王立マーシャル学園中等部編

第17話 現在の世界情勢とレイチェルの周りの人々

 この5年間で、世界の情勢とレイチェルの暮らすステイル王国に大きな変化があった。

 

 東大陸にある軍事大国の帝国で皇帝がかわり、ナイル=ビクティアが即位した。彼は、即位すると同時に、巨大な軍事力を背景に、獣人族やエルフ族、ドワーフ族の連合国家であるフェアリー連邦国に進行して占領した。獣人族もエルフ族もドワーフ族も一部が奴隷とされ、ひどい扱いを受けているらしい。

 

 さらに、ステイル王国に進攻しようとしている。これに対抗してステイル王国では、リーゼット聖教国と同盟を結ぼうとしているが、ステイル王国のソガ侯爵を中心とした貴族派閥がこれに反対している。どうやら帝国は、ステイル王国を内部から調略しようとしているらしい。そして、ステイル王国とリーゼット聖教国を滅ぼし、この東大陸を統一しようとしているのだ。


 西大陸では、反人族派のサティーニ魔王国のユリウス=サティーニが大魔王を名乗り、親人族派の最大勢力であったマジョリーヌ王国を滅ぼした。その後、親人族派も反人族派も関係なく次々と征服し、西大陸を統一した。だが、今のところ東大陸に向かう気配はない。


 レイチェルの周りでは、まずアルトお兄様が16歳となり、王立マーシャル学園を卒業し、ステイル王国の近衛騎士団に入団した。

 

 ローザお姉様は14歳となり、お母様と同じ豊満な乳を手に入れたが、相変わらずブラコンで困っている。現在、王立マーシャル学園の中等部の4年生にいる。

 

 その他に変わったことと言えば、(そうだ!)リストン家のメイドのイリナが結婚して、出産のため退職してしまった。たまに遊びに来てくれるけどね。イリナは色白で超絶美人だから、イリナの夫がうらやましい。

 

 家庭教師のシリウス先生は、思いがやっと通じたようで、同じ家庭教師だったエルフ族のベガ先生と結婚した。子どもはいらないとか言って、未だに2人で冒険者をしている。確かパーティー名は「愛の絆」だったかな?なんか恥ずかしい。


 商品の開発に参加しているレイは、エリー、ミク、リリーと一緒に会社を作った。会社名は「シルバーキング」だ。僕の髪が銀髪だからと、エリーが名付けた。  

 

 エリーもミクも11歳になり、大分女性らしくになってきた。特にミクは猫獣人なだけあり、ローザお姉様に負けないほどの豊満さだ。お胸様がね。リリーは相変わらず小柄で絶壁状態だ。それはそれでかわいいけどね。


 まずこの国の派閥問題を解決したいが、帝国が絡んでいるとなると簡単にはいかないだろう。ミクの両親の故郷に行こうって、皆で話している。でも、今はビクティア帝国に占領されているから不安なんだけど。リリーの故郷の西大陸にも行く予定だ。ここには大魔王や強力な魔族達がいるから、ものすごく不安なんだけど。


  中等部に入ったら、オレは自重するのをやめる。完全にやめるわけではない。オレが『神力』をすべて開放すると、恐らくこの世界は消滅してしまうだろう。今やオレの力は、この世界の管理神ソフィア母上と同等か、それ以上なのだ。ただ、この世界を平和な世界にするためには、恐らく、反対勢力との戦いは避けられないだろう。オレだけでなく、オレの大切な仲間達も、巻き込むかもしれない。ならば、エリー、ミク、リリーにも今まで以上に、力を付けてもらわなければならない。そう考えたオレは、久しぶりに神界に行った。



「久しぶりね。レイ。」


「お久しぶりです。母上。」


「ところで、今日は何か用事でもあるの?」


「はい。オレは、初等部が終わり、中等部になります。これまでに、多くの人たちと出会い、大切な仲間もできました。」


「仲間ね?まぁ、まだいいでしょ。」と小さな声でソフィア母上は呟いた。



 エリーもミクもリリーも仲間だよね?仲間でないなら何なんだろう。



「そうね。それでどうしたの?」


「これから、オレは本格的にこの世界に関わります。この世界を、母上の望む平和な世界にしていきたいと思います。ですが、それは、オレ一人で行うのでなく、この世界の住人や仲間達と力を合わせて、実現したいのです。」


「いいことね。自分達の世界を、自分達で平和な世界にする。それができれば、一時的な平和でなく、持続的な平和がもたらされるでしょう。でも大変よ。犠牲者が出るかもしれないわよ。」


「そうなのです。でも、オレは大切な仲間を失いたくありません。だから、彼女達に、自分を守る力、平和を実現するための力をつけさせたいのです。」


「ならば簡単よ。」

 

「簡単なのですか?どうすればよいのですか?」 

 

 「まずは、あなたの加護『創造神の加護』を授けなさい。それだけで彼女たちは、人外な能力を手に入れるわ。ただし、彼女たちにあなたの素性がばれてしまうわね。創造神になるべき存在だということ、最高神である私の子どもであることも、ばれてしまうわね。」


「それはできません。」

 

「それならば、あなたを『神の使徒』にするわ。そして、彼女たちに『神の使徒の加護』を授けなさい。ただし、創造神の加護よりも力が弱いから、しっかり修行させるのよ。私から、魔法神マジクと武神ヘラクにも、加護を授けるように言っておくわね。」


「ありがとうございます。母上。マジク様にもヘラク様にも、よろしくお伝えください。」


  

 翌朝、封印していた能力を一部開放したレイは、この世界に来て初めて感じる高揚感に、気持ちを高ぶらせながら、学校に向うのであった。


 さて、今日は中等部初日だ。そろそろ学校に行くか!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る