第23話 仲良し3人娘の修行

 冒険者登録を終えた3人は、いよいよ今日から修行に入る。修行と言っても、最初は東や西の森に行って魔物を狩るだけだ。今日は東の森に来ている。



「レイ、この森って角兎ばっかりなんだけど。」


「昔から角兎が多かったよ。でも、動きが速いから俊敏性が必要だよ。」


「ねぇ、レイ。身体強化の魔法やそれ以外の魔法も、使えるようになりたいんだけど、無理かな?」


「魔法は適性が必要だからね。でも、訓練次第で使えるようになるよ。ミクは魔力の流れはわかるよね?」


「うん。おへその辺りに感じるやつでしょ?」


「そうだよ。まずは全身を駆け巡らせるように意識してごらん。体が熱くなってくるよ。」


「ん~、ん~、ん~。無理みたい。」


「時間かかるけど、何度もやってみて。」


「わかった。」


「エリーもリリーもミクと同じようにしてみて。これから毎日だよ。」


「えっ、私達も?」とエリー。


「そうだよ。強くなるためだからね。」



 リリーは拳を握り締めてやる気満々だ。



「私、頑張る。」



 数か月後、再び4人は東の森に来ている。この数か月間は、身体強化なしで角兎やゴブリンなどの魔物を狩っていた。そのため、女子3人組は、体力も少しずつ向上していた。


 

「レイ。私、魔力の循環ができるようになったにゃ。」


「なら、その魔力を目に集中させて、角兎を見てごらん。」


「え~!あの角兎遅すぎにゃ!」


「遅いだろ。魔力を目に集めて、目の強化ができたんだよ。他の生き物の動きも遅く見えるはずだよ。」


「すごいにゃ。レイ。ありがとうにゃ。なら、魔力を足に流せば足の強化、手に流せば手の強化ができるってことにゃ?」

 

「そうだよ。エリーもリリーもやってみて。」

 


 エリー、ミク、リリーの魔力操作のスキルが大幅に向上したようだ。おかげで、その後、東の森でゴブリン、オーク、ビッグボアなどの魔物を狩りまくった。


 今度はリリーが聞いてきた。



「レイ君にお願いがあるの。」


「なんだい。」


「私、中級魔法までなら使えるけど、上級以上はまだ使えない。魔法を教えて。」


「帝級魔法や神級魔法と、中級魔法や初級魔法って何が違うかわかる?」


「威力が違うんでしょ。」


「どうして威力が違うの?」


「魔力量が違うから?」


「そうだよね。なら、魔力量を増やさないといけないよね。」



 エリーが不思議そうに聞いてきた。



「どうやって魔力量を増やすの?魔力量って生まれたときから決まっているんでしょ?」


「今からでも増やせるよ。寝る前に全部使い切ればいいんだよ。」


「それだけ?」


「そうだよ。それだけ。」



 それから、半年後、彼女たちの魔力はベガ先生に負けないほどに増えていた。彼女達は知らないけど、オレの加護と魔法神マジク様の加護があるからね。成長速度は速いはずだよ。


 今日は、魔法を実践するために、王都からだいぶ離れた場所にある広大な荒野に来ている。   

 


「リリー、エリー、ミク。今日は、みんなに実際に強力な魔法を使えるようになってもらうよ。」



 さすがに魔族のリリーは、魔法を最大の武器としているのでいろいろな質問をしてくる。



「えっ、だってまだ上級以上の魔法を教えてもらってないよ。」

 

「魔法って想像力なんだよ。オレもみんなも他の人達と違って、長い詠唱なんかしないよね?それは、魔力を自分の創造力で形にしているからなんだ。」

 

「なら、これが帝級魔法とか、これが神級魔法とかの区別はないの?」

 

「一応はあるよ。例えば、魔力量がいくら多くても『ファイアーボール』で、この大陸を消滅させることなんてできないよね?でも、初級魔法と言われている『ファイアーボール』でも、今のエリーたちの魔力量なら、この辺一帯を焼け野原にすることぐらいできるよ。つまり、エリー達にとっては『ファイアーボール』は上級魔法になったってことだね。神級魔法なんかは、1発でこの大陸を消し飛ばしちゃうこともできるよ。」

 


 興味津々でエリーが聞いてきた。



「レイ君はできるの?」



 ここでできるとか言って素性がばれたくないよな。でも、いつかばれそうだな。



「神級魔法は神様の魔法さ。神の使徒にでもならない限り、人間のオレにできるわけないよ。でも、訓練次第では、オレも皆もできるようになるかもしれないね。」

 

「そうかな~?レイ君ならできそうなんだけどな~。」

 

「じゃぁ、一人ずつここで上級魔法を発動させてもらうよ。」



 ちなみに、全属性が使えるように、皆にはそれぞれ魔石を埋め込んだ道具を渡してある。


 最初はリリーからだ。早速、リリーは前に出ると、眼前に広がる荒野に向かって、上級魔法を発動させる。



「エレクトリックドラゴン」


 大気中に放電現象が発生し、それが上空の1点に集まっていき、巨大なドラゴンの姿になった。リリーが手をおろすと、そのドラゴンは周りに放電しながら地面に激突した。土煙がおさまると、そこには巨大なクレーターができていた。



「リリー。それ上級魔法じゃないよ。帝級魔法だよ。やりすぎ。」



 リリーは、舌を出して『テヘッ』。

 


“可愛すぎる!”



 次は、ミクだ。ミクは、魔法が苦手なせいか、想像力を使ってイメージするのに時間がかかったが、しっかりと魔力を溜めて、魔法を放った。



「エクスプローション」



 ミクが、上空に手を挙げ、手を下ろしながら魔法を唱えると、巨大な炎の竜が現れて、道路を作るように、真っすぐに焼き尽くしていく。



「ミクもかよ~。それも帝級魔法だよ。」



 すると、魔法を使えないと思っていた自分が、帝級魔法を使えたことが、あまりにも嬉しかったのか、珍しくミクが号泣した。



「私、強い魔法使えたにゃ~。ワ~ン。」

 


 皆でミクを慰めた。ミクが落ち着くと、いよいよエリーの番だ。エリーは、普段からお城で剣と魔法の訓練をしているだけあって、魔法を発動するまでの時間が早い。両手を天に掲げて、魔法を唱える。



「ホーリードラゴン」



 すると、巨大な光の玉が空に現れ、太陽のようにまぶしく光る。つぎに、その光がドラゴンの形に変化すると、地面に向って突き刺さった。



「エリーも。それ、帝級魔法だよ。」



 エリーは多少自信があったのか、次は神級魔法を目指すとか言っていた。

 

 

 彼女達の魔法の力も強くなったことだし、そろそろ強い魔物を相手にしたほうがいいかな。強い魔物といえば、やっぱりダンジョンだよな~。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る