?」
「オレが保証します。それに、スタンピードの殲滅にそれほど時間かけませんから、終わり次第オレが向かいます。万が一の時のために、味方を一人召喚しましょう。」
オレは、悪魔王バビロンを召喚した。
「レイさん、お呼びでしょうか?」
「うん。この国で争いが起きているんだ。ここにいるミクとリリーが戦闘に出るから、危険がないように、補助してあげて欲しいんだけど。」
「容易いことです。お任せください。」
すると、国王陛下が聞いてきた。
「レイチェルよ。もしかすると、そのものは悪魔ではないのか?」
「はい。悪魔王バビロンです。」
「ご挨拶が遅れました。私はデイモンロードのバビロンと申します。最高神ソフィア様の命を受け、レイチェルさんに従っています。」
それを聞いて、会議に参加していたものは、驚きすぎて声が出ない。貴族の中には、バビロンに対する恐怖から、腰を抜かして座り込んでしまうものもいた。
みんなが放心状態だったので、バロンお父様が話をまとめる。
「レイよ。お前の言うことは、わかった。国王陛下、この陣形でよろしいでしょうか。」
「あいわかった。無事片付いた暁には、皆に褒美を与えんとな。」
ライル国王陛下も自信を取り戻したようだ。
「では、それぞれ配置についてくれ。」
宰相であるバロンお父様の指示で、全員が動き始めた。
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