第22話 レイの実力
レイが試験を受けるため、試験会場に上がろうとすると、シリウス先生が声をかけてきた。
「レイ、お前の相手は俺1人じゃきついから、ベガと一緒だ。いいな。」
試合を見ていた見物人から声が上がる。
「おい、あの小僧は何者だ。S級のシリウスさんとベガさんが、2人で相手するんだってよ。そんなに強いのか?」
「お前達知らないのか?昨日、ゴルドンがあっという間にやられたよ。まるで、ゴルドンが子ども扱いだったぞ。」
「本当か?ゴルドンはB級冒険者だろ?」
レイは、軽くジャンプしながら準備している。
「いいですよ。ちなみに以前のオレと違いますよ。自重するのをやめたので。」
それを聞いて、シリウス先生もベガ先生も顔を青くした。
「レイ、確認だけど。お前、今まで自重していたのか?ゴブリンの集落をつぶした時もか?」
「そうですよ。だって目立ちたくなかったから。」
「じゃぁ、俺もベガも、怪我したくないから、最初から全力で行くぞ。」
「はい。」
2人のやり取りを聞いていたエリー達は
「やっぱりレイ君、規格外だったんだ。」と納得している。
「はじめ!」とアルタさんの試合開始の合図。
シリウス先生は『身体強化』と『縮地』を使って、一気に距離を詰め、右手に持った剣でオレに斬りかかってきた。オレは『テレポート』でシリウス先生のいた場所に、瞬間移動した。それを予測していたのか、ベガ先生が『ファイアアロー』で攻撃してきた。オレは慌てることなく、それを手で叩き落した。
「おい、見えたかあいつの動き?あいつ今瞬間移動してなかったか?」
「それより、あいつベガさんのファイアアローを、手で叩き落してたぜ。バケモンか?」
一連の攻撃の後、ベガ先生が聞いてきた。
「さすがレイ君ね。昔も使っていたけど、誰も使えない瞬間移動のような帝級の魔法を軽々使うんだもんね。」
「自重するのをやめましたから。」
「やっぱり、レイ君は規格外ね。本気で行くわよ。」
普通の攻撃では無理と判断したのか、
「サンダー」
オレを中心に雷で攻撃してきた。オレは、瞬間移動で逃げてもよかったが、両手を挙げて、
「グラト二ー」
雷は全てオレの手の中に吸い込まれた。それを見た見物人達は驚きのあまり、叫んでしまった。
「なんなんだあの魔法!」
「おい、雷が手に吸い込まれたぞ。ありえねぇ。」
“ちょっとやりすぎたかな?”
「レイ君って、ほんとに規格外ね。何やっても勝てる気がしないわ。」
電撃の攻撃が終わると同時に、今度はシリウス先生が刀を振るいながら
「バキーム」
刀から見えない剣げきが飛んでくる。かなりの威力だ。
「バリア」
自分の周りに結界を張ってそれを防ぐ。
「ベガの言う通り、俺も勝てる気がしないぞ。でも、このままじゃ『S級』が恥ずかしくなるから、あきらめられないな。」
「いや、オレもギリギリですよ。」
オレは、十分目立ってしまったが、これ以上長引かせたくなかったので、この試験を終わらせようと考えた。
「そろそろオレからいきますよ。」
すると、周りの空気が変わった。「キ―――――ン。」と耳鳴りが始まり、辺りは冷気に包まれた。レイの体がまぶしいほどの光に包まれ、同時に、そこから光が四方に破裂した。
「ラディエーション」
あたりの光がおさまり、試験会場を目にすると、シリウス先生もベガ先生も気を失って倒れていた。慌てて、オレはシリウス先生とベガ先生に『ヒール』をかけた。そして、2人は意識を取り戻した。
「やっぱり、レイ、お前は規格外だ。負け、負け、負け、俺たちの負けだ。」
その言葉に、見物人たちは
「オ――――――、スゲ――――――。」と大興奮だ。
その後、試験を受けた4人と試験管の2人は、ギルマスの部屋に呼ばれた。
「まず、エリー、ミク、リリーの3人はそれぞれB級からだ。」
「ありがとうございます。」とエリーが代表してお礼を言う。
「レイは、今までにないことだが、最初からS級だ。S級の2人に同時に勝ったんだから、誰も文句は言わんだろう。それに、俺はこの国の冒険者ギルドの統括責任者だ。これは決定だ。いいだろ?シリウス、ベガ?」
「そうだな。妥当だろうな。」
「そうよね。私もいいと思う。」
「ありがとうございます。」
「でもな、レイ。C級以上の冒険者は、国やギルドからの招集を断れないから、そのつもりでな。」とシリウス先生に忠告された。
レイをはじめ、4人はその条件に納得した。それから、マリーさんがそれぞれの冒険者カードを作って、持ってきてくれた。
「これから頑張ってね。」
なぜかオレだけは手を握りながらカードを渡された。それを見て、ミクは頬を膨らませてプンプン怒っている。
「お姉ちゃん、ずるいにゃ。彼女の私だって、ほとんどレイと手をつないだことないにゃ。」
“手ぐらいいつでも握っていいのになぁ。”
「ところで、レイたちは、パーティー登録しないのか?」とシリウス先生に聞かれた?
「そこまで考えていなかったよ。」
オレがどうしようか迷っていると、ミクが助け舟を出してくれた。
「そうにゃ。この際だからパーティー登録もするにゃ。」
「賛成!」エリーもリリーも同じ意見のようだ。
「じゃぁ、マリーさん、お願いできますか?」
「いいわよ。パーティー名はどうする?」
「さすがに『愛の絆』はやだなぁ。」
「レイ、お前、俺たちのことを馬鹿にしているだろ。」
「いえ、いえ、仲良しの2人には、お似合いかなって思っただけですよ。」
「ひどいな~。レイ君、やっぱり馬鹿にしているわよね。」
「レイ、どうするの?」
リリーが小声で提案した。
「『ワールドピース』」
「いいねぇ、それ。オレ、気に入ったよ。」
「うん。レイ君とこれからの私たちにぴったり。」
「じゃぁ、レイ、エリー、リリー。『ワールドピース』で決定にゃ!」
その後、パーティー登録して、その日は掲示板を見ることもなく、皆で帰った。
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